具体的なズレ・メソッド
コンセプトや話し合っていることや希望などを効率的に巧緻化する方法があります。(巧緻:読み=こうち:精巧で緻密なこと。たくみで、細部にわたってよくできていること。また、そのさま。)
一般には、手法としての名前が無いので、名前をつけました。
「具体的なズレ・メソッド」
1)とにかく直ぐに具体的な線を描き、
2)具体的なズレを皆が感じ、じゃあ具体的に何がどれほど違うのか論じ
3)高精度にあわせこむ(巧緻化する)
たったこれだけです。
モノを触らない社会になっていくと、概念的なモノが、制作するアイテムになったり議論の対象になったり、時には取引の対象になったりします。(権利の契約などはその一例)
かつて、タンジブル(手にとって触れるもの)メインの世の中であれば、具体的に論じなければリアルなものは何一つ出来ない、ということを当たり前のこととして知っていました。しかし、今は社会が複雑です。特に「モノを制作をする人は具体的にしか仕事はしえない」ということを、時として多くの人が忘れます。その結果、仕事の依頼の仕方、制作を発注する仕様が、「あいまいなままの線引き」が多くなります。企画、広告、WEB、サービス事業などにおいては、クライアントの要件があいまいで、基本的な要件定義が出来ていないことも良くあります。
漠とした構想・アイデアについて、要件定義すること、あるいは漠とした話のぼやけた輪郭に、明確な輪郭線を描いていく作業は、なかなか難しいものです。
そのときに、上記の3ステップ「具体的なズレ・メソッド」はシンプルだけど効果を発揮します。なぜか。その本質は、ここにあります。「どんな人でも”違っていると感じる力(批判能力)”はとても高い。」ということ。
何かを見せらときに「うん?これがベストなのか?」「あれ?なにか違和感がある」「そこはそうじゃなくってさぁ」そんな意見が直ぐに出ます。これは会社なら大抵、新人が発言したあとにでます。会議で新人の意見が違っていると、課の人たちは一斉に、わいわい。しかし、かといって新しいアイデアをベテランが出すことは稀。それは出したくない、というだけはななく、「創る力」と「批判する力」はアンバランスだ、ということなのです。ろくなアイデアを出さないよ、といわれている組織でも何かを見たときに「そいつはおかしいだろう」という意見は直ぐに感じて批判をすることができます。
人間のこの批判力は鋭くて、具体的な図や具体的な文章になると、本質とずれていることを、感じて述べることが出来ます。不思議とあいまいなままでは、この能力は働きません。(総論賛成、各論反対、な組織で頻繁に観察されます。)
長くなりました。
一発で正確な線にそって書こうとすると非常に時間がかかります。短い時間で、皆が考えていることのアウトラインを描き出そうと思ったら、素早く、ズレていてもとにかく具体的な線を描くことです。すると、ズレを具体的に感じ取った人たちがそれを修正します。そして、直ぐにそのラインは巧緻化します。
個人の考えを描き出すときも同じ。正確に書こうとすると筆は止まります。違っても書く。書いては直す。「具体的なズレ」を素早くつくることを、第一に筆を進めると巧緻化が早いはずです。
追記:
仮置きテイスト、というものが、ふわふわした構想段階では重要だと、以前書きましたが、仮置きテイストというのは、具体的なズレをつくり、素早く精緻にあわせこむ、ということともいえます。