ブーバとキキ、直感とはなんだろうか。
ブーバ/キキ実験という興味深いものがあります。シンク!(Think! WINTER 2008 No.24)のP19で、その記事に出会いました。調べてみると古くから知られている話なんですね。
簡単にいうと、こういうものです。
設定はこうです。
火星人が使っている文字が発見されました。ひとつはとげとげしたヒトデのような形。ひとつは曲線で構成された広がりつつあるアメーバーのような形。(実際には図があります。)
火星人の会話を聞いて、一方が「ブーバ」で他方が「キキ」と読むことがわかりました。それでは、どちらがブーバで、どちらが危機でしょう。と聞きます。
するとほとんどの人は「とげとげのほうが”キキ”で、曲線のほうが”ブーバ”だ」と答えるそうです。(補足:石井の周りでも実験しましたが、20人中19人がそう答えました。)
これはどんな言語を話す人に見せても、結果は同じだそうです。確率論から言えば5分5分の確率です、まったく手がかりがありませんから。
”こっちがブーバだ””キキって名前はこっちっぽいな”という確信めいたもの(直感)が生まれるようです。
(約80年前、ヴォルフガング・ケーラーの行ったブーバ/キキ実験)
このP19の記事によると、脳の大脳皮質の前頭葉のすぐ内側に「線条体」(ストリアツム)という部位があり、「この絵が気に入った」「この場所はなんとなくよさそう」という直感がここから生まれているそうです。
さらに、ひらめきと直感が違う。とも。ひらめきによって得た答えは、「なぜそれが正解か」自分でわかる。大脳皮質や海馬の仕事。直感は「なぜそう思うか」を口で説明できない。(そして、上記のブーバ/キキ実験が、示されています。)
ここからは私見です。
私はこれまで、直感とはいい加減なもの、説明できない偶発的なもの、というイメージを強く持っていました。直感的な判断はあいまいであり、思いつき的である、と。しかし、芸術の良しあしを感じる心、子供へのある種の感じ、自分が好きと思うこと・きらいとおもうこと。それらについてはある部分が、直感の働きであることを認めてもっと積極的に観察してみよう、と思いました。
特にアイデアを評価する際に、「なぜかは言い難いが、これは筋がいいぞ」と感じたものはやはり最後までのこっていたりします。言葉を連ねて、分析を重ねればそれがなぜいいと感じたのかは、説明可能だろう、とおもっていました。しかし、ブーバ/キキ実験のように、なぜそう思うか説明できないもの、も世の中にあります。アイデアの評価する際に、その部分が決してないわけではない、と思います。
ロジカルな説明責任を常に求める姿勢は尊重されるべきものではありますが、ときには、直感の力をもとに、アイデアを選び取ることともっと正面から付き合ってみる必要がありそうです。
なぜ、それがいいと思ったか、説明ができない。だけれども、確かにそう感じた。ならばそう感じた自分の線条体の働きを信じてもいいのかもしれません。
限界状態、極限状態、未踏領域、最先端、深い深い体験には、説明しがたい本質的な力がある可能性も視野に入れておきたいと思いました。