民話を調べよ。新商品を出し続けよ。
先日、多田克彦さんの講演で、アイデア発想のヒントをたくさんお伺いしました。
多田さんのプレゼントして下さったチーズケーキ、とてもかわいい小さなものなのですが、これは、座敷童の足跡の大きさなんだということをうかがって、遠野の農場ならではのストーリーがあることにとても感心して伺っていましたが、それを考慮されていろんなアイデア出しをされているそうです。
社長である多田さん自らが、遠野の民話資料をたくさん読んで、例えば遠野の座敷童から商品アイデアを考えるそうです。いくつかおたずねしたのですが、「足跡だけでなく、おかっぱ頭から、のりをおかっぱ頭の形に切ったものとか、そういうアイデアですか?」と伺うと、「だいたいそんな感じ」とお答えいただきました。そして、更にすごいなぁと思ったのが、多田さんの会社は製造の方は皆パティシエールの資格を持っておられてるそうで、多田さんが民話から20ぐらいのアイデアを出すとそれらを製造サイドが試作品として作ってみるそうです。深く感心したのは、多田さん自身がお菓子のことをとてもよく勉強されていて、出されるアイデアがお菓子の製造可能性をかなり加味したものになっているであろうことです。
これを聞いて、しばらく考えていました。
例えば、仙台でいえば、伊達政宗がいますが、400年の都市構想をもっていた知力にも長けた武将の政宗。彼が当時使っていた筆記用具を民族歴史館のようなところで調べたり、当時の作戦会議で使われていた道具を再現して、面白い会議道具や、伊達政宗の書き方を構造づけたノートを作ってみても面白いだろうなぁと思いました。伊達政宗ノートなので、略して、「伊達のうと」とか。
ここもいつか行ってみたいところです
また、仙台四朗の伝説も民話としては面白いですよね。私も湯呑は、仙台四朗の絵が入ったものを使っていますが、もっといろんなことを学んでみるべきかと思いました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%99%E5%8F%B0%E5%9B%9B%E9%83%8E
そういう目で、地域の歴史を調べてみる商品アイデア発見ツアーも、面白そうです。(次のファイブブリッジのワークショップでやりたいなぁとすら)
(ちなみに多田さんのお言葉、「入るものがないと、アイデアは出ないよ」というお言葉も、発想の特性から言って実に然り、と思いました。優れたインプットをアイデアワークの初期段階に獲得することはとても重要です。もっと調べる部分について、ワークを、企画してみたいなぁと思いました)
また、多田さんがおっしゃったのは、「売り上げを落とさない方法があるんだ」とのこと。
”えっ!そんな方法が?!”と思いましたが、聞いてなるほど、先のこともそうですがとても王道な努力です。
「新商品を出し続けること」だと多田さんはおっしゃいました。どんないい製品もいずれ落ちてくる、常に新しい製品を出し続けていくことだと。
”すると、今月出しても、もう来月出すものが見えている、ということですね?”とお聞きすると、「もっと、もっとだよ」とのこと。
数か月先まで、毎月毎月、新製品が出ていく体制で、かつ、作っていくと思いもよらぬ副産物ができたりする、それもあって、いろんな開発ネタがあるそうです。
これを伺い、思い出したことがあります。
確か2005年の中小企業白書だったかと思いますが、企業の中で新製品開発に意欲的な群と、そうでない群の利益率を比較すると、前者の方が利益率が高いという調査結果がありました。このデータは相関関係を必ずしも保証はしていませんが、ただ可能性として、新製品開発に意欲的な企業の方が、収益率は高い、という可能性を示唆しています。当時は何度もそれを聞いて知っていたはずが、多田さんの言葉で今一度、強く意識に入ったのでした。
私の所の製品では、既存品がある程度売れるまでは次を作ることがはばかられるなぁと、私の中で勝手にブレーキを踏んでいた節があります。周りはそんなことを一言も要求していないのに。(むしろパートナー企業さんは、石井さんはどんどん新しいものを作るのがいい、といってくださっていたのですが)。
その意味では、やはり次々作っていく、怒涛の新製品リリースをしていくことも大事なんだなぁと思いました。ブレスターが出た後の一年間はかなり早いインターバルで新しいものを出していたことも、思い出されます。
仙台にはまだまだ、未活用な資源や、試してみる価値のあるアイデアがたくさん眠っているなぁと、今回の話を聞いて思ったのでした。
アイデア発想法の観点でいろんな方のお話を伺いますが、総論やプロセス研究のこととは違って、実践の中で創造的思考をフルに使われている方のことばも、それとは違った方向性の、とても貴重な示唆に富むと、再認識しました。創造する人々を、ひところ非常にたくさん取材していましたが、そこには、生き生きとした発想の営みや、示唆があります。
多田さん、貴重なお話を、ありがとうございました。