最善の選択肢とは意外なもの。
以前企業に勤めていたときに、毎年クリスマスパーティーがありました。赤坂の一流ホテルのホールを貸しきりで、です。今思うと羽振りのいいイベントでした。最後に抽選会があり、旅行とか、ブランドバックとか、情報管理用ITツールが景品です。
数百人の東京本社社員が集まるその会場のステージの上に、あたった人は呼ばれて受け取るのですが、あるとき、私が二番目に良い景品、ブランドもののバック(確かGUCCIかな?)が当たりました。ステージに上がり受け取ろうとすると、部署の先輩たちが一斉に『ジ・タ・イ!、ジ・タ・イ!、ジ・タ・イ!』とコールしていました。ジタイ、つまり、辞退せよ、というお達しです。若造がそんな女性向けの高額商品をもらっても盛り上がらないだろう!ということだと察しました。(私は、かなり察しのわるい営業マンでしたが、それでもそのときにはすぐに察しがつくくらいの怒号でした。)
さて、どうしようか。ステージの上で、私はすでにバッグは受け取ってしまっていました。「これ、やっぱり返します。」というのも興ざめだし。”もうどうにでもなれ!”とおもい会場がさらにヒートアップしそうな一言を発してみました。『私はこれをあげたい人がいます。』と。でも、だれに、ということは全く考えていませんでした。
さて、司会者が、「では、お伺いしたいと思います。どなたにお渡しになるのですか」とききます。ここで、下手に部署の若い女性社員などを言えば、いろんな軋轢がおきそうだ、と思い、部署で一番のベテランで「肝っ玉母さん」的なの方の顔が思い浮かび『それは、当部のアイドル○○さんです!』と答えました。会場は一斉にどよめきました。彼女は非常に古くからの社員で、社長の新人時代には彼女は部署の先輩として「育成」したことがあるというすごい人でした。(後に知りましたが。)
彼女がステージ上がって、司会者が「どうぞ!」というと同時にバックを渡すと会場がもう大盛り上がり。僕は名もなき新人だったので、その方の名前が繰り返しコールされていました。
そんなこんなで、先輩たちの「ばか者!もらって降りてくるな」という課題をなんとかクリアして、僕は無事にステージを降りることが出来ました。ステージから降りてくるとそこには社長が。そして、彼女に「いやあ、元気そうで。相変わらず部署の人気者だね」と握手をしていました。”すげぇ…。”と思いました。そして笑いながら社長は僕にも握手をしてくれました。
その後、僕は残業をしに会場を抜け出して、会社にもどり深夜まで見積書を作りました。翌日から、しばらくは、お茶の時間に、お菓子をもらったり、同じフロアーの女性陣が優しくしてくれて、随分仕事がはかどりました。このときに、僕は理解しました。あのときに僕が選んだ選択肢は、あの局面で最善の選択肢であったことを。そして、それ以外の選択肢は、その後の会社生活のうえで大なり小なりのリスクを抱えるものになったのだろう、ということを後で思いました。
とはいえ、仕事の出来ない新人でしたのですぐにバッグ効果はなくなりました。『なぜか笑介』だったら、さしずめ、オチの「ズコーッ」となった気分。