最大規模のアイデアワークショップ(早稲田大学、280人)
(ずいぶん前の事ですが、ずっと活動報告をできていないものがありました。バックデートで、報告します。これは一週間ぐらいしたら、実施日7月19日の辺りへ、コンテンツを移動させます。(記事単体のパーマネントリンクは変わりません。)
2013年7月19日の午前に、早稲田大学の所沢キャンパスにて、尾澤先生の授業の中で、30分ほどのミニワークショップをしてきました。
当初は、午後に予定しているアイデアワークショップの為の内容紹介を、5分で、という予定でしたが、幸運にも講義内で30分枠をもらえました。
人数は280名。
階段型の大教室に、いろんな学年の生徒さんが隅々までいる、机は固定で動かせない、そんな状態です。この条件で手堅くいくなら「(アイデア発想ワークの)理論を講義する」という方向を取るべきかと思いましたが、創造性関連の授業だったら、失敗可能性含みのトライアルなことをしていくことも、一つのスタイルかなと、ということで、「280人でワークショップをする」という事にしました。
とはいえ、生徒さんたちが動くようなワークショップをあまり望んでいなければ、無理強いはできないので、「机に座って、1人で実施するアイデア発想技法を実施する」パターンと、「280人で巨大なワークショップをする」パターンから選んでもらうことにしました。
結果的は、「巨大なワークショップ」が支持され、それをやりました。
具体的には、「5分交代のペアブレスト」をしました。

学年も違う受講者が、次々相手を変えてアイデア出しをします。
3.その様子
授業とは思えない騒然とした状態ですが、これが普通のスピードストーミングです。
(交代のシーンも動画があると分かりやすいのですが、進行しながらビデオもとるのは無理でした。残念。)
1つの部屋の中で280人が一斉にブレストをすると、こういう音になるんだなぁと、実は私も興味深かったです。
同じ場面の写真も4枚ほど。↓
5分ごとに、外側の人が1つずれ、新しい相手とまたブレストをします。当初3ラウンドの予定でしたが、皆さんの反応が良かったので4ラウンド実施しました。(その代わりに、収束ワークを諦めました。どちらも急いで中途半端にするよりは、と。)
最初のペアは知り合い同士だったりするでしょうけれど、動いていくうちに、学年の違う、知らない学生同士がペアになったりしていきます。
280名で実施しても、ペア交代の部分は殆ど混乱もなく、即座に実施できました。
4.発想のテーマ
アイデア出しのテーマは、学生さんのなじみがあるものということで、ポストイットを取り上げました。具体的には以下の通り。

5.発案されたアイデア(&感想も)
皆さんが、後にツイッターで発言してくださったものを、拾える限り拾って掲載してみます。
当日以降に掲載されたものは、もしかしたら、見落としてしまったかもしれません。ご指摘いただければ随時追加します。
(タイムラインは、下か上に向かって並びます。見にくくて恐縮ですが、画像を、下から上に見てください。)

うーむ、面白い案がいっぱいあります。
石井としては個人的には、音符ポストイット、は、アイデアとして、いいなーと。子どもたちが、いや、大人も喜びそうです。特に、合成歌唱ソフトウエアの入力あたりと組み合わせたりしたら、音階に、文字をおいたら認識して歌ってくれる、とか、そんな感じに面白く展開できそうです。また、収益性がありそうなアイデアもそれとはまた別にありました。
6.スライド(現地更新版)
7.石井の感想
今までで、最大人数のワークショップとなりました。実験的なので失敗したらごめんなさい、といいつつのワークショップでしたが、上手くやりきれたのは、学生の皆さんに助けられたと思います。ありがとうございます。
過去の最大人数は東北福祉大学の授業で200人というケースでした。今回は更に多く、固定机の教室で、学年もバラバラ、しかも階段教室、ということで、およそワークショップ向きではない環境でした。それでも、楽しんで非常にたくさんのアイデアを出してもらえたのは、学生さんたちの知的な対応力の高さと、それを育んできた尾澤先生の授業を通じての指導のおかげだと思います。学生さんに訊くと、尾澤先生の授業は、非常に学生評価の高い授業とのことで、抜群の指導力で展開されてきた下地がある授業なので、うまくやれた(やらせてもらえた)と思います。良い機会を下さり、ありがとうございます。
そういう、通常よりも非常に条件の良い前提がもたらしてくれた部分を割り引いて、この実践を振り返るべきかと思います。そうふまえたうえで、感じたことを率直に。
まず思ったのは「こんなに多くの人がいっぺんに、スムーズにブレストが出来る、スピードストーミングという手法は、良くできているなぁ」ということです。
スピードストーミングを、よくワークショップで使いますが、もともとは、UCバークレーで生まれた新しいタイプのブレストの方法です。日本人用にいろいろとアレンジしてありますが、280人の一斉ブレストを、1人のファシリテータがマイク一本とスライドだけで説明・進行できる、というのは、他のブレインストーミング技法にはない、秀逸さがあります。ステップが単純、かつ、人数の違う場でも同じことができる、ということがもたらす利点を強く実感しました。
次に思ったのは、早稲田大学の雰囲気です。
もしかしたら、所沢キャンパスの特有の雰囲気かもしれませんが、企画的なことが好きで、アイデアを考えたりするのが好きそう、得意そうな感触を感じました。
女性が多いほうが一般に、創造的な話し合いの場を醸成しやすいのです。この学部は女子が多いのも影響しているのかもしれません。
また、通常、学年がばらばらの学生さんたちの集合する授業では、ヒエラルキー的なものが阻害要因となってあまり砕けた感じに話し会えない空気が生まれますが、早稲田では、その辺もあまり抵抗なく、皆対等な感じでアイデアを出していました。
8.やれなかった大量発想の、次
今回、惜しむらくは、アイデアの収束ワークができなかったことです。
今回のように100名を超えるような状況で、アイデア出しをするとその中の上位4%ぐらいは、かなりエクセレントなものがでます。
どんなものが、といえば、先に紹介したアイデア群(ツイッターに書いて下さったもの)もそうですし、聞き耳を立てて皆さんのアイデアを聞いていましたがその中にも面白いアイデアがたくさん出ていました。
「でも、あんな大人数で収束って可能なの?」
という点ですが、可能です。
アイデアを紙に書きだしてもらい、次に、”プレゼン・トーナメント”という方式で収束させることで、15分ぐらいで上位案を抽出することができます。
- 各自、アイデアをカードに書く。
- 周囲の人と適当に3人組になり、30秒ずつ紹介しあう。
- もっとも面白かったアイデアをセーノで指差す。最も多い票をもらった人が3人の代表者。(カードもその人に託す)
- 代表同士が集まり更に3人組を形成。同じようにプレゼンして、代表の代表(レベル2の代表)を決める。(この時点で、9人分のカードを持つ)。
- これを二度繰り返すと、3の4乗=81人分のカードを持った”レベル4の代表”に集約されます。280人なので、大体、3~4人残る計算です。
- この4人に、前でアイデアを1分プレゼンしてもらいます。自分のアイデアと、これまでに聞いた良い案も紹介して良い、として、1分を使ってもらいます。
- こうすると、(進行上のロスタイムを含めて)、15分ぐらいで、280人の中の上位4案+α、を抽出できます。
(愛知淑徳大学のフレッシュマンキャンプ用に、先生方と開発した「良案抽出」の方法なんですが、これはなかなか副次的な良い効果があります。最後のプレゼンにたどり着いた人は、数回のプレゼンをしているので、割とうまくしゃべれます。また、大人数の前でプレゼンをしてもらう貴重な経験もしてもらえます。)
・・・とはいえ、もし実施していたら、きっと予期せぬことがおこり、もっと時間をロスしたり、急遽変えたりしていたでしょう。
例えば想定されるずらし方としては、次のようなものがスタイルも考えられます。
集約効果を高めるため、3人から1人へ絞るより、1テーブルに2名で座る方式だったので、「4人から1人にする」ほうが、システマティックに進められるかもしれません。レベル1の代表は、4人分のカードを。レベル2の代表は、16人分のカードを。レベル3の代表者は64人分のカードを持ちます。この時点で、4~5人になっていますので、この人たちに前でプレゼンしてもらう方が、進行はスムーズそうです。
(5人から1人へ、という方式も考えられます。その場合は、レベル2の代表(25枚のカードを持っている状態の人)が11人ぐらい生まれます。上位4%という意味ではこの全員にプレゼンしてもらう、というのも、アリかもしれません。(ただ、偶数人数で座っていることを考えると、やや、実施しずらいかもしれません。)
9.参考スライド
自分が好きなものを一つ思い浮かべ、6つの観点からその良さを、見出していきます。
そして、お題となっている製品の改良切り口として、それを使います。
そうすると、たくさんのアイデアを出すことができます。
ブレストする相手がいない、という時には、ぜひこうした手法も試してみてください。
※ 玄人向けの知見
机が動かせない&会場面積に対して人数が多い、という条件でやりました。
それでも三つの輪それぞれが、90人以上の巨大な環です。最初のペア形成の所が、この場合は工夫のしどころでした。
結論としては、「大きい輪の場合は、端からペアを形成してもらい、ペアの相手としゃがんでもらうと、ドミノ倒し的に、伝搬できて良い」というものです。
- この人数になると最初のペア形成にただでさえ時間がかかりまる。通路が狭いのでファシリテータが走って、ペアを指示するということが、スムーズにできません。
- そこで、当初は、前の方にいる人をペア形成の端点として、「以降、ペアを組んだら、奥の人を型を叩いて、次のペアを指示してください」としました。
- 理屈としては、3つの輪で、それぞれ、ペア形成の端点をファシリテータが決めればOK、ということでやりました。
- が、しかし、知らない人同士がペアを組みながらその情報を後ろに伝達することはとても時間がかかります。次のペアの肩を叩いて知らせる、というのは、難しく、輪の途中で、どこまでペアができているかは分からない状態になってしまいました。(指示してから90秒ぐらいたって、そのことに気が付きました。)
- そこで、改良しました。
- 今一度、ペアの端点となるペアを決め、しゃがんでもらいました。
- その隣の二人は「前の人がしゃがんだら、たっている二人がペアになる。そして二人で、しゃがむ」ということにしました。
- すると、次のペアもすぐに分かり、すぐにしゃがめます。
- ドミノ倒しのように、パタパタと、階段教室の上の方まで、あっという間に、しゃがんでいきました。(見ていて、面白い光景でした。)
- 次に、調整します。
- 輪の人数が奇数だと、後ろの方で、一人余りが出ます。
- また、しゃがむ流れの中で、前の人が曖昧な感じでなんとなくしゃがんでしまうことで、そこが3人になってしまった、というところも実際はでました。
- そこで、ペアでじゃんけんをしてもらいます。(勝った人が輪の外側とする、という作業で必要になりますので。)
- この作業をすると、はっきり、ペアになっていない人がわかります。
- 「いま、相手がいない人は?」と確認して、1人の人同士を適宜移動してもらって、全員がペアになるようにします。
- (参加者が奇数の場合は、どうしてもひとり残るので、スタッフを投入して偶数化します。)
- なお、1人の人に移動してもらう間に、スピードストーミングをはじめてしまうようにします。皆が注目する中で輪の中で一人移動するような状態にしないようにする配慮をします。
御礼
早稲田大学の皆さん、尾澤先生、及び、ご縁を下さった國藤先生、今回は貴重な機会をありがとうございました。私もファシリテータとしてとても興味深い体験ができました。
(レポート後編として、午後のワークショップについても、また、しばらく後に、掲載いたします。)