はちのすノート(作者から、補足します)
THE21(2010年03号)で紹介した「はちのすノート」。
多くの方にご覧いただきまして、感謝申し上げます。
作者である私のブログへ検索して来てくださる方が多いので、
ここに、記事の中に載せきれなかったことなどを補足します。
1)はちのすノートは「発想専用ノート」です。
アイデアは分岐する。という特長があります。それを自然に受け止めるには、直線的なノート記法は無駄がおおすぎます。
板書を書き写すような時と、アイデアを頭の中から紡ぎ出す時では、頭の中の処理は全く別物です。ノートを書くという行動は同じですが、頭の中で起こることが違います。
はちのすノートは、6角形を基本配置としたセル型の罫線が、分岐する思考を素直に受け止めやすいように出来ています。
2)はちのすノートは「作るための余白」をつくります。
はちのすノートは、数文字程度の文字がかけるセルが、空間を埋め尽くしています。アイデアを書き出すときに、あちこちに空白のセルができます。それでいいんです。あとで、開いているマス目はうめたくなる、という頭の特性が、後日、ノートとブレインストーミングを促します。異なる時間の自分にパスを出す感じに似ています。再び見るとそれが体感出来ると思います。
3)はちのすノートは「思考の助走」をさせます。
アイデアを、3~8文字ぐらいのマス目にちぎって書くことになります。マス目は、そういう思想に基づいた改良をへてデザインされています。(まだ改良の余地はあるはずですが。)長い文章のようなアイデアを、セルのなかにちぎってかくことで、「要素・数珠つなぎ」になります。アイデアの分岐は、要素の一部がちがったバージョンを思いつくことと極めて似ています。なので、要素の人つを変えたアイデアを書くときには、セルを一つ、書くだけでOKです。分岐をしたことを線を引いて分岐したことを示せば、それで別バージョンのアイデアが表現出来ます。
4)最強の二大発想ノート記法のエッセンスを、活用します。
「マンダラート」と「マインドマップ」。これは好対照な発想ノート記法です。前者は加藤昌治さんの「考具」が学びやすく、後者は専門家の大量の情報発信があります。なぜそれがいいのか、アイデア発想の観点からは、いくつも刺激的な示唆がみいだされます。
「脳はゲシュタルト(全体性)を求める。」
「開いているマス目は、意識(注意)を吸引する。」
「強制発想」
「アイデアは分岐する。」
「文脈と単語」
「イマジネーションの中核的機能は、連想である」
「書いてから、考える。(考えてから書く、のではなく)」
書き出したらきりがないぐらいです。そしては、発想技法のマニアックな概念でいくつも論述したくなります。しかしそれはひとまずおいておいて、先に進みます。
マンダラート、マインドマップ。どちらも熟達した人に学べば、自分の中からもやもやの段階のアイデアを、ペンと紙にするすると写像していくことができます。道具がいらない、という優れた長所と、ちょっと学ぶとすぐ使えて、かなり高度なレベルまで進める、という優れた技法の特徴を兼ね備えています。初心者にとって最強のノート記法だと考えています。
しかし、独学でちょっと使うときには幾つかのつまづきを感じることがあります。はちのすノートは、「道具がいらない」という特長を捨て、自然な発想力を引き出すことにフォーカスを当てたものです。ノートをプリントアウトしてつかう、ということは、白紙とペンだけあればできる「マンダラート」「マインドマップ」にくらべて、「道具レスですぐ使える」点で大きく劣ります。しかし、アイデア発想の初心者が自分自身の中に本来ある高い創造性・発想力を紡ぎ出すことには、役に立つでしょう。
初心者のガイドレール、となることにフォーカスを当てていますので、発想の指向特性に熟達したら卒業する(使わなくなる)、そういう道具であって欲しいとも思います。作者である私としては、愛用してもらえれば嬉しいですが、使い手の享受する価値と言う面で見ると、「いつまでも使わなければならない道具」より「技術が身につき、道具がいらなくなる」ほうが、知的ワーカーにはずっと良いはずです。じゃなければ、道具だらけの知的ワーカーになってしまいます。それは、多くの人にとって本意じゃない、はずです。
以上です。
取材の中では、もう少しお話したこともあったのですが、お伝えしやすい部分としては、ざっとこんな感じです。
誰かの無にかに役立つアイデア創出の道具。それを作り続けていきたいと思います。(ちなみに、ブレスター=ブレインストーミング・カードゲーム、の開発プロジェクトのリーダもしています。この春には、ゲーム風にアイデア評価作業をトレーニングするカードゲームもリリースします。ご期待下さい)