『キャット&チョコレート/ビジネス編』と私的なアイデア
前に、とても面白いカードゲームを友人の所で見せてもらいました。
知的なゲームを作るのにもとても示唆となるものがある、いいゲームでした。
『キャット&チョコレート/ビジネス編』
といいます。
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カードだけで遊べます。多分、机のないようなところや、居酒屋でもできそうなシンプルなアイテム構成です。
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ビジネスパーソンにとってリスクとなりそうなことカードがあります。伏せたこのカード集から一枚引きます。
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喪服、とか、高い酒、とか、コーヒーとか、特に問題解決専用ではないアイテムのカードがあります。伏せたこのカード集の中から、数字カードで指定された数だけカードを引きます。(1か2か3)
面白いのはここです。「問題発生」のカードの問題を、「アイテム」のカードを使ってなんとか解決するアイデアを即興で考えて話します。カードがいかにも役立つもの、とはなっていなくて、”問題解決の、一体何に使うんだよ、これ・・・”というイノセントなアイテムがたくさんあって、組み合わせの妙が生じやすくなっています。
(インプロビゼーション(即興劇)の中に見られる発想のありかたに、似たものを感じます)
さて、更に面白いのは、判定方法です。カードゲームなどで「発想を評価するシステム(あるいは方法)」というのは、参加者の紳士協定に基づくものぐらいで、でしか成り立たないので、知的ゲームを作る人はいつも悩みます。
(ブレスターも、出されたアイデアが良い悪いかは、非常に緩く肯定的にとらえて何か言えればOK、ぐらいの線にしています。連想系のものですごい明確な判定が出るのはディクシットというゲームがあります。これは、未だかつて見たことのなかった面白いシステムです。これはまたいずれ述べます。)
で、このカードゲームでは面白いというのは何かというと
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プレイヤーが「専務派」と「副社長派」に分かれていて、だれがどっちなのかが分からない、という点です。自分一人が勝つだけでいいルールだと、他の人の判定を激辛にしてしまいますが、この中の誰かが仲間だ、と思うと、とにかくきちんとジャッジをしていくしかないわけです。実にうまい。
(コンピューターによるゲームでは、アイデアや発想の良し悪しを判定することが、まだ今のテクノロジーではできません。入力した文章を形態素解析し、一定の意味解釈をさせたうえで正解解答との相関度を測り、入力文章の判定をする、ということが理屈としては可能ですが、連想という思考活動において文脈の微細な解釈をさせるには、まだ現代のIT技術は弱すぎます。この辺もアイデアプラントとしては、長い時間がかかってもいきているうちに実現させたいものではありますが)
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テーブルの上はこんな感じです。問題発生⇒カードを2枚引け⇒アイテムカード2枚、さあ、これでなんとか解決策を・・・。という流れです。
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パッケージはアメリカンコミック(?)テイストなものです。これはビジネス編ですが、最初の編はお化け屋敷の探索が舞台となっているもののようです。いま、ネットで調べて知りました。
製作者さんのブログにより詳しい画像が出ています。
http://qvinta.sblo.jp/article/41681763.html
(ツイッターと連動したWEB版もありました)
私の中でのアイデア、余談:
このゲームは物語を創作する時の訓練にもなりそうです。たとえば、毎年受け持っているマンガの学生さんたちの所での発想技法の講義では、このアイテムを紹介しつつ、カードの本質に近い形のトレーニングワークをしてみたいな、と思いました。(以下、仮に4人1組になっているとして。)
1)物語の設定を紹介する
(これは、その前の時間で、部隊設定、キャラクター考案の時間をとっていればそれを使うのもよさそうです。)
2)その中で「発生する問題」を3つずつ、カードに書いてもらう。各々が3枚ずつ。集めて混ぜて山札1にする。
3)その舞台の中での他者が立てていそうな問題解決を予測して、その解決に役立ちそうなアイテム(ヒトや動物や自然現象、人工物、道具、食べ物)を書く。集めて混ぜて山札2にする。
4)じゃんけんして勝った人から番手が回る。番の人は山札1「問題発生」カードを1枚ひく。自分が描いたものの場合は、それを下に戻し、新たに引く。山札2から3枚引く。アイテムを使って解決方法を考える。他のメンバーはその展開がありか、なしかを判定する。(なお初めに、1~4の数字の札を作っておいて、伏せて引いておくことで、ひそかに奇数派、偶数派にして、合計を競うことにする。)
山札がなくなるか、30分が立ったら終了。奇数派、偶数派の合計点で勝ち負けが決定する。
補足
多分、漫画の学生さんは問題を立てるカードに問題となるもの以外を描く可能性がありそうです。なんというか、毎年、ここでのワークは予想を上回る想像的な答えが帰ってきますので。それが起こったとしても、まあ、それもありかなと。例えば問題発生カードに「主人公はとっても美しい夕陽に感動した」と書かれているものがひそかに合ったりして。ならば、アイテムカードはそれを引き立てる小道具としてどうつかうか。その巧みさで判定してもいいかなと思います。