終りの魔力
終りになると途端に速度が上がったり、締切の時刻に近づくほど脳がどんどん仕事をしてくれる。そんなところがある種の人にはあります。私もとてもそういうたちです。
終りというのは、人間の能力を強力にはじき出すような不思議な力があります。
ずっといるのが大変だと思っていた環境でも、明日でそこを引き払う、となると妙にそこから見える景色が愛おしくなったり、ずっと過ごしにくいと思ったとそこで、深い集中ができるようになったり、出るときに、振り返ってそこを写真の一枚も撮ってしまいたくなったり、人間にはそういうところがあります。愛着、といえばそうなんでしょうけれど、終わりがこなければその愛着は顕在化されないもので。
「終り」の魔力。
また、使い切るときにとても充実感を感じるという、似て非なる側面もあります。なかなか減らないインクのカートリッジがようやく終わったり、切り離して使うメモ帳の最後の一枚を使った途に残るもぎった部分のブロックが妙に捨てがたかったり。
もしかしたら認知心理学的に説明がなされているのかもしれませんが、不勉強ななので、傲慢にも勝手にこれにこれを「終りの魔力」と呼んでいます。
ある種のもの(それは、消耗品の設計だったり、物語の創作だったり、イベントや体験型のサービスだったり)には、「終りの魔力を活用すること」がアイデアのたねになったりするなぁと、時々思います。