判断遅延(批判禁止)と創造的退行。ガルシア=マルケスのブレストからの考察。
ブレストの第一ルールにDefer Judgement「判断遅延」があります。「批判禁止」とも訳されたりしますが。
新版・心理学辞典の中の「創造的思考」の項目に「創造的退行」という概念があります。創造的な思考にはある程度「退行」が関係するようです。
健康的な「退行」というのは、創造的な人には「ああ、理解できるな」という概念だと思います。これ一つでも面白いことがいろいろ説明できそうです。それはさておき。
創造的退行を促すのが「判断遅延」の本質的な意味(あるいは役目)なのではないか、と最近、思います。
判断遅延や批判禁止、という表現をとっていては理解できない優れたブレインストーミングがあります。それを深く理解するための視力を手に入れられる気がします。
ガルシア=マルケスの「物語の作り方」という本がありますが、これは、じつにブレストとしてみると興味深い。
もともと、この本は、漫画家さそうあきらさんから、大学でのブレストの講師お仕事を依頼された時に、「こうありたいブレストの一姿」としておされた本で、読み応えがあります。この本の中で、ガルシアマルケスという優れたお話を作り出す人物が、彼のシナリオ教室にあつまった生徒さん(多くはプロや卵)と、お話をダイナミックに作り出していく「批判(判断)ありのブレスト風会話」です。
創造的な作業として実に興味深いことが展開されていますが、ブレストの本質を「判断遅延(もしくは批判禁止)」として絶対的なもの的なとらえかたをしてしまうと「これはブレストではない」ということになってしまいます。
ブレストの心理様式の本質には、たぶんですが、「創造的退行」と表現される心理様式のがあります。確実に文献でおえてない「石井仮説」の域ですが、経験的にはこの仮説は肯定される事例が多いと一時的判断をしています。
長くなりましたが、「創造的退行」の状態になるためのブレストのルールがある、としたら、判断遅延が必ずしも絶対視されるべきじゃありませんね。とここで述べたいのです。
ガルシアマルケスら彼らのブレストには、頻繁に「否定」や「それじゃ30分ではおさまらないぞ」という判断が登場します。そして、収束フェーズに近いアイデアの選択も頻繁におこなわれます(ただし、大きくひっくり返して戻ります。まるで分岐した道をいっきにもどって、別の道をゆくように)
彼らの中に「創造的退行」と呼ばれる心理状態がしかしいつもあります。これは参加者が多少の批判は、考えるトリガーとしてうけとれていて、「創造的退行」の解けてしまう害的効果はあまりうけとらないですごせる批判に強い心理的なタッチ(批判への免疫力)があるから、いけている行為だと思われます。
多分、素人があのブレストに参加したら、発言をしなくなってしまうでしょう。たぶんですが。
優れたベンチャーチームでブレストをすると、似たことが起こります。リーダとメンバーの間で強い信頼感があると、「否定的なコメント」は生産的な思考のトリガーとして(ひとヒネリして)うけとられ、さらに場が活性化する、なんてことがあります。その空気を共有していない人には「とてもじゃないけれど、そんなのブレストじゃないよ」と切り捨ててしまいそうですが、「創造的退行の促進される中での創造的な会話」を拡張した広義のブレストと考えるならば、それはブレストだと思います。
創造的なアウトプットを欲する。
↓
創造的退行を保持できる場を作る。
↓
そのために4つのルールがある(いわば、創造的思考のガイド)。
ということでスタンダードなブレストをしている、とするならば、
別の方法で、創造的退行を保持できるならば、
それはそれでOKなはずなんです。
たとえば6色ハット法も、あるいみ、創造的退行の促進効果が
認めらるでしょう。
これは「ブレスト」ではないかもしれませんが
「創造的なアプトプットのための話し合い」(名称を後でつけます)
には含まれています。
そんなことを、ふと「批判バリバリの、しかし、創造的、会話」のすすむ『物語の作り方』に思うのでした。
備考:
仮の命名について
「創造的なアプトプットのための話し合い」
これを
「クリエイティブ・ミーティング」か
「クリエイティブ・カオス」か
「クリエイティブ・グローウィング」ぐらいの
意味性をもつ固有性ある名称をつけたいのですが。
仮の名称
「クリエイティブ・プランティング(Creative Planting)」
あるいは
「一般化ブレインストーミング」
ぐらいの技法名として、仮の名称としたい。
ここに定義します。
Creative Planting:
創造的なアプトプットのための話し合い。
創造的退行を促すためのガイドラインなどを明確に持っている場合と場(あるいは特殊な参画メンバー)がもつ創造的退行を促進するための心理様式をベースに行われる話し合い。
一人で同様の心理様式をもって、独創していく作業も含む。
多くの場合はブレインストーミング(あるいはその派生技法であるブレイン・ライティング、カード・ブレイン・ストーミング)と一致するが、ブレストにおいてもっとも重要な機能を担う判断遅延については、創造的退行の維持できる限りは、必ずしも絶対条件としない。(類似の概念である批判禁止についても、同様である)