京都精華大2012 アイデアの講義 事前アンケートへの回答掲載
A)「わがまま→やさしさ」の順。持ち時間の半分で描ききり、残りの半分は”やさしさ”。
Q)既存作品の表現がなじみ、しみついていて、自分の表現に既作の香りが漂う。なじんでいるせいで自分の表現のカタチがおぼろ。どうしたらいいか。
A)新しいアイデアは既存の要素の組み合わせ。99%仮説。誰から見ても、何にも似ていないものを作り出すことは難しいし、優れたアイデアは”1”新しいより、”半歩”新しい、という傾向。どうしても影響を受ける場合には、守破離。一度徹底的にその型を使い、発展の先に独自を作り離れる。
Q)アイデアが出る時と、出ないときがある。どうすればいいか?
A)”つくる”仕事を長く続ける人には必ずある。調子のいい時は才能のままにどんどん発想したらいい。本日のような「アイデア創出の技術」はそういう時には、かえって足かせになる。コンスタントにアイデアを出し続けないといけない日々の中でどうしても出ないときには、本日の講義から、エッセンスを刈り取って、自分の衣を着せなおして、意識的に試して欲しい。なお、即効系の3つの処方を言うと「発想しても同じことばかりでる、は新しいインプット(体験)を得る」「どうしてもあるテーマのアイデアが出ない、は、現地で発想する」「Twitterで19,23,25,8時頃検索する」
Q)設定を分かりやすく伝え、解決する時に納得させるのが難しい。どうしたらいいか。
A)概念をコンパクトに提示する基本的な作業は「濃くしてはぎ取る」。説明的になるからと迷うものがあれば、講義でやるように、マインドマップなどで出し切る。そのうえで、示すべき要素だけを決めて、示す。繰り返すとセレクトが上手くなる、なにを書けば設定の8割を伝えられるか。(参考:2・8の法則。全体の2割が重要なパフォーマンスの8割を占める)。残すものは、2、だ。
問題解決を劇中でなすならば、初期に得た解決策をPPCOプロセスを通してブラッシュアップせよ。講義中で行う「エピソードをつなぐ分岐MAP」もあり。→S-2
Q)一度出したものと似る。どうしたらいいか。
A)発想の特性、アイデアメーション。最初に出てくるものは驚くほど同じようなものを出す。出し尽くして苦しい。そこからあと10個出すと、独創的なアイデアが取れる。似る悩みは、圧倒的に量が足りない。
Q)悩みすぎて止まらない
A)人は進歩する限り悩む。悩み、失敗、批難、というのは、発展の途上にいるというシグナル。
Q)一つ目のアイデアはほとんど没。
A)人間の発想特性がある。同じインプットをした人が最初に出すものは驚くほど同じようなものを出す。教官や編集者にしてみれば、同じ年代の同じ経験をしている人が、最初に出したネタは何十回とみていて、落ちまでわかる。”(ぱらっとひらく)→片方の〇〇〇の色が違う主人公、あー、(まさか最後までひねりもなくこのキャラでいくのか)→この結末、みたわー、50人ぐらいみたわー”的な。その主人公でネタをアイデアを50考える。原初的なレベルの思いつきでいいので50。そこまで行くと違うくなる。
Q)アイデアが出てもありがち。つまらない。他の人に考えられないアイデアを出すには?
A)アイデアメーションを出し切る。つまらないと思っても、頭の中で却下しない。出さないとまた拾ってしまう。大量に出していくと、創造の門を超える。量を出すのは苦しいことでもない。わずかに変えて、それを「1案」とカウントせよ。腕が4本のキャラを→腕が5本のキャラにする、これで一案。50を超えろ。”人間の発想はカーブの奥”(詳しくは講義にて)。
Q)キャラクターやシチュエーションのアイデアがあっても、それを組み込めるストーリーが作れない。
A)基本的には、拡げて刈り取る。押し込むページ数がければ、キャラクターもすこし調整が必要。しかし、当初の香りを上書きしないような、知的作業をする。詳しくは講義にて。→S-1
Q)自分だけが楽しい話になっていないか。〇〇などは、誰かにとって気を悪くしないか、不謹慎ではないかと思い、描けなくなる。どうしたらいいか。
A)ブレストの4i。そのうちの1つに、「インモラル(不道徳)」というのがある。発想の多様性とくに新しい要素を生み出すものであり、インモラルをNGとせずに、インモラルなアイデアでも広げる。もちろん、「わがまま→やさしさ」のプロセスで、後の検討の中で、フィルターでこされてしまうものも多い。しかし、インモラルなアイデアから着想を得て展開したアイデアもいくつか出る。それらの中には、フィルターを通るものがある。だから、インモラルなアイデアは、明示的に出し切り、それを踏み台にもっと高く飛べ。後でその「踏み台(つまり、インモラルなアイデア)」は削られるが、インモラルアイデアを踏み台にして高く上がったアイデアは使える。
人にやさしくあることは、とても素敵なこと。大事にしてほしい。
Q)オチがなかなか出ない。大体ギャグばかり。どうしたらいいか。
A)オチのパターン集を。武道と思考はよくにている。既存の作品の型を学び、誰かのまとめた切り口ではなく、あなたの認知スタイルにあった切り口で、既存の作品のオチ・カタログを作れ。それをそのまま真似することはできないが、練習としていくつも落ちをあてはめてみる。具体的に想像をしてみると、着想はうまれやすい。そうすることで、この型の落ちはちょっといいな、というものが見つかる。これを発展させて大量にアイデア(思いつきのひとことアイデアでいい)を書き出す。自分の着想にさらに便乗をしていく。目安は、30、あるいは、50。それを超えると苦しくなるが出るものに独創的になものが入ってくる。
Q)さんぽ、はみがき、作品見たりしているときにアイデアが出る。この不安定な出し方を何とかしたい。
A)創造的退行という概念がある。これを意図的に起こしたい。締切、Co-workerの存在も使う。新しい情報に触れた瞬間というのは、新しいアイデアを生成しやすくなる傾向がある。主題に関係ない情報でもいいので、New Informationを浴びれる所にNew Informationに触れにゆく。
Q)主人公が問題を乗り越えられない。
A)一つの方法として、49枚のカードを「壁を乗り越える助け」だと思って引いて、無理やりに適用してみる。何回か繰り返すと、その問題に意味を持つモノが出る。(人間の問題の)発想法のオーソドックスな方法としては、SCAMPER法がある。詳細 http://ishiirikie.jpn.org/article/1749490.html
Q)締切がないと思いつかない
A)締め切りは、想像性の発露装置。うまく使う。自主的締め切りを作る。あとは、締切直前直後のおいしい期間を思い切り使えるように、そこまでに雑事は処理しておく。Co-workerもよい。
Q)ストーリ展開上、理屈がかみ合わなくなる。あり得ない展開に苦労する。
A)物語の諸要素を当初の香りを残しつつ、広げて刈り取り、整合性のある骨を残す。詳しくは講義で。→S-1
Q)エピソードの作り方が下手
A)模倣から筋力をつける。人の織り成すことをエピソードにしてみる。コンサートとか、漫画になっている主題のものでやる。他の作家はどう描いたか。何を省略して何をフォーカスしたか。練習としてトレースし、型を学ぶ。もちろん、それをそのまま使わない。
Q)気になったものをメモしそこからプロットをつくるが、自分がそこまで多くのこと知らない。どうすればいいか。
A)街に出よ。人の中で刺激を得て発想せよ。経験の少ないうちは掛け算の量が少ない。経験は関節より直接。10の間接体験より1の直接体験。プチ取材。居酒屋ワーク。
Q)刺激が欲しい
A)初体験リストを普段から積み上げる。袋に入れておいて、休日のたびに、引いて体験する。
Q)終わりが見えない
A)職業作家になるには、時間というもっとも貴重な資源の一つがある。使える時間を設定しその中でのベストを描く。いつか100%になるまで温めるものがあってもよいがそれとは別に、時間でできるところまでの仕上げもいる。少なくとも、人間の肉体は70万時間しか稼働しない。
Q)ストーリーが説得力に欠ける
A)物語原型論的に話の骨子を透かしなおしてみて、背骨の強制をする ※
Q)物語の終わりをどこでつけるべきか、どうつけるべきか。分からなくなる。どうしたらいいか。
A)物語の基本的な捉え方の一つの見方として、物語原型論。これを用いて話のひとまとまりを、切り取り整える。
Q)テーマを経験したことがない時
A)体験しに行く。体験できなくともその物事が発生している中ですごし、アイデア出しをする。
補足:
人間は、知識の少ない対象に対して、概念の分解能が極端に低くなる。