スキーマ
昨夜、寝る前に、認知心理学事典を読んでいて、おもしろい概念がありました。
「スキーマ」
過去に体験した一般的なことで、構造を持っている知識、というべきでしょうか。うまく表現するには、もう少し勉強が必要です。
興味深かったのは、「変数スロット」と「デフォルト」という要素です。
スキーマには、変数スロットがあり、その変数にはいろんなものが入ります。”変数”といっても、数字ではなく、いろんな代名詞や固有名詞、あるいは、形容詞とか、そういう文字ではいる情報です。もちろん、数字の場合もあるでしょうけれど。
その変数を指定しない時は、「デフォルト」で入っている情報を、当てはめて、話を聞いている、ということ。
例としては、
「靴を買いに行く」という時に、変数スロットには「赤い」靴とか、「新しい」靴とか、「ウオーキングの」靴という変数が入りえる。もし、その変数スロットになにも情報がはいってこないと、聞き手はその人の経験からえてきたこのスキーマに、デフォルトで入っているものを当てはめて聞いている。たとえば、ビジネスマンなら、靴を買いに行くといえば「ふつう、革靴だよな」だ、というデフォルトがあれば、指定されない場合は、「ああ、革靴を買いに行ったんだろうなぁ」と思って聞いている、というわけです。
ひとの頭というのは、興味深いですね。思い込み、という表現でかたずけられているものも、ともすれば、少ないインフォメーションで多く伝える技術とか、勘違いを引き起こさせない文章構成とか、いろいろ、役立つスキルがふくまれそうです。
(ご注意ください。これらの説明は、間違っている可能性があります。私が寝る前に興味深いとおもって読み込んで、半日たってから、その概念を熟成させて、自分の言葉で(なにも資料を見ないで)書いていますので。私なりの勉強メモ、というべきページでした)
追記:11月3日
スキーマについて、更に読み込みました。
人は話を聞いている時にスキーマをつかって理解しているそうです。そのスキーマによって
・合理化
・削除
・精緻化
・歪曲
がなされるということでした。
個人的にすごくよくわかる気がしました。
支離滅裂ぎみな話を聞いても、そこに合理的な構造を探して、いみをとろうとします。情報として要らないものは、選択せずにどんどん「聞いていない」状態にしています。そして、ない情報でも話をつなげるために、スキーマの提示する情報を補って(時には、明示的におぎなって)話をかんせいさせます。しかもそのスキーマというか認知の仕方が、本来の情報を切り刻むので、不適切な対象については、わざとでないけれど本質を失うこともあるかとおもいます。極力歪曲しないように、フィールドワークの中では事実・出来事を紙に書きとめて、記憶の中での自動洗練をうけないようにするわけですが。
興味深いのは、スキーマをいじってやることで、その人の記憶をいじることができる、ということ。思い込んでいた基盤をかえるようなこと、かな、とおもうのですが、それによって、その人の過去の体験の意味づけをかえることができるのかもしれませんし、過去、スキーマのデフォルト値として認知していたものを、スキーマのデフォルト値をかえることで、過去のその時にゼロ情報だった所に、デフォルトがはいるようにするのかな、とも。
たとえば、針し去ったフェラーリ。色はデフォルトは、大抵の人は「赤」だとおもうんですが、その人のスキーマをいじるとは、「この20年間でもっとも国内でうれたのは、実は黄色であり、赤というのは、テレビで見る以外にめったに走っていない」ということを、しんじさせられたとします(本当はどうかわかりませんが)。すると、過去に走り去った場面のフェラーリ、は、記憶の中で色の情報が枯れかけていたならば、「ん、黄色、だったっけ?」と、なるのかもしれません。
認知心理学というのは、創造のための特性を知るために勉強しているのですが、なかなか、奥の深い、使い方によっては、聞きすぎる効果のあるものかもしれないなぁと、ふと、感じたのでした。よい知識は正しくつかわれないと。と思うのでした。