品格とアンテナ。古くならない秀逸なデザインを生む、ということ。
先日、宮城県庁の主催するデザインセミナーに参加して、プロダクトデザイナーの喜多俊之氏の講演を聴いてきました。喜多氏は、世界的に評価され国内外で多くの賞を受賞しています。講演では氏のデザインの事例(30年近く売れ続けているイタリアの家具の事例や、伝統工芸をデザインの力で世界的な商品にした事例など)を、多くの作品をスライドと動画で紹介されながらそのモノづくりの思想に及ぶところまで、とても貴重なお話を聞くことが出来ました。
カッシーナ(イタリア)のWinkやDodo、洗練された腕時計MIZなど、所有者が長く愛して使いこむモノづくりにとても感銘をうけました。その講演の中で特に印象に残るのが、喜多氏が「品格」をとても大切にされていることでした。
私の研究領域は「テクノロジーマネジメント」です。製品開発マネジメントやモノづくりは主要なテーマの一つです。そうした分野の研究者の発表で「品格」という言葉が登場することは稀ですが、喜多氏の「品格」という視点には重要な要素の分析につながるヒントがあると感じました。この喜多氏の言葉が意味するもの本質はなんだろう、とセミナーのあとずっと考えています。
また、講演の後、喜多氏に製品開発の視点で質問しました。「8年に及ぶ商品製作の過程で、どのように、市場の反応をみていくのでしょうか」と。氏のご回答は、”市場調査は行わない(市場データからは**を得られない)”ということでした。私が「?」と不思議に思っていると、氏は続けて「ただアンテナはいつも高く張っておく。」とおっしゃられました。
デザインというものは、設計・開発・製造としての側面と、アート・文化としての側面があるようです。将来的には、こうしたものをもう少し真剣に勉強してみたいなぁ、とも思います。
品格のあるデザイン。30年たっても売れ続けるデザイン。市場データではなく高いアンテナをもつこと。
これを統合的に考えるに、人間社会の発展というダイナミクスを、フーリエ分解し高周波数から低周波数までに分けた場合に、低周波成分にフォーカスすることの重要さが示唆されてのかもしれません。
※楽天日記、2005年9月1日の日記、「ものの本質をみるには、「分解してみる」という手法もある。」にフーリエ分解の話を書きました。この辺のことは今後もう少し、考えを深めて行きたいと思います。