物語を発想するワークショップを行いました
昨日、アイデアワークショップ vol.10を行いました。
参加者は9名、そして、ゲスト講師の漫画家「赤井澤千晶さん(Fio drawings)」と、ファシリテータ(私)で行いました。
前半では、「ストーリー要素カード」を使いました。(これの詳しい内容は、ひとまず省きます)
今回は、作りだされた「ストーリー」を中心に紹介してみます。
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story1 「目覚めの時」
主人公は、助手の男。
非常に厳しい教授の元で、抑圧されている。(「助手」という役職は、正しくは現在の職位制度でいえば「助教」ですが、今回は助手と書きます)
拘束された環境下で才能が発揮できず、うだつが上がらない日々を過ごしていた。
ある時、学会でその助手の発表が注目を浴びる。徐々にその助手への注目が高まり、本来の才能が認められていく。
教授のいる限りは出世ができないはずだったが、認められた彼には教授としてのポストが新しく設けられ、社会的にも有名になり、同時に、奢ってしまう。
そんな彼のことを心配した人々が、忠告をくれる。しかし彼は耳を貸さない。注目を浴び続けるために、ねつ造した実験データなどもだしていく。
そこ、一人の研究者が来る。
かつて研究室で一緒だった後輩。後輩は言う。厳しい教授の元での日々は、苦しかったけれど、みな夜を徹して、研究者としての志をまっすぐに進んでいた。その中で、自分たちに正義を教えてくれたのはあなただ、と。
人々の声に耳を貸さなくなっていた男だったが、過去の自分が放った言葉には耳をふさげなかった。彼ははっと、自分を取り戻す。
そして、ある決意をする。
場面が変わって、記者会見の場。
男は捏造したことをすべて、会見で話し、世間中からの非難を浴びる。取り巻きであった人々や研究室の座も追われる。
そして、最後のシーン。
彼は、流れ流れて、名も知れぬ小さな研究室の中にいる。学会からも、世間からも、まったく注目も浴びない、予算もろくにつかない研究だが、その実験をする彼の瞳は、かつてのどの彼よりも、強く、輝いている。
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こんな話を作りました。
ストーリー要素カードから引いたカードをお話の構造に当てはめて、それに沿ったお話を想起して語ります。その横で、赤井澤さんが、即興でそれを漫画にしてくれています。漫画家さんに、ホワイトボードマーカーで即興で絵をかいてもらう、というのは、あまりに贅沢すぎる構成ですが、彼女が会場となったTRUNK(クリエータのシェアオフィス)の入居者の方だったので、ご好意で行っていただきました。
これは、サンプルとして、私と赤井澤さんでカードを引き、皆さんの前で即興で作ったお話でした。
次は、参加者の方に、3名ずつ、3組に分かれてもらい、各グループで発想作業を実践しました。それぞれのグループで「ストーリー要素カード」を引いて、物語の構造にあてはて、物語の骨子を作ります。
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行ったワークの方法
1)ストーリー要素カードを引いて、物語の基本の構造形に並べる。2)3人で、それを物語として読み解く。(5分間)3)それぞれが、物語を文章に書き起こす。(5分間+α)それぞれが書き起こす文章は微妙にディテールが違いますが、それで(それが)良いとして、個別の作業を。4)それぞれが、物語を説明する(一人3分)そして、今回は簡単に発表をしてもらう都合上、グループを代表して、一人の作品を選んで簡単に紹介してもらいました。
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各グループの作った物語を掲載します。なお、タイトルはほとんどの物語にはつけられていませんでした。整理の段階で、名前がないと不便なので、後付けしたものです。
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story2 いたずら娘
いたずらな女の子がいた。
彼女は成長し幸せな結婚をし二児の母になったが、夫が若くして亡くなる。
いたずらな彼女の性格には合わないが、レジ打ちなど苦手な仕事をする。しかしうまくはいかない。
子供がいるから、だ。
そう思った彼女は、子供を手放す。
仕事に精を出すも、一人で暮らすようになってごはんがのどを通らない。
彼女は、子供は、引き取りにいく。
シーンが変わって、すこし大きくなった子供たち。
帰ってくる母親に、いたずらをする。かつて彼女がした同じいたずら。それも楽しい。
そんな日々を子供は、ブログにつづっている。
石板を発見する学者の男。
そこには、地球の滅びについての情報が記されていた。
地球は古より、栄え滅び、また栄え滅ぶ、ということを繰り返してきたことが分かった。
それの発表に対して、現在の権力者は、猛烈に反発を行う。けしからん説だと。一方で滅びの時期を生き延びるすべは見つからないまま。
そこに異星人がくる。友愛が大事であることを説く異星人。滅びの時期を乗り越えるテクノロジーをくれ続けてきたのも彼等である。
そのテクノロジーを信じて対策をした善良な人々。一方で既存の体制を離したくなく、異星人のテクノロジーに否定的な人々。
滅びの時期を乗り切る善良な人々。あくどい人々は居なくなった世界でまた、世界が始まる。
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story4 姫さまと飴と鞭(むち)
※このストーリに限っては、発案者の方が、ブログにて、レポートしてくださっています。私の以下の解説よりも、読み応えのあるお話として表現されていますのでぜひ、そちらも合わせてご覧ください。 → http://ystker.tumblr.com/post/2893372710/ishii-rikie-vol-10
ある国の王女。父である王様はとても優しい人で、慕っている。
大きくなった王女は国を見る。困っている人がたくさんいる。人買いに買われていく人もいる。
王様は、家族には優しいいい人であったが、王としてはひどい人であった事を知る。
体制を転覆したい人々の側につく王女。王女はしかし、王様と同じく、優しい反面、冷徹な面も本質ではもっていた。ダークな手も使って、王女はさまざまな情報を得ていく。
その結果、王様を殺しても、国の現状は変えられない。と分析する。
転覆を準備する勢力をもって、王女は、父を殺す代わりに、王の位置を降りさせる。
王の座を離れ、寂れた古城で隠居し、周りには神父しかいないような暮らし。
王女は女王に即位。
本来持っていた優しい面と、厳しく冷徹な面。その二つ、つまり、飴と鞭をつかい、国を良く発展させていくのであった。
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この後は、9カード、という形式でも、ストーリーを発想しました。
これは、物語の構造形を活用するスタイルではなく、2人の魅力的な主人公がおりなす人間模様を描くスタイルです。
Story6 スーツと白衣
ビジネス界で成功している男。科学の世界で成功している男。優秀な2人が出会う。ビジネスの男は、研究資金を出し、中は深まる。次第にビジネスの男は、科学の男に、金になる研究をするように迫る。科学の男は、金儲け主義の研究方針の、ビジネスの男が嫌になる。最終的に、科学の男は、ビジネスの男を裏切ることにした。ライバル企業に研究シーズを提供する。ビジネスの男は、新聞でライバル企業が開発成果を上げたことを知り、科学の男の心がわりを、知る。
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この後、最後の10分で、「キャラクターフィールド」という手法も行いました。1点から世界を拡げる、というワークです。
紙面が長くなりすぎましたので、TRUNK アイデアワークショップVol.10の報告としてはこの辺にしたいと思います。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
また、ご協力いただいた赤井澤千晶さん、ありがとうございました。
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漫画家・赤井澤千晶さん
TRUNK(仙台市若林区卸町のクリエータのシェアオフィス)の40番ルームに入居されています。
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なお、赤井澤さんの画は、今回のように即興でさっと概念を絵にすることにもありますが、もちろん、制作されている漫画のタッチは精緻なものです。(以前の私のブログで、紹介した絵は赤井澤さんが書いてくれたものです。 http://ishiirikie.jpn.org/article/40759859.html )