アイデアの技法 『未来社会、未来年表』
発想法のひとつとして、9画面法(創造的問題解決の手法TRIZの一手法)を以前ご紹介しました。その作業の第7番目の作業は、未来社会のキーワードを「未来」×「上位システム」のマスに書き込むわけですが、そうした未来社会のキーワードは、どうやって手に入れるか。すこし考えてみたいと思います。
まず、検索で「未来社会のキーワード」と検索します。かなり多くのサイトが出てきます。その中でも特に秀逸な2つのサイトがあります。
■FRI(富士通総研)のペーパー
安部忠彦氏『これからの日本のリーディング産業』FRI REVIEW 2000.4
FRIの安田氏の論文を引用します。P33(PDFの9ページ目)
『今後の社会変化のトレンドを予測する方法はいくつかある。ここでは、これまで未来について予測した何冊かの著名な本を集め、その中で予測されている未来社会のキーワードを選び、互いに関連性のあるものを集め、未来変化のストーリーを作った。』
とあります。この著作から抜き出すものだけが絶対ではないとしつつ、一定の方向を浮き彫りにできるものとして、以下をあげておられます。
『具体的なトレンド
・デジタル情報ネットワークをベースにした情報化社会
-各人に合わせたサービスを行う完全受注生産などの、
企業間や企業と個人間とのネットワークの構築
-電子民主主義の出現
-地球規模電子共同体の形成等
・少子高齢化社会
-非家族がともに住むコレクテイブ住宅の増加
-在宅介護・医療の発展
・技術進歩の負の面の増加
-テクノストレスや孤独感からの癒し
-進みすぎて文化を壊すハイテクへの反感からの文明間の衝突
・オフィス環境ではSOHO(スモールオフィスホームオフィス)
・家庭生活ではやはりSOHO 及び家庭回帰
・その他環境問題への対応、エネルギー問題への対応
・バイオ技術を駆使した食糧問題の解決』
(引用文に対して語尾の削除や改行などの加筆を行っています。)
及び
『このようなトレンドの中で、リーディング産業との関係で重要と見られるのは、デジタル情報社会実現に関連する情報通信産業、高齢化社会における介護産業を含む医療・福祉産業、環境産業、バイオ産業である。』
としています。2000年当時(今から6年も昔)に述べられたこの論文で以降に続く文章は、2006年の現在実現のものとなっているものもありとても興味深い論文です。
■博報堂生活総合研究所
未来年表 (もしくはトップページに入り index.html を futuretimeline/index.php へ)
未来年表もとても興味深いものです。まず未来年表的なものは、WEB上にいくつかあります。個人の方などでとてもよく調べておられる方のサイトもあります。この博報堂生活総研の特に優れているところは、出展が新聞・行政などの公的文書データでありその出展名・日付などが掲載されていることです。データ活用の面からも分野検索(※1)、西暦検索、フリーワード検索、索引検索(※2)のなどがありとても使い勝手がよいものです。なお総数は、3836件(2006年8月22日現在)あります。
※1:総分野数12(医療、宇宙、カレンダ、環境、技術、経済、交通、資源、社会、情報、人口、通信)、※2:総索引数161 ともに2006年8月22日現在。
こちらを使うことで、自分の興味あるキーワードで「これから起こるとされていること」を見ることができ、新しい発想のときに、着想のヒントとなるものが得られます。
また、9画面法で、8番目の作業は、未来(目安は5年先)のサブシステム(構成要素、パーツ)を考えることになります。現在の構成要素が5年後にはどういうカタチをとりうるのか。ここで、特にテクノロジーの進化の予測情報が欲しくなります。これを知るのにJST(科学技術振興機構)の提供するサイトが利用できます。
■JSTバーチャル科学館 未来技術年表
これはJSTの5年後にデルファイ法などで行った「技術予測調査」による成果を非常にわかりやすく提示したものです。上記の「未来技術年表」の画面の「enter」から入り、「イラストで見る未来予測」を押します。すると、7分野のアイコン(※3)が出ます。たとえば「家庭生活」をおしてTV部分をクリックすると、「2023立体TV」といった技術とその関連する技術がポップアップします。
※3:家庭生活、健康・医療、社会・産業・企業、安心・安全、環境・エネルギー、地球・海洋・宇宙、ナノテクノロジー
技術について5年先という近い未来の動向は少ないかもしれませんが、長期的にこうなるはずだ、というものがあれば、5年後にはこういう方向になるだろうとある程度予測できます。こうしたものが、8番目の作業時に有効になります。
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■参考文献(FRIより)
『未来の衝撃』(A.トフラー、1970年)、
『脱工業化社会の到来』(D.ベル、1973年)、
『第三の波』(A.トフラー、1980年)、
『知価革命』(堺屋太一、1985)、
『21世紀・日米共存の時代』(日米21世紀委員会)、
『ポスト資本主義社会』(P.F.ドラッガー、1993年)、
『21世紀の難問に備えて』(ポール・ケネデイ、1993年)、
『すでに起こった未来』(P.F.ドラッガー、1994年)、
『覇者の未来』(デビット・C ・モシュラ)、
『文明の未来』(ジェラルド・セレンテイ、1998年)、
『文明の衝突』(サミュエル・ハンチントン、1998年)、
『テクノナショナリズムの終焉』(シルビア・オストリー他、1998年)、
『日本経済21世紀への課題』(小宮隆太郎他、1998年)。