CBS。カードブレインストーミング
発表の苦手な人も発言しやすくなるブレストがあります。
カードブレインストーミング。略してCBS、とも表記されます。
(やり方)基本ルールと基本作業はブレインストーミングと同じです。違うのは、発言のときにカード(大判のポストイットが使われることが多い)にアイデアをまず書くこと。カードに書いてから、”ハイ”といって、カードを見せながら、アイデアを発言する。そういうブレストです。主なメリットは3つ。
1 アイデアが残る
2 アイデアの幅が広がる。(絵で伝えるアイデアが。)
3 発言の苦手な参加者の発言が増える。
これらについて具体的な内容は以下。
1 アイデアが残る
アイデアが残ることは大きなメリットがあります。口頭だけでブレストをすると、アイデアの分岐点に戻ることが難しいものです。本人が分岐点の他の選択肢があったことを忘れてしまう。本人は覚えていても、他のメンバーが忘れているため、”あのアイデアの所の別の発想だけど・・・”という発言をしても皆がついてこれない。カードがあると、そのカードをさしながら、”じゃあ、ここで今度は小さくするアイデアを、、、”とすぐにたどれます。また、アイデア出しの終了後にも役に立ちます。KJ法などでまとめるとき、そのままカードを動かすことができ、便利です。
2 アイデアの幅が広がる。
ブレストをたくさんやっていくと分かることがあります。
「ブレストの成否には、コミュニケーション能力の高い低いが、強く影響する」。
人間の脳の役割に、右と左があるといわれます。すこし整理して言うと、
・右脳と左脳
・創造と論理
・図と文字
・”考えること”と”イン・アウトプット作業”
発想作業自体は、創造の部分、つまり右脳。そこでは物事は空間的、図形的なんですね。テキストラインを論理的に処理する作業ではないんですね。
一方で、発言する、誰かの発言を聞く、という会話作業は、論理の部分。つまり左脳。そこでは物事は言語的なんです。言葉は舌と唇の動きを通じて文字情報に近い情報として、相手に伝わります。
ブレストは、頭がすごく活動する状態です。人のアイデアをどんどんインプットしながら、同時に、それを次々と創造エリアに取り込んでは、加工・変化させて、アウトプットしていく。ところが、創造に使える情報は図的なものが多いのに、言葉のみで伝達するのは結構骨が折れます。図で言うとこうなります。
言語(IN)⇒創造(考える)⇒言語(OUT)→言語(IN)・・・繰り返し。
絵を使うと言語では伝えにくいことが非常に短時間に、アウトプットできることが結構あります。創造性の手法の中では、「絵をかけ」という指示が結構あります、実際。受け取り手も、絵のほうが情報量がぐっと上がることがあります。見たことの無いものを言葉で説明されるとかなり理解がつらい、そういうことです。
その意味では、絵をかくことができるCBS(カードブレインストーミング)は、創造活動を、よりダイレクトにアイデアとしてアウトプットしていきます。出てくる発言が「言語による表現」のみのときに比べて、”アイデアの幅”が広がっていることに気づくでしょう。
3 発言の苦手な参加者の発言が増える。
通常のブレストをすると、どうしてもなかなか発言のタイミングが計れず、そうしているうちに話が流れてしまったり、アイデアがなんだか色あせちゃう。そんなことってありますよね。アイデアマンはそういう経験が少ないかもしれませんが、初めてのブレストの参加者は、ちょっと出せないでまごまごするものです。
また、ブレストがまだはじまったばかりで場が冷えているとか、初対面が多くて、ばかばかしいことを言いにくい雰囲気との時もあります。こういうときに、突飛なアイデアを出したら、みんなの反応が薄い。発言者がなんか罰が悪い。なんとなくみんなも発言しにくくなっていく。そういう負の加速へ。
そういうときには、フリップボード会議、でご紹介したように、紙に書いてしゃべる、ということにするといいんですね。アイデアを書くことで結構整理されます。それから、途中で、「あ、つまらないかも」とおもっても、カードに書いちゃったんだから、とりあえず発言しきらないと。という心理状態になります。自分へのエクスキューズが作られるんですね。発言の苦手な人の発言が増えるゆえです。
以上、CBSのメリットでした。
なお、デメリットもあります。まず、ポストイットやカードというツールが必要になること。ペンもいります。張るための大きな平面も。ポストイットは100円ショップにいけば100円で、100~200枚くらい手に入りますが。
また、アイデアマンにとっては、書いてから発言、というまどろこっしさがストレスになります。発言をどんどんする人にとっては、スピードが下がるんですね、自分のアイデアを場に出す速度が。これは、アイデアの多様性のため、しゃべらない人のアイデアを引き出すために、我慢してもらいましょう。(アイデアマンは途中から発言を書かなくなります。必ずファシリテータかリーダーは、「よし、そのアイデア、カードに書いて場においてください」とカード化を促すことが必要です。)
以上、本日はCBSの話でした。
机の上に、アイデアのポストイットがどんどんあふれていく姿というのは、たとえ駄作ばかりでも、なんだか、「すごくやれている感」が醸成されます。そうなってくると、安心して突飛な発想もできるし、アウトプットできます。ポストイットがわんさか消費されていくという視覚情報。意外とチームの意識の持っていき方の意味でも、重要な小道具、なんです。一度、だまされたと思って、カードブレストをしてみてはいかがでしょうか。