参加してよかったと思う講演には2つの要素がある。
今日、ある経営者の方のお話をお伺いしました。起業家の集まる勉強会に特別ゲストでいらした方です。
非常に計画的な視点とそれを実際に可能にするバイタリティーの両方を感じました。お話を、何度も首を振りながら「なるほど」「合点がいった」「実際のところは、そうなっているのか」と多くの人が納得しながら聞いていました。
「これは本当に参加してよかった」と思う講義にめぐり合うときが時々あります。そういうお話には、2つの要素があると気がつきました。
1.ケーススタディー
実際に講演者が体験したこと、実践してきたことは、言葉の聞こえ方が一味違います。声に自身があるというか、台詞を乗せてい来る音声に伸びがあるというべきか。全て100%を実体験で話しつくすのは無理だとしても、核心部分は自分の実感をともった、あるいは、100時間の自分の汗水たらした経験が濃縮された「事例(ケーススタディ)」があると、断然違います。
これは、プレゼンの基本に「アイテム(実物)を見せよ」という事に通じると思います。プレゼンの中で、ポケットから、ふっと取り出したサンプルはプレゼンの吸引力を高めるのは、基本的なスキルです。そして、実物が無い場合でも、アイテムを持ってきた感覚に近いことが出来る場合があると思うのです。それは、ケーススタディ、です。スポットライトの下に丸テーブルがあって、その上には透明なアクリルの箱があり、中には「私のリアルな体験」という「モノ」が乗っています。オーディエンスはそのスポットライトの下の生々しい「事例」が実際そこにあって目にみえるかのような心理になったときに、その人の話は「見せアイテム」と同等以上のものがある、そう思います。
2.ツール
良い講演には、持ってかえる事が出来るお土産があります。それは「ツール」です。リアルにアイテムをもらえる場合もありますが、それは一段下のお土産だと思うのです。アイテムをもらうといっても、本当に欲しいものは、サンプル品程度のものではないと思います。本当に欲しいのは、講演者のノウハウに近いものをコンパクトにしたシンプル・モデルなんだと思います。そのシンプルモデルは、実際に自分の戦略を立てる時に、あるいは、実践の場で戦うときに、明日から使えるものであると、なお良いわけです。シンプルモデルを手に入れたけれど、アプライ(応用)するには、さらに一工夫必要、なものでは、「明日から」は無理ですから。そういう要件を満たすシンプルモデルは、すなわち「ツール」だと思います。例えば、世界を現す海図。日本語でかかれたものをもらえば、明日の航海に使えます。それが、外国語で書かれてしかも、実際の尺度と異なる記法であったりすると、それは、生データとして貴重だけれども、明日からは使えない、つまり「お土産としてのツール」ではない、と。あるいは、方位磁石。単に方位磁石があって、各々のケースで使い方は違うとおもいます、という程度の話で渡されても、明日から使えません。それが、「私の場合ですが、***のように使って、2時間ごとに舵を切ると大体、誤差***で進むことが出来ます」といったところの使い方が付してあると、ツールとして受け止めることが出来ます。
これらの「ツール」であるか否かは、無意識に「付箋を貼った資料」「デジカメで写真を撮っておきたいスライド」として自分の心に現れます。ケーススタディの方は、紙や写真に残りにくいものですが、ツールの方は、2次元に残しやすいほうが、より良いと聞き手は感じます。
これらを図にするとこんな感じになると思います。

この構造は、無限に繰り返して言い訳ではなく、3つがちょうどいいようです。1か2では物足りなく感じ、4つ以上だと「いつかやってみたい資料」フォルダへ入れられることになります。実は情報やノウハウはフルパッケージで届けると、丸ごと、貯蔵庫に行ってしまうことがあり、3つ、見せたいからには、数を絞る、ということが重要のようです(商品開発でパートナーに繰り返しいわれることで私にその視点が出てきたのもありますが。)
以上です。
自分自身、この秋・冬は全国で講義をさせていただくことが増えます。その際に、こうした優れた講義の体験は私自身の価値提供に是非活かしたいと思います。