川柳のための発想ワーク(私案)
全国を回り、アイデアワークショップをしていると、ご縁ができてその後いろんな問いをいただきます。今回は川柳のための発想を促進する方法として何かいい発想法はありませんか?という問いでした。私は川柳、というものの専門家ではないので、ある程度間違っていう可能性も自覚しつつ、私なりに「素人のための川柳づくりのコツ」を探して読み込んで、作ってみました。以下、紹介します。
川柳のための発想ワーク(私案)
1)モチーフを1つ定めます。
例「流星群」でも「帳簿付け」でもいいです。ここでは、「流星群」を選びます。
2)モチーフとした言葉から連想できることを列挙します。マンダラートを使うのもいいでしょう。可能なら、30個挙げます。(10分間で30個、という目標を立てると、頭を使う訓練にもなります。)
例「流星群」→流れ星/星/黄昏/望遠鏡/ダウンジャケット/暖かいお茶/夜中/曇り/恋人/親子/徹夜/クルマの中で/瞬間/瞬き/目の渇き/メガネ/メガネの汚れ/街の灯り/月の灯り/湖畔の灯り/虫の声/野獣の気配/イベント/写真/息が白い/夏草の香り/山に登って/山小屋/視力が大事/特異日
3)これらの中から「シーンが鮮やかに浮かぶ」ものか「人生の悲哀」を醸すものか「日常の小さな幸せ」ものを、選びます。(単語の表現を変えてもいいです。)
例「親子」「息が白い」「暖かいお茶」「視力が大事」「瞬き」
4)つなげて文章にします。
例「流星を見に夜半に親子で庭に出る。子供たちにはいくつかの流星が見えたけれど大人の視力ではよく見えない。しばらく待って寒くなったのでお茶を飲む。湯気が付いた。見えないのでふき取る。流星が良く見えた。”メガネがずいぶん曇っていたんだなぁ”と気が付く。
5)これを、切り取り、5・7・5で文章にします。いくつも作ります。
例「湯気ぬぐい 流星の下 妻見やる」
「仰ぎ見て 眼鏡かがやく 星のよる」
こんな感じがシンプルなステップでしょう。
補足
なお、1)と2)の材料でどれだけ意外な部品を掘り起こせるかが勝負でしょう。そのための発想技法も2つ紹介します。
1)について
「カラーバス」という手法が良いでしょう。
これは、観察の手法でもあります。
そうしたら、起きてから仕事場に着くまでに、
あるいは、寝るまでに、
視界の中に飛び込む「赤いもの」を全てメモしていきます。
ポスト、カバン、車、口紅、書類ケース、パスタ・・・。
予想以上に沢山あることに気が付きます。
それらの中で、川柳のモチーフとして最もおもしろそうなものを
選びます。
2)について
「6観点リスト」という手法が良いでしょう。
これは、発想の方向性を次々変えて、広い視野でものを見る手法です。
さて、30個の連想を書き出す時にこの6観点を通して何か思い浮かぶものがないか、と見てみます。
例
「パスタ」×「人」=若い女性、子供、カップル、イタリア人、洋食ずき、古い喫茶店のマスター(←得意料理がナポリタン)
「パスタ」×「モノ」=白い皿、フォーク、ワインのデキャンタ、テーブルクロス、付け合せのガーリックトースト、パスタ鍋、パスタの乾麺、パスタソース、パスタのトング、ガスレンジ
「パスタ」×「プロセス」=くるくるまく、すする(←悪いマナーだけれど)、シャツに赤いのが跳ねる、彼女を誘う、彼女に作ってみせる、ゆで上がりの湯気、ふきこぼれる鍋、湯をきるざる、ソースをフライパンで絡める
「パスタ」×「取り巻くもの」=レストラン、タベルナ、洋食屋、ステーキ屋(付け合せ)、学食、明治屋、紀伊国屋、しゃれたマダムのショッピングセンター、しゃれた食器屋
「パスタ」×「意味価値」=しゃれている、手軽、洋風
「パスタ」×「五感で感じるもの」=赤い、白い、楽しい会話(おしゃべり)、にんにくの香り、あめ色のたまねぎのコク、オリーブオイルの香り、バジルソースの鮮烈なよい青臭さ、ソースをつくるいい香り、カチカチの乾麺、アルデンテの食感、洋食器の手触り、子供の笑顔、満腹でおなかが苦しい
こうして引き出すと、「パスタ」というモチーフから相当量の連想要素が引き出せます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
以上です。
川柳づくりの所作をプロの人を観察して、その本質を抽出して、発想要素を構造化してつくれば、もっといいものができるかもしれませんが、ご質問から2時間で、「取り急ぎ」書いてみるとしたら、こんな感じになります。そんな私の展開の一つの開示として、紹介してみました。