イノベーションからの収益力を重視する場面では
アイデアを評価する場面は、さまざまあります。
「イノベーションからの収益の得られやすさ」を重視する場合には
「イノベーションの占有可能性」という視点が、とても効果的です。
イノベーションの占有可能性
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1.知的財産権、パテント (Property Rights in Innovation)
2.補完資源、補完技術 (Complementary Resources)
3.技術の性質、性格 (Characteristics of the Technology)
4.リードタイム (Lead Time)
この視点でアイデアやプランを評価すると、構想したものを具現化した後に、そこから得られる収益をきちんと自社に取り込むことができるのかを、ざっと評価することができます。
すこし詳しくコメントして見ます。
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1.知的財産権、パテント
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・薬では65%、パテントによってイノベーションの利益がプロテクトされ、成果を生み出せる。
ケミカルは30%。
機械、金属製品は10~20%。
電子機器、装置、原始金属、オフィス機器、自動車、ゴム、織物は”10%以下。
パテントによるプロテクトが有効な分野とそうでない分野があるということです。
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2.補完資源、補完技術
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具体的には以下のものを指しています。
・競争力ある製造力
・安定的に顧客に提供できること
・サービス
・財務
・マーケティング
・コンプリーメンタリー テクノロジー(補完的技術)
・その他
コアテクノロジー以外のところで、実は利益の取り合いの勝負が決するということが、あるわけです。
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3.技術の性質、性格
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暗黙的な知識(言葉とか数式よりも、そういうことで表せない重要な技術)ノウハウ、トレードシークレットなど暗黙知的要素が高いほど、比較的容易に、プロテクションすることが容易になる。
複雑性(ある技術があるときに、どれくらいの構成要素があって、その結びつき方の多様性)より複雑な技術であれば、一般的には模倣しにくくなる。
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4.リードタイム
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イミテータが模倣して製品投入するまでの時間(リードタイムが長いと、キャッチアップするまでに非常に時間がかかる。)長いものほど、よりイノベータに有利になる。
イノベーションの占有可能性(専有可能性)についての詳しい解説と4項目の引用元は、こちら。
Grant.R.M『CONTEMPORARY STRATEGY ANALYSIS』
第11章「Technology-based Industries and the Management of Innovation」
翻訳された和書としては
があります。(値段が高い!)
大学院の経営学修士のコースにいくと、イノベーション系のゼミディスカッションではよく使われます。イノベーションとかMOTのマネジメントの本を読んでみたものの、R&D部門としてはものたりない!という方はぜひ、手にとって見てください。他にも興味深い概念がたくさんのっています。
ビジネス書にのる経営戦略フレームワークと、MOT、MBAコースのアドバンストなものとでは、違いがあります。経営に関するビジネス書の読者上位3%に入る方むけ。MOTスクール(大学院)に行こうか、という方だと、楽しいかもしれません。初学者の教科書としては、ちょっと、かじりにくくて向きません。