一人ではたどり着けないものがある。
私がすばらしいなぁ、と思う本に『アイデア会議』という本があります。著者は、あの優れたアイデア出しの本『考具』を書かれた”加藤昌治さん”です。
その『アイデア会議』のP21~に、(アイデア出し、企画作りを)一人でやるよりも、チームでやったほうが、良いことの理由を、端的に実感させるくだりがあります。初めてよんで「へぇ~っ」とおもいました。そして「なぜチームで?」というタイプの質問には、いつもこの本のこの部分を引用しています。
以下、『アイデア会議』より引用。(P21~23)
―(引用)――――――――――――――――――――――――
知っていたけれど、いえなかったことって意外にたくさんあります。以前ガーンと大きな衝撃を受けたゲームがあるんですが、それは
「心、のつく漢字を教えてください」というもの。
まずは一人で1分間。白い紙に書き出してみます。いくつ出ますでしょうか。続いて隣同士で2人組のペアになって、再び1分間。すでにお互いが出せたものを見せ合うと、「あ、あったあった」があって、さらに「お、こんなのあったね」でさらに増える。そして2つのペアを合わせて4人になって、また1分間……。漢字の数は、どんどん数が増えていきます。だいたい10から15人ぐらいのグループになって、一般的に使われている漢字がほぼ出尽くします。
このゲームからの気づきが2つあります。まずは「知っていたけど、思い出せななかった漢字がいかに多いか」ということ。特に4人組になったあたりで「もうないだろう」と思っていたりすると、ショックが大きくなりますね。
そして「10人以上で出し合って、やっと出し尽くせる」という事実。そうです、4人や5人では既にある事実ですら出し尽くせないのです。わたし自身がこのゲームを初めてやった時の衝撃はこの事実を突きつけられたことでした。
(中略)
アイデアとは確かに一人で考えるものです。しかしそれだけではおそらく激しい競争が待ち受けているビジネス社会をスイスイとくぐり抜けていくことは至難の業。いい切ってしまうなら、一人ひとりが考えたアイデアを集め、チームで考えることをしないといいアイデアは出ない、のです。
(中略)
自分一人では決してたどり着けなかった素晴らしいアイデアが出てきた瞬間は、何ともいえぬ高揚感があります。
(中略)
ベースは個々人にあるのは確かなんですが、チームとして考えたほうが強い。予想がつくものから思いも寄らぬものまで、いろんなアイデアが集まってくるからです。
――――――――――――――――――(引用ここまで)―――
このワークをワークショップを行うと、大人な参加者ほど、反応するものがありそうです。個人の力の高い人ほど、チーム活動の無駄さ加減に目が行くものですが、チームの力は自分独力をこえる、ということを端的に実感しそうです。
私も気になって「こころ」がつく漢字がどれだけあるのか、ちょっと調べてみました。インフォシークの辞書の検索によると90弱、ありますね。その中で、一般的に使われている漢字だけみても、ざっと50はありました。「こころ」の付く漢字
とてもじゃないけれど、正解リストを見ていたとして、なじみのある漢字50をあげることは出来ないでしょう。
一人でやるよりも、チームでやる方が、必ずいいものが出来る。(もちろん、ここの努力があることが、大前提ですが。)
行く手を阻む障害物をどかすことを考えてみると良くわかります。小さな石の山が道をふさぐならば、一人でも時間があればどかせます。能力の高い人がだぁーと片付けることも出来るでしょう。しかし、人間一人では持ち上がらない重さの岩が、道をふさいでいた場合、どれだけの能力があっても、一人では、その道を進むことはできません。その人の力に及ばないとしても、人々をあつめて、力を合わせることが出来る人は、岩をどかし道を行くことが出来ます。人間には、一人で出来ることには、限界がある。ということですね。
なぜチームでやらないといけないの?という問いに答えるのはなかなか難しいものです。理屈で答えたとしても、なかなか納得は生まれません。こうした手法は、とても効果的な「気づき」を提供できます。機会があれば、ぜひ試してみてください。