コンサルタント。ノウハウと人脈による付加価値の提供。
ベンチャー経営のノウハウの詰まった『ベンチャー創造の理論と実践』(ジェフリー・A・ティモンズ)の「外部の人的資源」の章には、弁護士・会計士や取締役会に並んでコンサルタントに関する言及があります。私の仕事は新事業コンサルタントに近い役割を持ちますので、このくだりは大変興味深く読みました。以下一部抜粋加工して、紹介したいともいます。経営チームがコンサルタントを評価するか、どういう便益を享受するものか、ということが述べられています。(引用:同書、P330)
「コンサルタントは経営チームが解決することのできない特定の問題やギャップを解決することを目的に利用される。」「求められるアドバイスは、きわめて専門的、特殊な問題、あるいは一般的な経営指導など多岐にわたる。」「(ドイツの調査、315社中96社がコンサルタントを使っていた)コンサルタントが使われる主な理由は次のとおりであった。」
(1)専門的経験の不足を補う
(2)より広範囲にわたる市場をターゲットにする(消費者製品の市場調査をおこなう。)
(3)スタートアップ当初の大規模な投資が必要なプロジェクトを遂行する。
「これらには、事業拠点の選定、リース契約の評価、会計システムの構築、ビジネス・パートナーの確保、スタートアップ資金の確保、マーケティング・プランの策定などが挙げられよう」
(さらに後半ではコンサルタントとのコミュニケーションの深化が述べられます。)
「(・・・前略・・・)問題を解決するため、報告書は次のことを指摘している。
・コンサルタントとの協力関係の構築と高い密度の相互の意思伝達が必要である。
・創業者が理解しやすい用語で説明するか、報告書を作成する。
・コンサルタントが起業家の説明を適切に理解しているかを確認し、もしそうでない場合、特に起業家の前提などが間違っている場合は、その旨を起業家に伝えることを強調する。
(さらに、選択基準まで述べられています。さすがは、ティモンズ。)
「選択基準:ノウハウと人脈により付加価値を提供するか」
「コンサルティングほど、サービスの質、コストの面で多種多様である分野はない。」「相性が重要である。」「コンサルタントの選択は厄介でリスクを冒すことも多いが、選択の目安はある。」「コンサルタントは一般的な経営指導だけでなく、専門性を持ち、自らがもっとも得意とする分野をセールス・ポイントにする場合が多い。」「コンサルタントに要求される特性は次のとおりである。」
・形式にこだわらない柔軟な姿勢
・管理職と部下が持つ姿勢や感情を理解する能力
・適度な積極性と結果をもたらす能力
・サービスの質に適合した報酬
・継続的な関係を維持する姿勢
「コンサルタントの選定にあたっては、三社以上のコンサルティング会社をインタビューし、それぞれの経験、アプローチと経歴を確認することが必要である。このプロセスにパスした会社に、より詳細なプロポーザルを提出するように要請する。」
(なるほど、とおもいます。コンサルティングをする側はこういう視点で選ばれるのだ、という勉強になります。アピールするべき方法も見えてきます。最後のまとめがなかなか示唆深く、難しい問題を提起していています。)
「コンサルティング業務の依頼に先立って、コンサルタントの責任、業務の目的、期間、報酬を明記した書面による業務契約書を作成することをすすめる。」「報酬は時間制、定額制、または顧問契約制がある。」「コンサルティング報酬は広範囲にわたるが、他の製品やサービスと違って報酬の額とサービスの質は比例しない。」「重要なことは、報酬額の高低によってコンサルタントの質を評価できないという点である」
最後の部分は非常に考えさせられます。高い報酬を要求するからといって必ずしもいい価値提供をしてもらえる保障がないわけです。逆にリーズナブルなコンサルが必ずしも低質なコンサルであるわけでもないといえます。いろんなコンサルの先生に、もうかりますか?と収益構造をそれとなく聞いても、コンサルタントだけは誰一人それを口にする人はいません。いろんな業種の方と雑談しますが、コンサルタントだけは、みなそこは徹底していますね。コンサルタントの選定基準(上記太字)は、とても示唆に富みます。