スタートダッシュ効果と締め切り効果
人の心にはモチベーション・躍動感による推進力と、焦燥感・義務感による推進力があるように感じます。それに関して今日は私論を述べたいと思います。
人の心は物事の始まりには、「新鮮さ」があります。今日一日に得られる情報というのは、日が浅いほど、初めて知ることばかり。逆に時間がたつとこれまでの知識総和に対し今日知ることは相対的に小さく感じます。
たとえばあるプロジェクトを考えます。プロジェクト期間が100日だとして、今日一日で経験する量を1とすると、一日目の経験は、新鮮そのもの「1/1」です。二日目は新鮮さは「1/2」、三日目には「1/3」です。100日目では、新鮮さは「1/100」です。つまり新鮮さは「今日一日/これまですごしてきた時間(日数)」といえるかもしれません。ざっくりというと、こんな感じに下がるものかもしれません。
また、モノゴトがおわりに近づき、もう数日しかないと、時間を急に意識して一日一日が大切に感じられます。終わりに近づくほど、大切に感じられるものです。特に、原稿の締め切りなどになると、最後の数日は分単位でスケジュールが頭の中でマネジメントされるようになったりするものです。
これを同じく100日のプロジェクトでいうと、今日一日の貴重さは、「1/残りの日数」という捕らえ方が出来るかもしれません。
このスタートの時期の推進力を「スタートダッシュ効果」、終わりの時期の推進力を「締め切り効果」と仮に呼ぶならば、その2つの総和が、人間の推進力を生み出す原始的なモデルではないかと思います。100日のプロジェクトを前提として、今日がx日目とすると、x日目をすごす人間の推進力は=”1/x”+”1/(100-x)”ではないか、と思うのです。(あくまで原始的な近似、ということですが。)
これをグラフにしてみました。
(図、石井作成) クリックすると拡大します。
グラフにしてみるとよく分かるのですが、10日目にはかなり新鮮さが下がります。この先はかなり横ばいな感じです。逆に90日目にはかなり焦燥感があがります。ここからの猛烈な勢いであがります。この2つを同じ重みで足していいのかは難しいところですが、同じ重みだと「仮定」するならば、始まって10日目まではすごく進むけれど、だんだんと中だるみになり、終わりが近づくと焦りが先行してモノゴトの処理が猛烈に速くなる。というケースをあらわすモデルが描けます。
実際には、トラブルがあったり、初期のスタートダッシュ時期に、社内会議があって「オイシイ時期」を逃したりすることもあると思います。締め切り直前の「辛いけど、オイシイ時期」にろくでもない用事があると人はいらいらしたりするもののようです。また、人によっては、長く新鮮さを保てる人や、早い時期に焦ることができる人もいるようなので、それに応じてもうすこし、中だるみが改善されているケースもあるでしょう。
願わくば、この真ん中の中だるみにも高い推進力を保ちたいものです。そのためにどんな工夫をしたらいいのかとふと考えていました。もう少し考えてみたいと思います。良い案があればぜひ教えてください。
蛇足:さらに私論ですが、スタートダッシュ効果は「発散過程」、締め切り効果は「収束過程」としての特性を持っているような気がします。