アイデアスケッチ(IAMASスタイル)
「頭の中のアイデアを、紙に落としたい。」
そういう時には、アイデアスケッチをかくわけですが、私が普段行っているワークショップでは「一言で表現したアイデア+詳細補足3つまで」というスタイルを使っています。絵を描く職種ではない人にとり、文字だけで書ける方法は、書き出しの敷居を大幅に下げるという側面があり、私はそれを主要技法として使ってきました。
しかし、絵を描いたスケッチの方が圧倒的に分かりやすく、見る人の想像性を刺激するところがあり、どうやったら、エガク、という要素を敷居を低くしたまま取り入れられるだろうか、と考えていました。
そんな折、IAMASの小林茂先生とトークイベントでご一緒させていただき、IAMASスタイルのアイデアスケッチの描き方を知ることができました。この描き方(絵が入るので、カキカタが、書く、ではなく、描く、になります)を簡単に紹介します。小林先生にご了解をいただきスライドの一部を掲載させてもらいます。
Idea-sketch (IAMASスタイル) の描き方

(大きな図で恐縮です。ここはしっかり見てもらいたいため、デザインを大幅に崩しても大きく掲載しました)
細いペン
↓
太いペン
↓
カラーペン
↓
グレーペン
という順で描くとのこと。IAMAS(←イアマス、と読みます)の中では、ペンの仕様も決められているそうです。
追記:ペンの仕様を、小林先生にツイッターで教えていただきました。・
アイデアスケッチ(IAMASスタイル)のペン━━━━━━━━━━━━━━━━━■細=ぺんてるサインペン■太=マッキー■キーカラー=マッキー■グレー=コピックスケッチのT3
実際の事例を一つ掲載します。

(いいですね、はっきりしていて、わかりやすい)
このIAMASスタイルで描かれたアイデアスケッチは、張り出して皆で議論する時に、誰の絵も似たテイストになる効果があるそうです。
それの何がいいかについて、述べます。多くの創造技法において、いわば鉄則として語られることですが、アイデアを評価する段階では、評価対象のすべてのアイデアを個別の紙片に書かせるべきです。それは評価において発案者の社会的ステータスと、発案内容を切り離して、アイデアを率直に評価できる可能性が上げるからです。また発案者本人も頭の中の想像は自分で冷静評価しにくいですが、紙に落とし込まれて物理的に距離を持ってみてみると、自分でアイデアの質を正しく見ることができ始めます。
ただ、通常のアイデアをかく方法は、手描きであれば、文字や絵には個性があり、仲間が見ればそれが誰のものかは色濃く分かります。切り離すという点では少し課題を抱えています。それに対し、このIAMASスタイルはそれをかなりそぎ落とすことができる、という点で、とても優秀なスタイルです。
また、描けない、と思っている人でも、この4つのステップで描けば、描ける、という側面もあるそうです。ここにも私は大きく価値を感じます。「創造のプロセスを歩いていくうえでのハードルをずっと下げる。それは多くの人に、より本格的な創造的な営みに入るための補助となる。いずれ本格化した時には、単純化した技法や手順は窮屈になる。その時はそれを脱げばよい。進みて熟せば脱ぎ捨てられるべきものを、道の入口には用意すべし。」と私は考えるからです。
以上、IAMASスタイルのIdea-sketchの紹介でした。
補足:
このカキカタの考案者は、IAMAS教員のデザイナー、James Gibson氏です。
関連する研究発表もされておられるようです。
http://g-i-f.jp/2011/08/16/405/
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さて、自分で使ってみると、技法というのは要諦がわかります。

ノートの字が汚いのは、小林先生の講演を登壇者席に並んで、ハイスピードでかきとっていたからです。
その対談イベントの夜、実際に、そのノートの余白に書いてみたのですが、あれよあれよと、それっぽくかけました。拡大します。

ルールを無視して、黒くて太いプロッキーを使わずに、細いグレーで周辺輪郭を付け始めたら、汚くなったので、すぐに黒いプロッキーに変えました。左上の方に髭みたいなのが伸びているのはその名残です。
私は立体物を描くなどの作業はほとんどせず、いつも、平たい「人型さん」を書くだけでした。でも、お手本を見ながら同じように描いてみたらかけてしまいました。
それで、今度は私の頭の中にしかない図を書いてみようと試みに描いてみました。

(これは、昔から、講演の時に欲しいなーと、おもっている「ジブンでコントローラー」というアイテム案です。簡単に言えば物理的にボタンを押すコントローラーです。離れたとこにある会場スイッチをオフにしたり、特殊な操作パネルで、とにかく意図したタイミングでクリックだけできればなぁという時に使いたい道具です。部屋にある石油ファンヒーターのスイッチを物理的に遠隔で押したい、という欲求もあります。)
これを描くにあたって、いきなり細ペンを動かすのは難しかったのでBの鉛筆で軽く下書きをしました。形をとるのが鉛筆ならば楽ですから。なおその線は最後に消しました。
ステップを1,2,3とやっていくと、結構、わかりやすいスケッチがかけました。(自分の中では。)
それで、「あっそうだ、ステップ4、グレーで質感を出す」を忘れていた、と思って、書いてみました。実はこの加筆は悪夢の始まりでした。

(な、、、なんだか、右側のは、わかりにくい、、、汚い、、、でも、ペンで一発書きしたから戻せない。。。)
質感を出す、というのは、意外に絵心がない人には難しい作業だと分かりました。私は最近、自分の能力育成のために、「3DSLLの新・絵心教室」で、いろいろ描き方を習い始めました。すこしだけ、絵の理屈、というものを、そのソフトから知りはじめたのですが、今の半端な理解の段階の私が、私なりの技量でグレーを入れたら、汚くなってしまいました。。。たぶん、ソフトの後半にこういうよくある汚くなってしまうことへの対応方法も出てきそうな気もします。
グレーを入れて明暗と質感を出す、という点は、何度か描いて学習する必要がありそうです。でも、今の段階でも、グレーを足さなければ、そこそこ、わかるものがかけるなぁというのが私の感想です。この辺は、このIAMASスタイルのアイデアスケッチを採用されるときに、1つの要諦となる情報かもしれません。
総括していえば、概念を図にして、人に説明する時、このスタイルはとても重宝しそうです。