復興創発会議in仙台、楽しくつながりと刺激をもらえる一日でした。

(米国のグーグルの本社の中で売られているアンドロイドTシャツ。エバーノート・ジャパンの外村会長からの頂き物です)
2011年9月3日。
仙台の駅近くで、日経BP主催のイベント「復興創発会議 in 仙台」がありました。これは、アンドロイド・アプリケーション・アワード(A3)のプレイベントのようなもので、A3応募締切が1.5か月後にいよいよ迫ったこの時点で、復興を考える学びと出会いと発想のイベントをしよう(と私は解釈していたのですが)という趣旨で、講演あり、ワークショップあり、懇親会あり、キャリアやメーカの最新事例のプレゼンありと、盛りだくさんの10時~18時でした。
写真は、と、いざ探してみるとデジカメには、ありませんでした。興味深いイベントで、かつ、面白いことが目白押しだったので、全然写真を撮る時間がありませんでした。自分のワークショップ中、普段は自分でもとるのですが今回はゼロ枚でした。それぐらい、かなり内容ぎっしりの日でした。振り返りつつ、石井視点でレポートしてみます。
9:30
(以下、時間は、だいたい、です。)
会場入り。会場のある4Fへいき、プロジェクタへの投影テスト。凄い機材が!なんかプロっぽい人が機材ブースにいて、おおー本格的な感じ!投影してストをしていると、講演者の一人、小泉勝志郎さんも来場。投影テストを素早くしてから、一度3Fの控室へ。するとそこには、講演者のエバーノート・ジャパン会長の外村(ほかむら)さんと、主催者の日経BP菊池さんが。二人ともすごく接しやすい方で、今日はよろしくお願いしますー、という感じですぐに4階へ。外村さんは、これに合わせてシリコンバレーから、仙台においでいただいたと聞いています。本当にありがとうございます。
講演者は、あとは、クリエーターというべきでしょうか、エンジニアでありデザイナーでもある閑歳孝子(かんさいたかこ)さんを待つばかり。少し新幹線の関係で、タイトな移動スケジュールで、開始10分前に、登場されました。彼女は、人気の家計簿アプリZaimの作者であり、ユーザーローカル社の社員でもあり、何より僕にとっては友人(カヤックの瀬尾さん)の奥さん、でもあります。
(瀬尾さんは、語れば長いですが無茶面白い人で、植物にブログを書かせるシステムを作ったり脳波で奏でるシンセサイザーアプリをつくったり、あと智慧カードのアプリ「IdeaPod」の開発もしてくださった方です。)
こうして、講演者4名が集まりました(私石井も講演者を仰せつかっていました)。
10:00
仙台時間。これは外から来た人が戸惑う感覚なのですが、仙台で行うセミナーなどを見ていると、大よそ集まるまでの暗黙の遅延時間、があることに気が付きます。石井の経験則から行くと、参加者人数をN人としたら、だいたい、「0.1×N」分だけ、遅延する傾向があります。今回は60名規模だったので6分遅れでスタートが言い頃合いかなと、思っていましたが皆さんの出足も良くてそんなに待たずに開始になりました。
初めに菊池さんから本日の趣旨の説明。大まかな内容の説明がありました。
では、さっそく講演1と2、それから、それを受けての会場交えた質問タイムがなされていきます。
講演1「小泉さん」
震災後のITシーンの推進者として、イベントにはこの楽しい巨人(189ぐらいある?)が大抵いて、シンボルタワーとして、ムードメーカとして、場や推進力が醸成されていました。そんな小泉さんからの震災後の彼の見た世界、そして、Hack for Japanなどのイベント、それからそこから生まれたプランなどが紹介されました。一人15分をめどにという事前打ち合わせはどこ吹く風で、本題に入る時点ですでに15分。そこから、引き込まれていくような話が展開され、会場との質疑を交えて、既に40分ぐらいは経過したかと。主催者・菊池さんとしては、次々時間で区切って進めることもキットで来たでしょうけれど、そうはせず、大事なことならばしっかり話してもらい、会場とのディスカッションも、場の潮目を見つつどんどん発言してもらえる雰囲気で進行をされました。
講演2「閑歳(かんさい)さん」
閑歳さんは、人気アプリZaimの作者さんでもあり、ユーザーローカル社の中の作り手でもあります。エンジニアでありかつデザイナー。そういうものが一人の中に同居していて、彼女の作るものはとても人を引き付けるものがあります。それは言葉にして語って下さったのですが、これまた面白い話で、パネラー席も次々質問し、会場やネットの向こうのUst視聴者からも質問が相次ぐ、非常に興味深いお話でした。UI(ユーザーインターフェース)、デザイン、などのエッセンスをお伺いするつもりで伺っていましたがそれの範疇を包含してもっと深い話も沢山ありました。
私が書いたメモ(パネラーとして前にいる状態でとったので、ますます、悪筆ですが)を、引き出してみるとこんなことが書いてありました。
何を作るかを決める前は「デジタル」で書く。
ここは興味深くてもっと聞いてみました。
Q)紙のサイズは?
Q)紙は横向き、縦向き?それとも適当に?
・・・
普通、我々は逆をしてしまっている気がします、情報収集の段階ではURLとかネット・デジタルと相性がよくって、デザインとか動きとかの可視化にはアナログの方がぐっと、香りがのったりしますよね。
UIを作る時に、気を付けている点。3つ。
・初回の人をゴールまで必ず届ける。
・一つの画面に機能は1つ
・”この人に使ってもらう”を思い描く
興味深いのでさらに質問させてもらいました。
Q)初回をゴールまで、の具体的な方策は?1画面1機能、と、この人にを描く、のはその方策の一つでもあると思うけれどもそれ以外には?
A)(実際にゼロから使い始めをその場でデモしてくださって)、画面を開くと、バルーンが出てそこを押させるような形に。押すつぎ。数字を入力するんだろうなという感じにキーパネルがあらかじめ出ている。そういう、ここではこれをする、が分かるようなものにして、最後まで、一巡できるようにする(すごく石井意訳ですが)
・・・
この辺、興味深いですね、多くのアプリが落として開いて触って、捨てられます。すぐに目的の行動を「やり始めて、終わるところまで行ける」ことがいかに大事かを、思いました。行動の基本動作ワンセットを、チューターがいて一緒に、すっごくシンプルに一巡しちゃえば、後は、使い手しだい。そういう、単純明快の導きをアプリに。心したいな、と思いました。
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これも興味深くて質問を石井からして、お答えいただいたことです。
Q)アイデアはふつう増殖するし様々な人が使えば様々なアイデアや要望が集まってきますが、それを全部入れると複雑で難しいものになる。シンプルで居続けるコツや工夫、ぜひ教えてください。
A)好きなことば、あり。(増やす、は技術がいるが) 削る、は哲学が要る。シンプルであり続けるのはそういう所が要る。
A)ただし、8割の人がいる、というものはつける。自分が要らないなと思った仕様でも、8割の人が望むようなものはつける。
Q)それは具体的には?
A)締日。これは当初は変更できるようにしなくてもいいと思っていた仕様だけれど、「25日でしめたいとか」ユーザによって設定したいという声が多かった。そういうものは入れる。
・・・
この辺も、作る・発展さす、の実践レベルでは非常に、素敵なノウハウな話だと思います。どうしても複雑になります。アイデアを扱う仕事を長くしていると気が付く人々・発想の特性に「アイデアは分岐する」「人は自分の出したアイデアに高い価値性を感じる」という物があることに気が付きます。この特性は、ひいては、作品や構想をどんどん複雑にし、コストを上げ、輝きとんがりをダメにします。で、逆に、シンプルで居続けようとして「聞く耳持たない、唯我独尊な作り手」になってしまうこともあります。発展していく人が、アイデア・要望の大波の中で迷わないための重要な指針だと、私は思います、このあたりのコメントを。
人数×刺さる深さ=面積。
量と質の両方の掛け算を大きくする。
テストは40人ぐらいに配る。
Zaimを作るにあたって、テッククランチを一年分読んだ。登場しているものは、古いものが今っぽくなった概念。
この点もまた、発想の観点としても興味深いですね。ある種、発想手法「はてなタクシー」に出てくる考え方は、この辺を引き出す道具にもなりそうだなぁと思いました。昔からある仕事や商習慣をIT化するだけじゃなく、今っぽい感じにIT化する(それは、少し前だとSNS、未だと、ソーシャルツール、少し後だと、クラウド、等だろうと思うのですが。ほとんど一緒じゃないかと言えば、ITの21世紀初頭における革新はその位の範疇なので、その通りなのですが(多分、3Dプリンターの家庭普及で、今の電子データしか送れない21世紀初頭にITが持っていた意味は変わるだろう思いますが、それはまだ少し先の話)
古い業種、商習慣、不満足な20世紀的な対応の必要な何か、には、ITで世界中に知られる道具を作れる可能性があるだろう、と思うと、もう、可能性に満ちているな21世紀初頭というのは。と思うのです。
他にも、閑歳さんのお話は面白くって、会場からの質問もバンバン出ていました。ハウツー本や戦略論の言葉で借りてきた言葉じゃなく、自分の攻め方を自分でまとめた物には、やはり香りがあって、聞いている人を刺激し、引き出しますね。
11:50
講演者4人いて、まだ2人目で、午前の講演パート終り。午後の講演パートに持ち越されます。この進行については、会場ができるだけ参加している場を作ろうという「オンタイムありきじゃなく、参加者の目線で最適な進行」をされておられるんだなーとおもいつつ、ワークショップの内容は時間が減ることを覚悟して、どういう時間枠、求めるアウトプット、でも合わせられるように、頭の片隅で、ワーク内容を高速で組み直しているようなお昼でした。このままいくと、遅れはさらに拡大するだろう、ということも、許容できるようにしようと思いつつ。
お昼ご飯かなと思いきや、インフラ企業さん(ドコモさん、auさん)、それから端末のメーカー企業さんから、復興とITについての視点や、最新技術を生かした製品化事例を紹介いただきました。おお、そんな機能もあるのか、これはすごいなー、という細やかさを備えたスマートフォンもあって、これは「うわー、これは欲しいな」と思う機能を有する端末も結構ありました。
13:15
昼食。皆で会場でお弁当を頂きました。主催者のみなさん、ありがとうございます。このお昼のお弁当タイムも、すごく良いネットワーキングの時間になりました。私は会場に来てくれていたTEDx主催チームをいろんな方に紹介したり、懐かしい人との再会もあったり、あるいは、自分の愛用するiPadアプリ「ゼンブラシ」の作者さんが来てくださっていて興奮してこれがいかに楽しいかを作り手に熱心に語ったり、最新の端末もずらっと展示されていてそれをいじって見れたりして、過ごせました。
14:00
講演3「外村(ほかむら)さん」
エバーノートジャパンの会長をされている外村さんは、カリフォルニアに普段はおられます。経歴もおもしろくてアップルにいらしたこともあり。シリコンバレーの事、IT起業の事をお話しいただきました。それもそのはず、SVJEN(日本人のシリコンバレーネットワーク)の初代のリーダをされていたそうです。情熱や高く広い視座を沢山、会場にいただき、熱い質問もたくさん出されました。
14:55
講演4「私、石井」
”石井の分は、時間次第ではカットしてください”と菊池さんにお伝えしていたのですが、お昼休みに、私の講演パートを聞きに来てくれた方もいらっしゃるというを聞いてしまい、それでは丸ごとカットというわけにもいかないということで、すごく早口で10分でしゃべる、ということにしてお話をさせてもらいました。内容は、「アプリのアイデアを発想する、5つの路線」というものです。
そのスライドは、ほぼ同じものがPDFで、石井のブログにアップしてあります。
この後、確か、休憩を、10分ほど入れました。
15:15
復興創発ワークショップに入りました。本来は3時間で3つの内容でしたが、場の温まり具合や既にかなり綿密に皆さんの中に発想の材料が共有がなされていたので、ワーク1はスキップしました(これで、30分ほど、遅れを解消)。
ワークショップで使ったスライドは、こちらです。
http://ishiirikie.jpn.org/article/47699810.html
ワーク2、「役割付与型の提案会議」
これは、復興系のアプリを開発しているハッカソンのプロジェクトメンバーが初めに5つプレゼンをし、一般参加者は、各チームに「役割 E,D,B,U,あるいはA」を選んで、提案会議に参画します。
これは、このワークの説明5分、プレゼン20分、会場設営とグループの形成で5分、提案会議を30分、という構成で行いました。当初は、45分の提案会議と、全チームからのプレゼンを想定していたのですが、時間との兼ね合いで、本質に近い所へと削ぎ落としていき、こういう構成に現地で修正しました。
これは、開発チームに入って、部外者の方が議論をできる場と仕組みを作り、具体的な開発ケースでディスカッションすることを可能にしつつ、既存の開発チームにとっては、一緒にやりたい仲間を獲得出来たり、発展への知見を収集出来たりする。ということを目的に今回新たに開発したワークです。
会議の後、2ケースほど、実践してみての感想を伺いました。他にも閉会後に、各グループでの進行をざっくり伺ったところ、今後のこのワークの発展系への材料が得られました。
(石井のまなびメモ)
(時間枠をもう少し設けて、30分×3などにして、いくつかのチームを体験できると、学びや出会いがぐっと増えそうに感じました。また、グループを組んだら、冒頭にアイスブレイク的に他己紹介ワークをして、お互いの持っている専門やリソースがもっと分かるようにしたらいいかもしれない、と感じました。後は、役割をE,D,B、Uとしましたが、この点はもう少し分化をしたり、状況によって選びえる4役を変えてもいいかと思いました。)
総じていうと今回の時間尺の中でいえば、狙いどおりのもの(それよりちょっと上)が達成出来たように思います。
この後、10分の休憩を入れました。
16:40
ワーク3、ブレストCafeです。
基本的には、5分交代のペアブレスト。これを会場全体で行いました。今回は発想の刺激剤として、復興デザインのテーマリスト10から発想の手掛かりを増やす道具を作り、お渡ししました。
5分ブレスト、1分メモ、交代。これを4ラウンド行いました。若干伸ばしたところもあり、ここはだいたい30分位。
この後は、アイデアスケッチを一人2~3枚書き出しました。短い時間でしたが皆さんかなり面白いものを書かれていました。そのシートを4~5人のグループの中で回して魅力度の高いモノに☆を付けていきました。そして、最後に5分、アイデアのレビューをそのメンバー内でしました。☆の多い順にアイデアの紹介とその内容を発展されるようなミニブレストです。
こんな感じで、グループワークは最後まで、超特急で、効果性やアウトプットとして確実に提供したい線を、現場でリアルタイムに話しながら、残時間を見越して、どんどん組み替えながらワークを削ったり、入れ替えたりしながら、進行しました。皆さんも、これは相当に脳のエネルギーを使われたと思います。ありがとうございました。
17:30
仙台産アプリ、プレゼン
ここでは、5つのアプリを、それぞれの開発チームがプレゼンしました。
・タンシェルジュ(ユーメディア矢田さん)
・IdeaPod(私石井)
・萌え風鈴(DMP佐藤さん)
・脳波sports(PPP藤井さん)
・太陽光発電量シュミレーションWEBアプリ(西原さん)
時間が押しまくっていて、十分な準備もできず、書画カメラが暗い中でのプレゼンになってしまったことを、みなさんに、お詫び申し上げます。
これらの内容について、外村さんたちが審査を即興でしてくれて、シリコンバレーからのお土産などを、プレゼンターに1つずつ贈呈していただきました、ありがとうございます。石井は冒頭の、アンドロイドTシャツを頂きました!
17:50
懇親会が始まりました。本来の懇親会は17:30スタート予定でしたので、90分遅れを、奇跡的に20分遅れで、この時点にたどり着きました。なんとかほっとして、僕もこの時間はすごくたくさんの方と意見交換やミニブレストをできて楽しかったです。
18:15
閉会、そして、懇親会へ。
8時間に及ぶイベントでしたが、冒頭から終りまで、みなさんがかなり積極的に参画いただけました。皆さんや主催者さんのお役にたてることが少しでもできたならば幸いです。私自身、講演とワークショップの立場で参画させてもらえたおかげで、他のパネラーの方と近い距離でお話しできたり、今回のようなタイトで盛りだくさんの中、次々、進行を修正しながら行うワークショップなど、かなり貴重な経験をすることができました。これは、本当に得難いノウハウが大量に得られて、場を下さった皆様に本当に感謝しております。この場で得られた進行のノウハウはまた、社会に還元していきたいと思います。特に、アイデアソン→ハッカソン→その先の資源(ヒトや情報)の獲得ワーク、という3段目のロケットに相当するものの原型がこの場から生まれたとおもいます。ハッカソンのチームがよく抱えがちな課題を打破する一つの形の原型も、今回の、復興創発会議、から誕生したんだ、と近い将来、皆さんに紹介し出来るように、石井の中でももっと発展させていきます。
追記:
当日の皆さんのツイートが、こちらからご覧いただけます。
http://togetter.com/li/183166