『ザ・プロフィット』(利益モデルの23パターン)
エイドリアン・スライウォツキー氏の著『ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか』(原著:The Art of Profitability)を一年がかりで読んでいました。各章ごとに考える宿題がでるため、結構長い時間を要するする本です。数ヶ月も手に取らないでいたりしたのですが、後半に入ると、自然とすいすい読めるようになりました。
さて、この本には23のプロフィットモデルが乗っています。割と古くから知られているもの、そうでないもの、様々が登場します。いくつも利益モデルをしってどうする?事業には一つあればいいだろう。という声もあるでしょう。この本の終盤に書かれていることが、深く印象に残ります。
(引用、P264)「ビジネスの世界でも先見能力の修得は可能でしょうか?」「君はどう思う?」「難しいことですが、出来ると思います。」「おそらくね。繰り返し登場するパターンが20や30はある。それを研究して自分なりのリストを作っておけば、たいていのことには驚かなくなるだろう。以前読んだ『プロフィット・パターン』・・・(以下略)」
この文章の示唆は、私がこの本を再度手に取るにいたったある着想を強化するものでした。
TRIZという技術開発理論の中に「発明の中に繰り返しあわられる問題解決のパターン40」というものがあります。優れた特許を分析して、40パターンを抽出したそうですが、それが対象特許の99%のエッセンスをカバーするものというものです。この先にも新しいものは出るでしょうか、その多くは、過去のパターンの組み合わせで再構成できる。そう考えると、未来の問題に対して大変心強い武器となります。
技術開発のブレークスルーアイデアを引出す40パターン。これと対称的に、ビジネスアイデアを引出すのにも48のパターンがあります。SCAMPERリストです。(ブレスターのTOIカードはそのリストの独自和訳です。)
これらは、技術アイデア、ビジネスアイデアを引出す際に、着想のトリガーとして使えます。
さて、プロフィットモデル。事業の収益を創造するためのビジネスの構造をつくることを企画する際に、プロフィットモデルのエッセンスとなるる23パターン(理想的にさらに補強して40~50パターンくらい)は、自社独自のプロフィットモデルを発想する際のトリガーになるだろうと思います。
関連する話題(1)
事業アイデア、事業構想を行う場面に同席することは昔から良くあります。ベンチャーや中小企業殿、あるいはスタートアップ(起業家)の漠とした思い。そうしたプランに、収益性が弱いときに、人はアドバイスをこうします「似たような業種で優れた事業の例がある。そこの収益構造はね、、、」といった具合の、先人の優れた例に学ぶ、ということ。こうした経験をいくつもして最適な独自モデルを作れる方もいます。こういう方は幸運であり、たのもしいですね。一方、一つ聞いてそれだけを闇雲にまねしようとして(自社のリソースの少なさに気がついて)どっちつかずの戦略をしてロスしています。
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ベンチャープランコンテストやビジネスプランコンテストに参加していろんな方のビジネスプランをうかがうと、収益モデルについては、大きく二分されていることに気がつきます。経験や知識がある人の書く収益モデルは、収益を生む事業構造があること。収益の創造がリアルに想像できます。一方、設けた経験の無い方の書くビジネスプランには、ほぼ、収益モデルというものがありません。ライバルより沢山動いて、コストを極力下げて、必死にがんばる。といったスタイルに多くの場合落ち着いています(もちろん、これも大事な心構えではありますが。)知識や経験がなければ、そもそも発想できない(あるいは、限界がある)ということです。
アナロジーです。コーチのいない即席の素人バスケットチームに似ています。出来る限り失点を防いで、とにかく必死に動く。そうすることで、ある程度のステージまではいけます。個々人の身体能力が高いと、結構上までいけます。しかし、戦略的に陣形を組んで高度なパス回しが出来なければ、勝てないステージがあります。そもそも知らないことは思いつけません。(もちろん、何度も経験して敵の活動から分析して学ぶ、という側面があります。またいくつモノ偶然を重ねて成功した事例から新しい戦略パターンが抽出されることもあるでしょう)やってみて学ぶ、というスタイルも尊重されるべきですが、すくなくともビジネスモデルを書く、という場合においては、うまくいくように作戦を考えている訳なので、何とかしたいところです。
関連する話題が長くなりました。
プロフィットモデルのパターンを広く集めエッセンスにしたものが出来れば、ビジネスプランニングの際に、プロフィットモデル着想のためのトリガーになるかも知れません。未来の利益モデルは当然、わからないわけですが、本当に新規性のあるものを除いて、多くの場合には、過去の優れた利益モデルのエッセンスを組み合わせたもので表現できるのではないか、とおもいます。その意味では、過去に学び、独自のモデルを創造することで、かなり高い確率の成功を導けるのではないか、とおもいます。
広く事例を集めてみたいと思います。プロフィットの優れたモデル。きっと、事業革新をされる際に有効なノウハウとなるのではないか、とおもいます。