シーズニーズ変換
【破損して消えていた過去のブログ記事がサルベージできたので、再啓します。MOT大学院時代のモノと思われます】
産学連携コーディネータの研修を受けてきました。シーズとニーズを俯瞰的に分析するツール「SN(シーズニーズ)変換表」の作成をグループワークで体験・習得する、というものです。そのツールの本質は、次の2つに集約できそうです。(1)俯瞰的分析情報をまとめることで戦略的技術開発・事業開発に有効な「地図」を作ること、(2)産と学が一緒にシートを創ることを通じて、効果的なコミュニケーションができること。
具体的な内容は守秘義務があり掲載できませんが、ツールの活用そのものは広く展開してよいということなので、今後、産学連携支援、ベンチャー支援において、活用してゆきたいとおもいます。(ご希望があれば、ツールの説明に出向きますので、仙台のほかのコーディネータの方でも、企業の方でも、ご興味あればお気軽にご連絡ください。)
詳しい受講方向は、「追記」部分に記録しますが、ざっと感想や解釈を以下に書きます。
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そのツールは、シーズ(技術)をニーズ(市場)へとつなぐための体系的なマトリックスの構造をしている。
特徴的なのは、その2つの間に、共通言語となるフィールドを仲介していること。「機能」とよんでいる。
そのフィールドのあることがどれほど本質なのか、みただけでは理解できなかったが、グループワークで実際にやってみて、よく理解できた。異なるセクターの人の間で言葉が通じないことはよくある。お互いに相手よりの視点を持っていくと、次第に共通エリアが、共通の言葉が、できてくる。円が交わる。そこが、仲介する部分であるようだ。
「機能」という部分は、「シーズ」と「ニーズ」の仲介する部分、円のインターセクション(共通部分)である、ようだ。
(湧き上がる、類推)
(日本人同士だけれど)お互いの言葉が通じないようなケースとしては何があげられるだろうか。そしてその人たちがお互いよりの視点を持ち始めたときに、共通フィールド(シーズニーズでは「機能」にあたるもの)はなにになるだろうか。
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(詳細版)出張レポート(目利き研修:シーズニーズ変換表)■
出張概要:
JSTの提供する人材育成研修に参加。(研修コンテンツはJARECのもの)
「SN(シーズニーズ)変換」というコーディネートにおけるシーズとニーズの俯瞰的分析ツールの活用方法とそのツールの持つ意味合い・効果を、グループワークを通じて学習・習得した。
シーズニーズ変換表は3つの特長を持つことがわかった。
1)このツール(SN変換表)を用いてディスカッションをすることにより、「技術(シーズ)」を「特徴的な機能」に展開し、それら「特徴的な機能」をもとに「市場・製品(ニーズ)」へ展開する。これにより、技術の用途探索を広い視野で効率的に行うことができる。
2)「ニーズ」から、→「機能」→「技術」、へと展開することも可能。ニーズをかなえために必要な技術が複数必要である場合は多く、それらを体系的に理解・検討することができる。
3)シーズ系の活動をする人(研究者・技術者)の言葉と、ニーズ系の活動をする人(ビジネスマン)の言葉は、大きく異なり、言葉とその背景に持つ考え方の相互理解が、産学連携には重要である。このときに本ツールを用いることで、異なるセクターの人間がディスカッションする際に、効果的なコミュニケーションの助けになる。(具体的には、次のとおりである。シーズ側の人間は、「特徴的な機能」を検討することで、「自分の技術がいかなる機能・効能を提供しえるか」という“幾分ニーズより”の思考を行うことになる。ニーズ側の人間は、「自分のニーズをかなえるためには、いかなる機能が提供される必要があるのか」という“幾分シーズより”の思考を行うことになる。このことから考えるに、「機能」フィールドは、産と学という異なるセクターの共通言語をあぶりだすものとして作用していると考えられる。)
このツールの活用は、グループで作成することで、そのほか3つの効果もあった。
1)技術(シーズ)を分析的にみていくことで、発想作業も生まれてくる。その応答を通じて、わかることがある。
2)検討と発想の作業において、実現可能性の高いものがあらかたでつくすと、自由な(未来的な)アイデアが出始める。
3)具体的に、実用化には何の技術が足りないのか、といった視点が自然と明らかになり、戦略的な研究開発マネージメントを行うことができる。
考察:経験の少ないコーディネータが産学連携プロジェクトを積極的に作り出す際に、ある種のツールの活用は有効である。関係者でシートを作る行為が「効率的な相互理解深化」を提供する、という意味において。