ブレストの実際(3)なぜ他の人へ便乗なのか。
ブレストのルールは4つあります。本格的なブレストをするとなぜルールがそうなっているのかが、分かる瞬間があります。そのほかの文献で言及されていることも含めて、4回シリーズでご紹介しています。第3回目。
他人のアイデアに便乗しよう
ブレストがチームで行う作業であることの最大効能が、実はこれです。誰かが出したアイデア、それを思いっきり活用してアイデアを創出しましょう。誰かが行ったアイデアが「お!それ、あたらしい」とか「おおお、その切り口って結構いけるんじゃない?」という、ぴぴぴっという直感にふれることがありますね。そういうときに、「彼の出したアイデアを利用するようできがひける」とか「それ、さらにひねってこう変えたらどうかな。でも、オリジナルの発案者が気分を害するかも」と思っても、それは、ブレストでは気にせず迷わずアイデアを出します。ブレストではテーブルの上に乗るアイデアは私のものでも彼ものでもありません、私たちのアイデアです。私たちのアイデアを私たちがさらに面白くして行くことになんの遠慮も要らない。そういう意識の持って行き方が、じつはチームのシナジを引き出すのには重要。
アイデアは、芽の出た頭から、別の頭へ移したほうがよく育つ。
この言葉は、ある本に書かれている言葉です。(出典確認中。)。人間の創造性の面白いところです。オリジナルの発案者はその能力はすばらしい。でも、その人のアイデアを、ほか視点を持った頭に移してやると、二段ロケットのように、もっと魅力度やひねりが育つことがあります。

ブレストはお互いの生んだアイデアを自分の頭のなかで、ひょいひょいっともっと面白くしていく作業。そのひょいひょいっといじったアイデア、もしかしたら、オリジナルの発言者の意図を誤解してそのベースで発展させているかもしれません。でも、それでもいいんです。分析会議ではそういうわけには行きませんが、誤解が生み出す新しい発想の芽だって、それも新しいアイデアです。往々にして、アイデアマンの発言は破れかぶれのピンポイントコメントです。みんながおもしろい!と感じたようなのでどう面白いと思ったか聞いてみるとそれが全員違った意味で面白いと思っていた、なんてこともよくあります。そしたら全人員分だけ、新しいアイデア。誤解、いい間違い、それも、新しいアイデアの材料でOKです。
この便乗によるアイデアジャンプは、本質的に、他の人の頭脳を使うことがもたら効果です。一人アイデア出しと、チームでのアイデア出し活動の大きな違い。(”質より量””荒唐無稽を歓迎”の2つのルールは自分の意識をそう仕向け効果があるので、一人アイデア出しのときでも有効。もちろん、チームで行ったほうが、より効果的ですが。)
ブレストを観察しているとこういうことが起きます。荒唐無稽なアイデアを誰かが言う。それを聞いて、そのエッセンスだけをうまく利用して、ブレークスルーするアイデアをだす。そんなことが、大なり小なり見られます。実は荒唐無稽、突飛なアイデアを出す人が大切なのは、それがチームのメンバーのほかの頭の中で大きく育つ最初の芽になる可能性があるからです。収束フェーズでは比較的そういう人がいると困ることも多々あるのでメンバーはマネジメントするべきですが、発散フェーズではほかの人のあまたに移植するための突飛な逸材が、実は、すごく貢献しています。
上記のようなノウハウはともかく、忘れてもいいので、実際のブレスト場合には、「誰かの出したアイデアは、ブレストにおいてはチームの共有財産。私のアイデア、彼のアイデア、という意識を持たずに、私たちのアイデア、と考えよう。誰かのアイデアを思いっきりひねったり、逆にしてみたり。オリジナルの発言を誤解して発案したってそれもOK。机の上にのっかる魅力的なアイデアのパーツをいじりまわしてゆこう。」というセリフをいえるほうが重要です。ブレストのチームリーダが意識の持って行きかたを成功させられると、このシナジーが生まれます。あまりうまくいかないときには、このシナジーが生まれていないことが多いようです。”メンバーの意識の持って行き方”が実は創造的組織をリードする人の重要な仕事です。