ブレインストーミングの研究動向、に着想をえる
創造学会でNIIの先生からとても興味深いご発表がありました。オズボーン以降に展開された研究で、ブレインストーミングを研究対象としたブレストのアイデア生産性の研究が結構あり、それをサーベイして動向研究として発表いただいたものです。
詳しい話は別途書きたいと思いますが、印象に残った話をピックアップします。
[印象1]個人ブレストとグループブレストでは、どちらが生産性が良いか。個人の方が勝る。8割ぐらいの事例で、そうなる結果であった。生産性ブロックという概念がある。複数人のブレストでは、発言の機会を待つ。そこが生産性のロスになる。と。もちろん、人数が多い方がアイデアを生産する総「数」は増えるけれども。
補足:たの先生から「ブレストをする際に、メンバー全員が興味もつテーマを設定することが重要である(石井補足:オーナーシップの確認)。しかし、ブレスト観察実験では、興味の持てない借りてきたテーマである。これでは、そもそもブレストの状態になっていない。そういうチームを観察してブレスト生産性の低下うんぬんを実験で議論しては、そもそもだめじゃないか」という主旨のご発言。ブレストのテーマ設定が与える影響は大きいと私も思います。よいテーマ設定はそれだけでチームのエンジンに火をつけますから。着想⇒設定するテーマをコントロール変数にすると面白い実験ができるかも。
補足:この種の実験では、アイデアの生産性を図る指標は「アイデアの数」でなされている。質的評価はされていない。これはアイデアの一側面を切り出したが、生産性ロスを起こしたとしてもその反面、斬新度の高いアイデア創出面では、観察されていない中で、重要なことが起こっているかもしれない。着想⇒アイデアの質的判定を含めると面白い実験ができるかも。アイデアのオーソドックスな評価尺度で行う代わりに、チームごとに自由度を持った、アイデア評価ツール(ツール自体は不変)をもたせて、自己評価させる、という同一環境をつくり、多数の実験をすると人数を変化させると面白い結果がでるのではないか。
[印象2]グループでは生産性が下がる、という実験をさらに実験した研究がある。その際に、ファシリテータ、リーダ、ブレストのルール追加、などの面が見出された。グループの方が、数割のアイデア数の増加をみせる、という結果に。
着想⇒ブレストの実験をする際に、4つのルール、無味乾燥なテーマ、というのは、生命体の細胞の中のもの取り出して、観察した感じに似ている。体内において観察するのと、感想した顕微鏡室で観察するのでは、違う。生きた環境をシンプルに再現するために、シンプルな実ブレスト環境モデルを作る、ということを整理したら面白いのではないだろうか。そのモデルの中の変数をコントロールすることで面白い結果が見えるのではないか。
[印象3]対面から電子式ブレストに研究対象はかわってきている。測定が非常にやりやすいからだ。電子式の場合は、生産性ロスが発生しないので、個人のブレストよりも生産性がよい、という観察結果がである。
他の先生から「対面ほどの刺激が得られないので、そこを工夫したスタイルも検討されて、研究事例がいくつかある」という主旨のコメントが別の時間にあった。
着想⇒対面と電子式の二分法を、ながらかにつなぐ変数がないか。その変数をコントロールしていくとおもしろいことができるのではないか。たとえば、すりガラスとボイスチェンジャーとマイク・スピーカーで隔てたメンバーがブレストをする。その変化量はコントロール量X。自分の発言をいつでもできる電子式と生産性ブロックを生じる対面式の間をなだらかにつなぐ「留守電風発言」機能をつけると、Xが成立して、実験が面白いのではないか。
[エクストラ]
その後、昼食をその先生と取った時に、ブレストの本質的なルールに対するディスカッション。批判禁止(判断遅延)とはなにか。「批判は、された方が批判ととらえなければ、批判ではないだろう」「創造的に考えるにはストレスのないことが重要。批判のない環境を作るとは、そういうこと(石井補足:批判の禁止より本質は、他者・自身にストレスとなる行為の禁止、が本質かもしれない。舌打ち・溜息、発言者へむけたしかめっ面、なども禁止対象にあたる?)」「ノーを言うだけはだめじゃないか。壁を超えるために、懸念事項を示したら、別の方向性をいくつか提示する、というのをセットにすればいいのではないか(石井補足:建設的判断は遅延しないでもよい、サブルール化?)」
以上です。
面白いご発表をしていただいたS先生、ありがとうございました。D論に向けて、基盤を作るような俯瞰的情報をいただいたと思います。