大きな追い風のときは北極星と全機現(ぜんきげん)。損得は誤差が大きすぎて指標にならぬ。
8月22日、52歳になりました。
私は年に二度、展望をまとめます。元旦は事業、誕生日は個人。この投稿は「一年後の自分」一人に宛てた文章です。それでも毎年、公開の場に置いておきます。公開することが何をもたらすかはまだ定かでなくとも、痕跡として残す価値はあると思うからです。
追い風の中で
6月にダイヤモンド社から『AIを使って考えるための全技術』を刊行。3度の重版を経て、累計4万部(現時点)。ありがたい追い風のなか、取材や講演の依頼が相次ぎ、現業と新規対応で日々は加速しています。
さてこういう追い風の時に、私が大事にしている考えがあります。
「追い風にあおられず、向かい風に歩を止めず」
追い風の落とし穴
かつての経営戦略の講義で聞いた話が忘れられません。
「向かい風で仕事が減っても会社は簡単には倒れない。やりくりの余地がある。だが追い風が吹くと、希少な機会に惹かれて大きな帆を張る。やがて風が常態に戻ると、その帆は重荷となり、自走できなくなる――会社は追い風の時にこける」(石井の意訳です)
ここに、いまの自分の実感を一つ足します。追い風が自分の推進力を大きく上回るとき、「損得」は舵取りの指針として役に立ちにくい。
通常よりはるかに速い速度域では、目先の損益は容易にプラスとマイナスが入れ替わり、予測指標としてのノイズが大きくなるからです。
北極星を見て舵を切る
では、目の前の依頼を手当たり次第に受ければいいのか。――それは舵を投げ出すことです。
こういう局面では、「はるか先にある、決して到達しえない理想の地点=北極星」を進路の基準にします。報酬の多寡や機会の珍しさで決めるのは損得の舵。そうではなく、人生の射程を超えてなお輝く方角に合わせる。
もちろん、北極星と一致しない進路がすべて悪いわけではありません。航海なら、岩礁帯を避けるために一時的に90度進路を変えることもある。要は海図(構想)を手元から離さず、折に触れて北極星へ舵を戻すこと。
もう一つの基準――『全機現』
追い風のときに忘れたくないもう一つのものが、禅の言葉「全機現(ぜんきげん)」です。持てる力を余さず現す、という意。ある年の学会発表でこの言葉に出会って以来、語彙に加わりました。
創造性の観点で言うと全機現はとても良い概念です。能力が全開のとき、人はおそらく幸福やフローやゾーンの周辺にいる。
私は経営者としては慎重で、風が強いほど守りに入りがちです。講義で得たブレーキは有効ですが、効きすぎると縮こまる。だからこそ、一つひとつの依頼に「全機現」で臨む。取材も講演も、可能な限り、いま持つ力を注ぎ込む。
北極星 × 全機現
進む方角は北極星で定める。日々の仕事は全機現でやり切る。
この二つが、いまの自分に必要な一年展望だと感じています。
そんな一年にしていきます。さて一年後の私は、この展望をどうみるでしょうかね。
~ ~ ~ 長い余談 ~ ~ ~
一年後の読者たる自分が去年の展望をどう思っているか、本当に蛇足なんですが最後に振り返ってみます。
リタイアする日の自分が褒める仕事、
創業した日の自分が憧れる仕事。
そういう仕事をしたい。ーー51歳の展望
さて、、、。心に正直に聞いてみます。
著者として:
書籍は累計4万部。多くの人の創造的思考に役に立てたことは多分、75歳ぐらいでリタイアする石井翁は「ふむ、、、頑張ったな」と言ってくれそうです。あこがれの本『考具』の著者・加藤昌治さんと一緒に本を作った、しかも、ダイヤモンド社という最高峰の出版社で。これは、創業の日の自分にタイムマシンで伝えに行っても「ホントに??どういうルートで進めばそんなことになるの?」と戸惑っていそうですが、望外の喜びでしょう。
しかし、やれてないこともあります。「書籍以外は、どうなのか。」も、吟味してみます。
創造性の研究者として:
この一年間では学会賞(研究大会の発表賞:ポスター発表部門)をいただきました。変な動きが想像性を引き出す『Imagine Card』。(AI時代にまったく逆の、身体を動かすアプローチの創造性促進ツールです)
→これは、創業期石井からも石井翁からも、+++
学会の理事として:
デジタル推進委員会が立ち上がり、初代の委員長を拝命しました。そして学会の歴史の中で始めてのブロード・リスニングを実施し、理事会内で報告をしました。
→これは、創業期石井からも石井翁からも、++
アイデアプラントの代表として:
創造研修の依頼や、大学・高校からの創造性や探求授業の依頼に対しては、全力で準備運営してきました。
一方、新製品開発は、停滞しています。誕生の3歩手前ぐらいまで来ているのですが、そこから著しく速度低下。この点、二年間ずっと反省しています。
私の中では、「現業」「感性の仕入れ」が第一第二。第三枠が「執筆」「創造性の研究」「アイデアプラントの商品開発」なのですが、この枠の中を「執筆」がどどんと時間をとっていました。書籍を生み出すというのは途方もない労力。肩も目も髪も削りながらの二年間でした。
→これは、創業期石井からも石井翁からも、![]()
一緒に作っているビジネスパートナー、商品を待っている潜在的ユーザを考えると、商品開発を「後回し」にしている現状に甘んじていられません。志があるならば、やらなくちゃ。