アイデアを上に
アイデアの技法、というか、研修のときに雑談でお話しする部分、アイデアワークに関するコツ、をまた一つ掲載します。困っているリーダー諸兄にとってすこしでもヒントになれば幸甚です。
以下の内容がPDFでダウンロードできます。
アイデアを上に通す方法
アイデアを上に通す方法
良いアイデアがあっても上司へ通すところに難関がある。よくある声としては、こんな声が聞こえてくる。
「良い意見でも上司の一声でボツになってしまう。ミーティングがいつも顔色を探りながらになっている(全体が)」
「人の言うことを聞かない社長を聞かせるようにするにはどうすればよいか?」
「上司の一声で決まってしまう」
良いアイデアを実行していくには、上層部の適切な対処が要る。しかし「不確実なことはやらない」や「リスクのあることは避ける」志向の上司がいた場合、アイデアは通しにくい。とにかく数打つのは提案をする側も上司側も疲れるし、通らないことが続けばメンバーが無力感を学習してしまう。通しやすくする工夫が必要である。
創造的なリーダたちのうまいやり方を整理し、3つの方略として述べる。
1)アイデアを強化する
2)評価軸を把握する
3)意思決定へ影響を与える人の評価軸を使う
1)アイデアを強化する
アイデアに対して、【懸念事項】を列挙しておき、重要な懸念事項に対しての【対策方法】を検討しておく。上司へアイデアを提案する際に
「○○というアイデアを検討しています。
このアイデアの懸念点は、大きなところでは2つあります。□□と□□です。
これに対する打ち手としては、△△と△△という方法が考えられます。」
という形で提示する。上司がリスクに対する漠然とした心配をしてしまう前に、主要な課題とその解決方法を提示することで、具体的に検討してもらう。即GOとはならずとも「引き続き調査を進めてくれ」という回答を得るようにする。
2)評価軸を把握する
上司がアイデアや新しい企画を評価するときの評価軸(「新規性」「有用性」「実現性」など)をあらかじめ調べておく。あるいはさらに詳しい分解した評価軸を持っておく。「準備時間が短いこと」「必要な資材が少ないこと」「人手があまりかからないこと」や「投資対効果が高いこと」「顧客満足度が高いこと」など。上司の日頃の判断を通じて評価軸を把握しておくことも大事である。
そしてアイデア出しの後、その評価軸でアイデアを評価する。上位のものは通しやすい。下位だがぜひ提案したい場合は、その評価軸に沿ってアイデアをさらに発展させておく。
なお、アイデア会議を行う前に、発想のテーマに対する「アイデアの評価軸」を上司から聞き取っておくとアプトプットは効率になせる。ただし上司といえどもアイデアへの評価軸を明確に言えない場合も多い。アイデアが提示されて初めて評価軸が評価できることもある。その場合、自組織の中で重視されがちな評価軸を抽出し、5~10個程度にカテゴライズしておいて、カテゴリーを評価軸セットとしてもっておくと、引き出しやすい。
なお「アイデアの汎用的な評価軸セット」として「IDEVote(アイデア評価ワークをテーブルゲームで学ぶキット」の8軸をもとに自分の業界なりに表現して使うのも良い。
3)意思決定へ影響を与える人の評価軸を使う
上司が重要な意思決定の際に判断を仰いだりする人の判断基準や評価軸を用いて、アイデアをセレクションしておく。上司は潜在的にその人の評価軸を身につけているので、アイデアに肯定的な感触を持つ。さらに、企画を進めて上司が上に提案するときに影響を与える人からの応援が得やすい。
補足:
アイデアに関して困る上司の別のパターンとして「できそうにない上からのアイデアで、Projectがスタートすることがある」という声もある。この場合は、先に挙げた上司とは逆に「新規探索」や「新しい可能性を試す」志向の上司である。「新規性」は高いが「有用性」や「実現性」はあまり検討されていない。こういうアイデアが上から出された場合、それを適切な形に再定義してから取り組まないと振り回される。この場合、上の三つの方法はそのまま、アイデアの再定義の際に有効である。プロジェクトの初期段階でそういった観点でアイデアを適切に再定義してスタートすると良い。このタイプの上司は、現場が自主的にアイデアの潜在可能性を引き出し、実現方法を引き出してくれることことを望む。