発想トリガーの3つの機能
発想トリガー(SCAMPERとか智慧カードのリストとか)の発想トリガーは実践的でかつ、事前の技法学習もほとんどいりません。
私はそうした発想トリガーをアイデアワークで使うことが多いのですが、これがなぜ十分によく働くのか、3つほど考えてみました。
(1)創造的退行の促進
ある程度、すこし退行(子供のようになる精神的状態)することが、創造的思考活動には必要だと、心理学的には考えられています(出典別途記載)。ばかばかしい選択肢も、トリガーとして明示的に示された場合には、そこに解があるやもしれぬと思うことができます。そこで、何とか意味性を見出して出してみる。そうするとかなりヘンテコなアイデアになる。でも、トリガーが指示した切り口なんだし、なにかいいことがあるのかも、と背中を押してもらって出すことができます。
(2)アイデアの出し尽し、に、早く到達できる
出しつくしたそのあとに、後10個苦しいけれど出してみる。そうすると、いいアイデアも必ず2,3個はでます。しかし、その出しつくしというのもなかなか大変です。この時、発想トリガーで、網羅的に発想の切り口をさーっとスイープして行って可能性のある案をあらかた出しつくす、ということができます。出しつくしまでの数は、だいたい経験的に20,30とか40、50ぐらいです。発想トリガーは40~50ぐらいの数のセットになっていますので、だいたい、そのオーダーのアイデアを出すことを促してくれます。しかも早く。
(3)意識の集中
人間は「担う役割を減らすほどその実行性は上がる」という特性があります。3個同時に任せるとどれも低くなりがちですが、1つだけなら、かなり高い確率でその役割を遂行できます。あれこれ考える、という状態の頭を「目の前の提示(トリガーの内容)に、短時間、集中して考えてみる」というのは、頭の能力を十分に使いきる方法であると思われます。
こうして、3つの機能が(たぶん、互いに独立ではなく相補的な関係もあると思いますが)発想トリガーの中に働く機能ではないかと思います。(アイデア創出支援をしている実務の中から、経験的に感じたこと、というべきでしょうか)。
認知心理学などの実験ができる環境があれば、ぜひ、いつかこのへんの推測がどの程度確からしいのか、科学的にも調べてみたいです。
(なお、発想トリガーだけが創造技法ではありません。私は、経緯上、よく発想トリガーの手法推進者的に、メディアに載ることがありますが、これを有力な技法の1つだと思うけれども決してそればかりが技法ではないと思っております。発想トリガーではうまく発想できないテーマがあることも事実ですし)