動機づけのヒント(1)
企業内人材育成入門の動機づけの部分に興味深い記述があります。動機付けのヒントとして、私なりに理解したことをメモしておきます。
■生理的動機、親和的動機、達成動機
「生理的」は飢えや渇き、苦痛など、人間の生存に関わる欲求。労働が何よりも生きるための手段であった時代。人間は動物とそれほど変わらない存在として捉えられる。
「親和的」は仲間に存在を認められ、仲良く行動をともにしたいという欲求。人間は感情を持った社会的生物。良好な人間関係によってもたらされる動機づけ。
「達成」は目標に向かって何かを成し遂げたいという欲求。自分なりの目標を持っているほうが、仕事のやりがいを感じやすい。今日もっとも重視されている。いわゆる”やりがい”や”仕事で自己実現したい”という欲求。
達成動機について
マレー:人間の行動は、人間の内側にある「要求(need)」に方向付けられている。難しい課題に取り組み、目標を達成しようとする達成動機が経済発展を促す。
アトキンソン:達成動機は、「成功への接近傾向」と「失敗回避傾向」との差。「成功への…」=目標達成に成功したいという動機。「失敗回避…」=失敗する恐怖。とても困難な課題や失敗のマイナス面の強調は達成動機を弱める。適度な目標や課題を設定することが大切。
人間の動機づけはどれかひとつだけということではなく、3つが皮見合っている。
■マズローの欲求段階
5:自己実現
4:自我の欲求
3:親和の欲求
2:安全の欲求
1:生理的欲求
(注:段階を端的に示すために、補足的に数字を入れた。)
マズロー:人間の欲求に段階があると考えた。さまざまな欲求を段階的に位置づける「欲求段階説」を唱えた。上記のように階層化し、低次の欲求が満たされるとより高次の欲求が現れる。
■X理論、Y理論
マクレガー:「X理論」「Y理論」。提示の欲求に基づく人間モデルをX理論。高次の欲求に基づく人間モデルをY理論。X理論:人間は生来怠ける。金銭で刺激、厳しく監督しなければ働かなくなる。Y理論:人間は本来進んで働きたがるもの。自己実現のために自ら行動しようとする。
生活水準が向上し、低次の欲求が満たされるにつれ、人はY理論のように高次の欲求を求める。
■動機づけ・衛生理論
ハーズバーグ:人間の欲求には、仕事への不満につながる欲求と、仕事への満足につながる欲求との二種類があることを発見。作業環境など低次の欲求は、それが満たされなければ仕事への不満感を増すが、満たされたからといって仕事へのやる気をかきたてるわけではない。仕事への動機づけを高めていたのは、達成感や人から認められることといった、より高次の欲求。低次の欲求を「衛生要因」。高次の欲求を「動機づけ要因」。
(しかし)人間の欲求は、諸理論が考えるほど段階的だろうか。オフィス環境という生理的欲求を満たすことが、より高次の欲求である仕事のやりがいに通じることも有る。一方、給与などの待遇に関係なく自分の好きな仕事をしたいというように、生理的動機や親和的動機よりも自己の達成動機を第一にする人もいる。人のやる気は実際にはとても複雑。