アイデア・グリッド
マイケル・マハルコ『アイデアのおもちゃ箱―独創力を伸ばす発想トレーニング』(1997年、ダイヤモンド社)というアイデアの手法に関する優れた本があります。原書のタイトルはTHINKERTOYS;A HANDBOOK OF BUSINESS CREATIVITY FOR THE’90sです。多様なアイデアの手法が書かれていてかつ読みやすい本です。
この本から「アイデア・グリッド」を紹介します。
前説としてこうあります。「ビジネスの世界もまた個々の事象から成り立っている。チャンスを捉えるには、ビジネス界を構築している個々の事象に目を向け、その事象同士の関係性をあらためて理解する必要がある。これを可能にしてくれるのが、アイデア・グリッドである。」
「グリッドは複雑で大量の情報を圧縮できる強力な道具である。(中略)

高関与型商品とは、車やセーリング・ボートといった高価な製品のことである。
低関与型商品とは、日用品などの比較的廉価な製品のことである。
思考型商品とは、言葉、数値、分析、認識に関する製品で、その購入に際しては情報や資料が求められる製品のことで、例えば、自動車、セーリング・ボート、コンピューター、カメラなどである。
感覚型商品とは、諸費者の情緒的な欲求や願望に訴える製品のことで、例えば、旅行や美顔や化粧品などをさす。
製品とその潜在的市場を調査してその製品をグリッド上に載せてみなさい。例えば、生命保険ならば、上/左に入り、殺虫剤なら下/左に、イミテーションアクセサリーならば、下/右に入るだろう。
製品の位置がいったん決まれば、それでアイデアを生み出す強力な土台を手に入れたことになる。(中略)完璧な企業や穴の無い市場などないし、そもそも商売において完璧などということはありえないことである。そこで新しいアイデアを得る唯一の方法は、市場や産業やビジネスの穴を突き止めることである。アイデアグリッドを用いれば、それが簡単に出来るのである。」
この後、例示として、「どんな方法ならば、4歳から12歳の子供を対象にしたユニークな園芸本ができるだろうか」ということで、既存6社を分析し、それらがすべて、下/左(低関与型、思考型)であると整理。上/左(高関与型、思考型)は百科事典。上/右(高関与型、感覚型)は美術全集など。下/右(低関与型、感覚型)は塗り絵など。
全ての選択肢に目を通した後、下/右を検討することにして、最終的には、『野菜スープの育て方』と題した塗り絵帳としてヒットし、ベストセラーになったそうです。
「この本はまず美味しい野菜スープの説明を行う。それから読者に実際に野菜作りを体験させる仕掛けになっている。種蒔き、水やり、草取り、収穫、そして最後にスープ作りと試食にいたる」
とのこと。
さらに最後にこうまとめています。「グリッドは、マーケットという危険な海のナビゲーターである。言ってみれば、読解を必要とする記号体系ということになる。グリッドは読み方次第で、すべてを教えてくれるか、何も教えてくれないかのいずれかである。」
以上、マイケルマハルコの引用でした。
分析的に考える、というのも創造的思考である、といわれています。分析的なフレームワーク、代表的なものは、SWOT分析、5フォース分析、バリューチェーン分析、プロダクトポートフォリオ分析、市場・製品マトリックス、などなど、マトリックス状のもの(一部、あるいは特徴的な形状のもの、がありますが。)は、効果的に発想や選択肢を引き出すツールでもあります。特にこのアイデア・グリッドでは、2軸として、特徴的なとり方をしています。市場を見るときに、どういうに軸を取るのかは、分析者の腕にかかっていますが、この図の2軸は、優れている2軸ですね。