臨床美術ワークショップに参加してきました
こんな感じで、一人一人に道具が準備されています。オイルパステル、ってなんだろう、楽しそう、なんて思って始まりを待ちました。
開けるとこんな感じ
わざとこのパステルは折ってあるそうです。ペンのように握って書くだけでじゃなく、寝かせて幅広の線を作ったりできるように、使う前にぽきっと追っておくそうです。私は筆圧が高いので、思いきり突き立てた時に、また少し折れました。
ガイドの先生が、一ステップ一作業、を指示してくれます。
使う画用紙も面白くて、中央にランダムな形を切り抜いた画用紙が張り付けてあります。これがまた、予想外の線を引かせることになります。
撮影があまりうまくありせんが、画用紙中央に、ランダムな形の紙が貼られています。
まずは青をとります。1本、線を引きます。
途中に段差があるので、そこががくっとなったりして、予想外の線になりました。
次はぐいっと、強く書いて途中で、すっと軽い線にします。
今度はパステルを寝かせて書きます。
段差がきれいに効いています。
次は黄色です。
口で「ぐに、ぐに」と言いながら、黄色のパステルで、グニグニトした線を紙面中に書きます。
このオイルパステルの仕様で
重ねたところが、きれいに色が混ざります。黄色と青で緑色が形成されています。
そして、指でこすったりして、色が混ざるようにしていきます。単色の所を指でふわっと拡げることもできます。
面白いことに、テーブルの皆で見比べると、たったこれだけの作業でも結構自分とは違うなぁと思いました。
次は普段、自分が使わない色をとります。私は紫をとりました。
そして、「ゴツゴツ」とした線を書いていきます。実際に口で、ゴツゴツ、と言いながら書きます。
そして、絵をいろんな向きに回転させて
どの方向からの絵にしたいかを、決めます。私はこの後、上の状態をさらに180度回転させて、絵のむきを決めました。
そして囲まれている領域で一番興味を持ったところに色を付けていきます。
私はこの部分が気になりました。
ここに、赤を入れました。
他にも、この赤い頭のような部分から流れるようなイメージを想起したので、そこから黄色のふんわりした線をを加えたりしました。
その塗りつぶしたところも、指でこすって、テイストを変えることができます。指でこすっていくと、ペタッとした稠密な感じが出ます。周囲の色と混ざってしまってそれがまた、新しいモチーフを想起させました。当初は、スポーツカーの流線型をおもい描いていたのですが、下の青と混ざって、目のように見えるところができて、これは龍の首のようなものにも見えるなぁと、イメージが想起されていきました。何かの具体物を模写する作業ではない(この辺を、冒頭で、デジタル画とアナログ画とおっしゃっていました。何か具体物を描こうとする作業がデジタルで、そうではないこういう線の造作に遊ぶような書き方をアナログ画と。)のですが、変わるたびに何かにモチーフづけようとしている自分を感じました。
他にも気になる形のところを塗ります。
手に取った灰色で首のあたりを塗りました。ここで「龍」と想起したイメージを追うなら緑かもしれませんが、そういう枠を外して、アナログ画なんだ、と考えて、ふと目についた色で塗ってみていました。
指で調色できるのはとても面白いですね。これはiPadでのペイントアプリを、アナログでやっているような、そんな感じになりました。
静かな音楽がながれているなか心の赴くままに、色を入れていきます。こすって色を混ぜたり、淡いぼかしをいれてみたり。
そうして絵が描きあがりました。でもここで終わりじゃないです。
額縁を当ててみて、一番素敵な絵になるところを見つけよう、と。
まずは普通に。なんかちょっと、ちがうかな、と。いろんな色の額縁があるのでそれもかえてみます。
黒はどうだろう。
意外とこんなところはどうかな。
縦にとる、のもありかな。
絵のタッチが、重厚感があるので、額縁は明るい色がいいなと。
クリエイティビティーの色っぽく、オレンジイエローをとりました。いくつかの分化するモチーフを想起したこの部分を選びました。
ちなみに赤い部分に六角形の鱗のようなものがあります。これはお箸を鉛筆削りで尖らせたもので書き込んだ模様です。逆の側はへらになっています。それで絵を面的にこそげ取り、うすくしたり、ペンのように模様や細かい線を入れることができる、というものです。なんとなく、つるっとした有機物のイメージで、鱗のようなテイストを醸す六角形を書いてみました。
さて、ここで、この絵を「固定する」作業に入りますよ、と。
このオイルパステルは表面がぺたぺたしていて手でこすれば絵が変わってしまいますが、これを粉で簡単に固定できます。
これです。ベビーパウダーです。これを絵の上にぱらぱらとかけて、ティッシュでぽんぽんとおしていきます。
絵が粉だらけになります。スプレーのようなもので固めることもできるそうですが、この方が簡単ですよ、と。香りもいいですね。
粉が付くと、ペタペタとする感じがなくなり、表面がサラサラになります。粉を吸って油分が固化する感じ、でしょうか。
それで粉を払うと元の色調になります。やや色が淡くなった感じはします。白を幾分混ぜたような。
額縁にのりをたくさんつけて、おしつけたら、
はさみで余分な部分を切ります。このはさみは、手の機能が弱っている方でも使える構造になっているそうです。
切り抜くと残りがこんな感じに出ます。書かれた偶然性のなかの一部を切り取り、額縁に入れることで、絵の全体的な印象とはまた違った作品が生まれます。
右下に、筆記体で名前を入れます。ぐっと、なんだか抽象派の作品風に。額縁がひろく力強く存在感を引き立てているのも大きいですね。
出来上がったら皆さんの作品を壁に張って、鑑賞会です。一つずつ、鑑賞会しながら作品の持っているテイストや広がる世界を、楽しくコメントしていきます。書かれてみてどうでしたか?と聞かれるとみなさん、それぞれの思考過程とそこから生み出されていった具現化物としての絵について、かなり語っておられました。
このワークを進行する先生の、引き出し方がうまい、ということも印象的で記憶にのこりました。やわらかでいて、感性部分について良い所をコメントしていくようなところは、創造的思考の部分とも大きく通じるものがありそうです。
こんな感じの2時間でした。
追記:
すこし詳しい背景など・・・
臨床美術、というものがどういうものであるのかは、正確に言わないといけないのですが、ざっくりと私が理解したのは「絵を書くことで心の状態を良い方向に持っていく作業療法的な側面」があることと、「描かれたものを通じて相手のことを知るような心理分析的な側面」があることでした。
感想など・・・
私は、臨床美術の概論と実際の使われ方をもう少し知りたいと思いました。すると、この辺はうまく学習が設計されていて、もっと学べる講座があるそうです。
http://www.tfu-ac.net/yfkc/ca/ws.html
このページからたどっていくと、受講の方法などがわかります。値段的にも時間的にも、結構な投資が必要ですが、ある種の人にはかなりよいスキルとなるでしょう。