ツールボックスに運用マニュアルを
経営学などを勉強しているときに感じたのですが、とても強力なツールを作り上げて、でも、マニュアルが不十分なことは良くあります。たとえば、経営分析のツール。SWOT分析、バリューチェーン、PPM、5フォース、などなど。MBAの講義ではこれらを詳しく習います。一時間習うたびにMBAの生徒の頭には、強力なツールがひとつづつ獲得されていきます。新しい道具を手に入れたら使いたくなって、講義で示された課題を自分でやってみます。ほうほう、なるほど、と納得します。だんだんと道具箱には強力なツールがたくさん入っていきます。次第に、「あれ、このツールって以前手に入れたツールと同じ作業をするものかな?」というものが出てきます。ツールの数が少ないときには「切るには鋸。打つには金槌。長さを測るにはスケール。」とすぐにわかりますが、ツールも増えて、作る対象物も複雑なものになってくると次第に、どれをどういう作業にどういう形で使うと効果的なのかを迷うようになってきます。各道具にはマニュアルはあっても、ツールセット全体として、どれをどういう局面で選んでどう使うか、は10点ツールセットにも説明されていません。
それを使う職工さんはどうするか。というと「使い慣れたツールで可能な仕事は全部それで済ませちゃう」ということが多々おきてきます。仕上がりがきれいではない、すばやく加工ができない、としても。使ったことのないツールを持ち出して並べて、どれがいいかな?と吟味する職工さんは少ないようです。(そして仕事の仕上がりを下げてしまうのですが。)
ツールボックスには、ツール全体の運用マニュアルがあったら、職工さんの作業も、MBAの学生も、もっと仕上がりレベルの高い仕事ができる。かも知れません。
私がいつか初心者向けの道具箱をプロデュースすることがあったら、作りたいデザインがあります。道具箱の中の道具が、作業の順に並んで固定されていて、使う道具を外すとその下に使い方とどこまでの作業をするといいのかを示した絵が現れる、そういう道具箱を創りたいと思います。
あるいは、大学生が初めて一人暮らしをして料理をするときに、まな板と包丁と魚(模型)と手鍋がセットになった初心者向けクッキングセットを創りたいと思います。まな板をぬらして、魚を置く。ということが先ずわかるように。そして、包丁の握り、指の当て方、といったことがわかるように。そして、魚の模型をステップごとに外して、その形になるように魚をおろします。最後になべの何部目までしょうゆを入れて、みりんをいれて、お湯を入れていけば、煮魚の味が出せるのか、側面にメモリがついているようなものにします。
のこぎりを売る、包丁を売る、のではなくて、きれいに本棚を作れることを提供する、なんとか食える程度の煮魚をつくれることを提供する。そういう視点で考えると、楽しいツールセットが作れそうな気がします。