Guiding creative talent(邦訳:創造性の教育)
心理学の創造性の大家が書いた有名な古い本があります。「創造性の教育」E.P.トーランス(日本語訳、昭和41年頃、誠信書房より出版)(原著のタイトルは、Guiding creative talent)
アイデアのチェックリストというものがあります。拡大したらどうなるか、逆にしたらどうなるか、など7項目が日本では比較的知られています。本格版としては、SCAMPERという48の問いかけのリストが、現代では使われいます。アイデアを引き出すために、この問いかけを自問自答してみると、大分発想がひろがる、という使い方ができるものです。オズボーンの著書にもその記述の原典となるものがあります。
さて、多面的なこの問いかけが、発想のトリガーとなる、ということはどのくらいから言われ始めた話なのでしょうか。お世話になっているあるベテランの先生に、アドバイスをいただきました。「拡大したらどうなるか、逆にしたらどうなるか、などの創造を引き出す問いかけは、古くは、E.P.トーランスにその記述を見ることが出来る」と。
地元宮城の県立図書館の古い蔵書データベースに書籍を発見し、借りてよんでいました。何十年も前に書かれた本ですが、内容は現代になお、とても新鮮でした。その中に、SCAMPERに近い性質の項目もありました。ある種の問いかけというのは、着想を引き出すのにとても効果がある、と、古くから認められていたことがわかります。
なお、そのSCAMPER的な部分以外にも面白い記述が沢山ありました。少し紹介します。
「創造性テスト」にかんする言及でおもしろい部分があります。子供を寝かしつけるときにつくり話をするときに、使ってもおもしろそうだなぁ、とおもいます。
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P333
「想像物語」
創作能力のテストとして考案されたもの。
指示はつぎのようにする。
つぎの20分間に、以下にならべてある題の一つを選んで、できるだけ面白くて、人を興奮させるような物語を書きなさい。(中略)書こうとする物語のなかに、できるだけよい着想を沢山もりこみなさい。つぎの題からどれか一つを選ぶか、自分でそれと似た題を立ててもよろしい。
A形式
1 ほえない犬
2 泣きさけぶ人
3 話はできるが話したがらない女の人
4 ひっかかない猫
5 ジョンズ先生がやめた
6 大工になった医者
7 鳴かないおんどり
8 走ろうとしない馬
9 ガーガーいわないあひる
10 ほえないライオン
B形式
1 話をしない先生
2 コケッコウと鳴くめんどり
3 けんかをしようとしない犬
4 空飛ぶ猿
5 看護婦になりたい少年
6 技師になりたい少女
7 泳ぎの好きな猫
8 船員のように荒い言葉を使う女の人
9 口紅をつけた男の人
10 ロバのようになく牛
以上、全部の題が一風変わった特徴を持った動物や人間に関連している。
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(注:石井補足。B形式の5,6,8,9は、現代の多様化した社会においては、必ずしも特別な題材となりえるわけでは無いかもしれまえん。一方で、動物のテーマは、そのまま成り立ちます。)
以上です。その後の文章に、創造性を評価する視点を詳細に書かれているのですが、目を引いたのが「しくみ、筋、テーマ、または教訓が普通ではない。または独創的である。」という評価視点でした。
”普通ではない教訓”というのがどんなものなのか。それに思いをはせるだけでもとても面白そうですね。