「経営革新のアイデアの源泉」(中小企業白書2005)
夕方から夜にあちこちいって、用事を足して回ってきました。
PM11時を過ぎたいまでも、戻ってきて全力で仕事中です。
積み上がった仕事(やりたい事)がたくさんあって、
ちょっと、明日の長距離移動をするための準備とかが、
どうなることやら、と思っています。
講演やワークショップの仕事はプロとして
体力万全で臨むときめていますので、
その時ばかりは前夜は睡眠をしっかりとります。
今日、寝るまであと1時間ほどですが、
さて、どうしたものか…。
そんなことをきれいさっぱり忘れて、しばし逃避するために
ブログを書くことで、しんとするように、仕向けてみました。
さて、タイトルの件です。
中小企業白書に面白いデータがあります。
「経営革新のアイデアの源泉」(中小企業白書2005)
●企業の経営革新のアイデアはどこから来るのか。
●そして、どこから来たアイデアが成功しやすいのか。
これについて、『「顧客・取引先の要望、提案」、「顧客の行動から察知」といった顧客重視型の経営革新が46.4%、「一般的な市場の動向」、「競合他社の動き」といった市場動向型が36.2%、「代表者の個人的なアイデア」、「研究機関、大学などの研究成果」といったアイデア型の経営革新が13.8%となっており、顧客志向の企業の割合が高い。』としています。
顧客重視型(46.4)
顧客・取引先の要望、提案(33.5)
顧客の行動から察知(12.9)
市場動向型(36.2)
一般的な市場の動向(26.0)
競合他社の動き(10.2)
アイデア型(13.8)
代表者の個人的なアイデア(11.5)
研究機関、大学などの研究成果(2.3)
経営革新企業にとって、
数からいえば、アイデアの源泉は「顧客志向の場合」
に成功率が高いという解釈できるかもしれません。
興味深い点を、さらに掘り下げています。
●アイデアの源泉毎に、成果はどうなのか?
そのデータは「(経営革新という)目標達成率」と
「企業成長率の標準偏差」という2つの物差しでもって、
計っています。
結果はざっくり言って
目標達成率「顧客重視」>「市場重視」>「アイデア重視」
企業成長率の標準偏差「顧客重視」<「市場重視」<「アイデア重視」
データをざっくりと解釈すると、
ちょうどトレードオフ、のようになっているとようです。
ただし、成長率の標準偏差、であることに
留意が必要です。ばらつきが多い、ということであり
成長率そのものが高い、とは言っていません。
ばらつきが多い=高い企業がある(低いのもある)、
というロジックでそう展開しています。
歯切れが悪いですが、成長率そのものは
顕著な結果がなかったのかもしれません。
(元のデータを調べて意見を述べるのが本当の研究的
態度だとおもうのですが、私はさぼって、
元データを見ていません。)
本文を引用しますとこう表現されています。『これらの違いにより、経営革新のパフォーマンスは異なるのであろうか。それぞれの経営革新のアイデアの源泉毎に、目的達成率(経営革新の目的を達成した企業の割合)を比較すると、「顧客・取引先の要望、提案」、「顧客の行動から察知」といった顧客重視型の経営革新は、他の経営革新よりも目的達成率が高い(第2-1-38図棒グラフ)。一方で経営革新の成果として企業成長率を取り、成長率のばらつきをみるために標準偏差31で比較すると「代表者の個人的なアイデア」の標準偏差が高い(第2-1-38図折れ線グラフ)。
つまり、顧客重視型の経営革新は、元々顧客に受け入れられることを目的としていることから、比較的経営革新の効果は現れやすく、目的を達成する可能性は高いが、その成果は顧客の要求水準に留まる範囲にしか達し得ない。一方で、経営者の独創的なアイデアで、顧客の要求水準を超えた経営革新を行う企業は、顧客重視型に比べて目的を達成する可能性は低い代わりに、成功したときの成果は非常に大きい。』
グラフから数字で書くとこうなっています。
<目標達成した企業の割合>
(数字は全体の平均値をゼロとして表現されている)
顧客重視型
顧客・取引先の要望、提案(4.4)
顧客の行動から察知(7.4)
市場動向型
競合他社の動き(▲0.5)
一般的な市場の動向(▲3.7)
アイデア重視型
代表者の個人的なアイデア(▲6.6)
研究機関、大学などの研究成果(▲23.4)
<企業成長率の標準偏差>
顧客重視型
顧客・取引先の要望、提案(0.833)
顧客の行動から察知(0.708)
市場動向型
競合他社の動き(1.067)
一般的な市場の動向(0.832)
アイデア重視型
代表者の個人的なアイデア(1.388)
研究機関、大学などの研究成果(0.341)
なお、成長率の標準偏差が大きいのは
「アイデア重視型」と述べられていますが
「研究機関、大学」は、標準偏差は小さくなっています。
全項目中、最小です。つまりばらつきが少ない、という
ことです。
(これは、たぶん母集団の多さの違いが影響しているの
かもしれません。産学連携に取り組んだ中小企業群と
社長のアイデアで商品つくった中小企業群では、
母数がかなり後者が多いと思われます。
母数が小さいと、極端の場合、n=1だと、
ばらつきなし、になります。
なので、大学からのは、成長率が高い企業がないのか、
ということについては、(このデータだけでは)
判断付きかねるかと思いました。)
データには幾つもの「読み取るための仮説」が打ち込まれて
いる、ということを謙虚に受け止めつつも
表現されたことをまとめてみるとこういえるかも
しれません。
経営革新は
「顧客志向で始めれば、成功率は高い。
しかし、高い成果は期待がしにくい。
(似たことに取り組んだライバルと成果のばらつきも少ない)」
「代表者のアイデア重視で始めれば、成功率は低い。
しかし、高い成果の出る場合もある。
(しかし、低い成果に終わってしまう場合もある)」
と。
なかなか、悩ましいですが、
顧客志向の取り組みに、
代表者の優れたアイデアを十分に吟味して融合できると
成功確率が高く、高い成果も可能性がでてくる、
のかもしれませんね。
アイデア創出の支援者としては
「アイデアが大事」というデータには
敏感なのですが、公平にみても、
おもしろいデータでした。