発散過程と収束過程があるプロセス。
MOT(マネージメント・オブ・テクノロジー:技術経営)には、新事業創造のマネジメントという側面と、研究開発マネジメントという側面があります。
研究開発マネジメント、というと、MBAや文系出身の経営者には、ひとくくりに考えがちな対象ですが、実は、研究マネジメントと開発マネジメントは、大きくマネジメントの性質が異なります。
研究フェーズは、いわば、発散プロセスです。
開発フェーズは、いわば、収束プロセスです。

発散する「研究フェーズ」では、ある種のコア技術や既存の蓄積を元に、多様な可能性をつむぎ出します。多面的な研究テーマが生じて、分化して発展。副産物としての研究テーマの登場もうけとめていく。可能性があれば、研究の方向性が拡がることも、受け入れる。
予算があるので、無制限には出来ないけれど、大まかな方向性に大外れでない限りは、多様性の中に見つけうる「当り」をもとめて、寛容にマネジメントします。
収束する「開発フェーズ」では、製品化という目標に向けて、一気に絞り込んでいきます。ステージゲートモデルなどでいえば、ある一定期間に一定の予算、一定の成果品質を出していかなければ、そのテーマは刈り込まれることになります。基本的には、目標テーマへのたたみこみが、大前提。プロジェクト同士を融合させたり、ドライにKillすることもあります。
目標に絞り込むフェーズは、かなりシビアなマネジメントです。”実際の商品にする”というゴールに向けて、あいまいなままの存在では、商品化しようがありません。「具体化」するために走り続け、そぎ続けます。
この発散と収束のプロセス。
多くの社会現象に、見られます。
たとえば、アイデア出しとその後のアイデアの収束作業。そもそも、アイデア出しのプロセスは、R&Dのプロセスと基本的には一致するものなのかもしれませんね。
取材、という作業もこれに似ています。沢山の情報のユニットを集めていって、最終的な報告や論文は、それらの中から本当に切り詰めた本質部分で、完成文として表現されます。
営業戦略を立案しよう、というときもそうですね。拡げてから絞る。
発散と収束、という本質的な構造がもたらすものを自然と使っていますが、そのプロセスを科学する、ということはまだまだ充分でないように感じます。MOTの分野が一番その点について「学問の光」を当てているように感じます。
アイデア出しの分野では、ブレインストーミングの4つのルールなどが、発散マネジメントのよいツールになっていると思います。一方で、効果的に収束させることについても、望む声が少なくありません。