PPCO(ブレストが終ったら、アイデアを強くせよ)
ブレストは、登山の上りみたいなもの。
次に大量案の中から、上位アイデアを抽出する評価作業で、ようやく下り。
登って降りて、ようやく、手に入った「魅力的なアイデア」。
これは、まだ、原石のままなんです。
磨いて、その価値が光るようにする必要があります。
その「アイデア・ブラッシュアップ」とでもいうべき作業があります。
「PPCOプロセス」といいます。
いわば、アイデアの強化プロセス。
一枚のボードでその概念をしめすと、こうです。

この内容を、アイデアワークの全体位置づけも含め、説明するスライドを作ってみました。
(ブログでは言葉がのせられませんが、創造工学的な、ちょっと理屈で説明するような、アイデアワークを、20分ぐらいで語る感じです)
アイデアは、新規性→有用性→実現性、と上がっていく傾向があります。
その実現性を上げるところは、ブレストの価値を生かすことでもあります。ブレストで終わりにすると、アイデアは原石のまま。それをもっと、強いアイデア変える。それがPPCOという作業なのです。
このPPCOという作業自体は、基本的には”ブレスト的”です。的、というのは、”C”のフェーズでは、徹底的にネガティブなことを、批判を出していく「懸念事項の列挙」なのですが、これが、ブレストとは少し趣が違いますので、そう表現しました。ただ、量を推奨すること、便乗した懸念点を出すこと推奨したり、突飛なもの(あまり起こりそうにないような懸念事項だったり、意外なところ指摘したり)、なので、基本的には、ブレストの4ルールのうち、3つルールまでは、生きています。
その辺を、お話風に昔書きましたので、そこは割愛して進みます。
【絵本】ブレスト村。アイデアを収穫しよう。: 石井力重の活動報告
さて、このPPCOのワーク、実践で、うまく行くチームと、そうでないチームがあります。ブレストに比べて、より、進行役の技量がいるのもたしかなんです。ワークショップではなかなか、これをやらないのはそういう部分もあります。ただ、何度もやる中で、PPCOを行うための道具ってきて、徐々に安定的に、進行ができるようになりました。(道具がなくてもうまく行くリーダが要れば、なしの方がいい、と私は思っています。自転車に補助輪があれば初めは楽だけど、そのうちそれは足かせに。気の利いたリーダがいるチームなら、冒頭のボードだけしめして、後は進行時間を離したら、どんどんやってもらうほうが、いい、と。)
さて、いわば、補助輪。PPCOを助けるツールを紹介します。
初めの「PP」

いわば、褒めるブレストをします。
「アイデアの良い点、潜在的な可能性」を列挙していきます。
この褒める、というか、良い所に光を当てる、というのが、苦も無く出来る人と、非常に苦しくて何も出ないという人がいて、大きく分かれます。ブレストのパートとトーンは似ています。普段、アイデアの可能性を引き出すような思考をしたことがない人にはこのワークは結構大変です。(法務系や品質チェックの仕事をしている人にはその傾向が強いです。職業柄、というべきでしょうか。)
そこで、そのアイデアが何であっても、十分にいろんな観点から、そのアイデアを覗きこんでみて、良い所が見つけられないだろうか、と探すために、「6観点リスト」を配してあります。人という意味では何かいいことはないか?プロセスではどうだろう?あるいは、、、とチェックリスト的に、良い所を見つけようとしていきます。
マインドマップ風に分岐を書きましたが、これはさほどこだわらず、その項目から広がるコメントをだーっと描くことに使ってください。
次は「C」

今度は、いわば「批判」ブレスト。
そのアイデアについて、心配なこと、懸念点を列挙していきます。
これは比較的、うまく行きます。道具がなくても。一般にベテランが多い場や経営者がいるような場だと、非常に全方向から、アイデアをたたくことができます。逆に、職種的に一部の領域だけに固まる場合には、その観点からの懸念事項が多くて、より重要な懸念事項が指摘されないこともあります。(若い技術者で固めたチームだと、ビジネス面の懸念が十分に出なかったりすることも)
そこで、アイデアを評価する時の、代表的な8つの軸(+2軸)を、アイデアプラントが整備したのですが、それを配してあります。その8軸に追の詳しい所は、アイデアプラントの作品「IDEVote」に詳しいのでここでは省きますが、大よその評価軸はこの中に。
これを、だーっと、出していきます。ここに含まれないものももちろん、出します。出せる限り出します。
次は、それらの懸念事項の上位を可視化する作業です。もし、クライアントとなる人が入っているならばその人にセレクト3(重要な物を3つまで選んでもらう)を依頼します。皆で取り掛かっている案件ならば、こうします。
1.皆がペンを持つ
2.自分が重要だと思う懸念事項に丸印を付ける
3.全員が終わったら、上位をとったもの3つを整理する。
(特に、上位3つのうち、ほぼ同義の物があるならば統合して、4位を繰り上げたり)
いよいよ、最後は「O」

最後は、対策案のブレストです。
トップをとった懸念事項を、どうやったら打破できるか。それをテーマに皆で力の限り、アイデアを出していきます。これ自体もブレストなので、突飛な物や他の人の対策案を改良したり、結合したりした、便乗案ももちろんOKです。
ここは長めにやります。出していく対策案で、懸念事項を払しょくできそうだ、というところまでいったら、1ラウンドはそこで終わり。経験的にはこれは時間20分、対策アイデアの数量は30ぐらい、多い時は5,60ぐらい行きます。
次は、懸念事項のトップ2を打破するブレストです。その次はトップ3を。
こうしてトップ3を潰せたら、対策案ブレストは終わりです(4以下は、なぜしないのかは長くなるので、理由開設はここでは端折ります。)
この最後の所は、ツールというよりも、ホワイトボードの使い方、ということで、こういう書き方をしていくと、メンバーを導きやすい、というぐらいの所です。
なお、対策案ブレストの際には、問題解決系の発想トリガーを併用することもあります。SCAMPER詳細版や、TRIZ発明原理、プロフィットパターン集などは、問題によっては非常に強力で、役に立ちます。使い分けを誤るぐらいなら、使わない方がいいというのもまた、経験則から思いますが。
こうして、
PPCOがおわります。
ブレストをした段階のアイデアは、魅力的。
だけれど、まだ実現性は低い(或いは、具体性が低くてよく分からない)状態です。
PPCOプロセスを行うことで、実現性が非常に高まります。
アイデアを生み出し、可能性を開こう、というチームが、
「ブレスト」+「アイデアの強化」をし、
魅力的かつ実現性の高いアイデアを獲得できれば、と
思っています。
この辺まで来ると、技法としては、やや、補助輪がすぎる、と私は思っています。型が好き、な方は性に合えば使ってもらえるし、臨機応変で自由が好きという方には、冒頭の概念図だけをもっていてもらうのが、いいのだと、私は思っています。
以前、あるビジネスプランのコンサルの方と一緒に組んで大規模なアイデア創出ワークをしたことがありますが、その方が私のワークの後、「知財の評価ツール」とでもいうべき面白い評価ツールを使うワークをされました。その時に、皆がアイデアに対して非常に深く検討をしていたので、評価ワークで問いに答えがいいやすい、ということが観察されました。普通、かなり試作段階まで行かないと、その辺の知財性の評価判断がつけられないものですが、PPCOというのは、無形段階での試作ブラッシュアップにも近いものがある、と、思ったりしました。