未踏領域へ踏み出す時には、「セルフよりどころ」を生成しよう
無いものをデザインする心、で書きましたが、自分自身が未踏エリアの先頭をいく人々は、世の中に、詳細な地図はなにも存在していません。
” 己を信じて、暗闇の中をいく。”
そういう心理状態は非常にきついものがあります。似た行動をする人として起業家の存在が知られています。かれらは、自分のよりどころを自ら作り出し、迷った時にはそれをよろどころにする、ということをします。極めて簡単に言うと、「セルフよりどころ」を生成しています。その本質がなんであるのか、すこし考えてみたいと思います。そこから学びます。
まず、起業家の「セルフよりどころ」となるものは、「ビジネスプラン」です。事業を立ち上げるにあたって描くビジネスプランは、「まだ到達したことのない土地の地図を書く」という行為です。ある調査では、起業家に開業一年後、ビジネスプラン通りであったかをたずねてみると9割はNOだと答えたそうです。まだ分からない領域のことを書くので、当てていくのは難しい。しかしなお、その地図には意味があるとしたら、それは何でしょう。書いても予想通りにならないのに、皆が書くのは。それは迷った時に判断指針になり、かつ、事実が予想と違った時にそれは「どれだけずれた」のかを、うけとめる座標軸になるから、であると多くの起業家は言います。
9割は予定通りには進まない。
しからば、なぜ。
創業前には、具体詳細はまだしらなくても、社会を俯瞰的な視点でみてその事業領域をさだめます。また、実働に追われることのない静かな長い時間をつかって「考えて」つくってあります。事業開始前には(個別の小さい損得は知るすべがありませんが)長期的にみて、もうけられる方向に進路をとっています。
起業家は、創業すると非常にいそがしい。その結果、短い時間で判断していかないといけません。予定通りのときには、追認、だけですみますが、予定と違うことがおこる、軌道修正をかけないといけなくなる、というときには、困ります。この時に、ビジネスプランをみかえすと、長期的視野で正しい方向をしめしてあります。短期的な利益、に観点が固まっている時に、観点を変えて長期的視野になることは難しいですが、ビジネスプラン(過去の自分)は、自分を助けてくれます。
短い時間で総合的に考える、という作業を
過去の自分の思考能力が、補ってくれる。
予定からずらす場合に、どれだけずれたかが、分かることも貴重な情報となります。半年にわたり軌道修正をした場合、俯瞰的に見た業界の風が、実は傾向としてやや異なるのではないか、ということを、統計的雰囲気をもった数値群がしめします。長期計画を見直す時に、それは起業家個人の非常に重要なノウハウになります。なかには、そのノウハウはコンサルティング事業へステップアップさせる原動力にもなったりします。
具体的に引いた線は、具体的にずれを記入できる。
統計的な側面をもった数値として蓄積できる。
起業家の「セルフよりどころ」の生成行為には、そうした背景があります。不安に打ち勝つには、人から励ましてもらったり、目を向けないで気楽にするというこういもありますが、こうして、自分自身が作り出したものに、応援してもらう、という行為があります。自分が物差しを作り、違っているたびに物差しを修正していくことで、最終的には未踏領域をわたっていくための、有効な物差しができます。次にこのエリアをゆくときにはかなり高い精度でゆけるはずです。
よりどころは、可視化されている情報や、タンジブルなもの(実体のある物体)であるとよいようです。未踏領域を進む時には、グラフィカルな地図をつくる、迷った時にはそれをよろどころにはんだんする。それが間違っていたときには、少しずつ、軌道修正をしながら、よりよい地図へと育つ、そういう道具。
未踏領域へ踏み出す時には、「セルフよりどころ」を生成しよう
追記:
蛇足ながら、未踏領域を、少ないヒントで作成した地図をもって、進んでいくボードゲーム、なんてつくれたら、面白いかなぁと思います。起業家やプロデューサーやデザイナーという「創る人」にとって大切な知性を、ゲームのシンプルモデルを通じて、体験してもらう、という道具になりそうです。