ブランドの形成に関する一考察。(2)
…昨日のブログからの続き。…
グローブ・トロッターの「鞄」は、手にとってクラフトマンシップを感じることのできる「モノ」ですが、手に取ったり、眺めたり出来ない「サービス」について、ブランドの形成はどうでしょうか。
「サービス」のブランド形成について、先日興味深いお話を聞きました。雇用能力開発機構の提供する創業支援セミナー(アントレプレナーDoIt)でアニコムの小森社長が講演されたお話からご紹介します。速記メモ 060223.txt ペットの保険を提供する同社では、電話を受けたときに、「ハイ、○○社、お客様係担当の○○です!」というセリフを毎回同じトーンでいえるように、そして全員が同じトーンでいえるように、訓練をするそうです。(冗談かもしれませんが、『ハイ、が半音高いぞ』というレベルまで指導する、そうです。)お客さんは保障のことをたずねるために二回目、三回目と、電話をすると、その度に毎回同じトーンで電話に出るこの企業に対し、「おお、しっかりしとるやないか」と感じるようになるそうです。人間には、1個、2個、3個と点が直線上に並んでいたらそれを線で引いてみたくなる性質があるそうです。そうして電話の声が毎回きっちり同じこの企業の対応のよさに、その線上にお客さんが勝手にベクトルを引くようになってくる、そうです。(これを、ベクトリング、と呼んでいました。)そして、このベクトリングは予想するよりも早く行われるそうです。電話の声の奥で別の担当者が全く同じトーンで「ハイ、○○社、…」と発することがお客さんの耳に入ることがベクトリングのための、「点」を増やすからではないか、と。
このような、「高いレベルにあり」「その状況がとても安定して推移していく」ということを顧客が心の中で確信できたときに、ブランドというものが出来ていくのかもしれません。
3月3日の私のブログ、「品格とアンテナ。…」という内容のなかで、社会の中のローフリークエンシー成分(激しく変化の起きる現代社会でも、非常に長期的なタイムスケールでようやく変化をしていくような部分)に言及しましたが、ブランドを形成するというのは、ある意味、激しく変化していく社会においても、信念と努力によって非常にローフリークエンシーなものを築いていくことなのかもしれません。
ブランドとはその起源は、牛の所有者をあらわす焼印を牛につけたことだといいますが、単に企業のマークを全ての製品につけていくことがブランド作りではなく、顧客が自然と認知していく全てのものが良くも悪くもその商品・その企業のブランドを形成していくということを前提にして、かっこいい・気持ちのよい「高いレベル」のモノ・サービスが「ずっと将来まで継続して」提供されるだろうことを顧客が勝手に認識することを全力でつくり出すことが、『ブランドの形成』なのではないか、と思います。
まちのパン屋さんが何十年と美味しいパンをつくればブランドです。ですが、スタートアップの企業が早晩ブランドをつくったり、海外の良質な品の輸入販売者がそのブランドを自国で十分に醸成しようとしたら、長い年月にたどり着くまでに、初期の良質なブランド形成を図る必要があります。そのときに、どうも上記のようなことが重要な要素の一つであるのかもしれません。