カード化の効用
あるコンソーシアムに参加したときのことです。興味深い事例が次々出されたのですが、ブレスター開発者の視点で注目した話がありました。
ある講演者の方が、組織の構成員メンバーとともに発想を拡げるゲームをされているお話をされました。初めにカード(そこには予測された先端技術が書かれている)を引かせて自分の戦略の材料にさせている、という点です。
それから足りないカードは、自分で生成してもいい、という点がさらに面白い点でした。
このカード化されたケースは私に様々なヒントを与えてくれました。
ヒント1
たとえば、未来予測の資料として、技術版であれば経済産業省のロードマップがあります。社会全般についてであれば、生活総研の未来年表があります。これらはどれも優れていてそこには未来を見越した戦略を立案するためにヒントとなる情報があふれています。それは誰もがアクセスできるWEBに公開されています。しかし一部の人が利用するにとどまっています。ロードマップについては冊子も発行されています。WEBにアクセスすることなく情報が閲覧できます。しかし、それが有効に活用されているのは一部のようです。私も内部でアイデア出しをする際に利用しています。参加者に、印刷した参考資料を発想の材料として閲覧してもらうことがあるのですが、余り有効には効果を発揮していません。これらが、カードであったらどうだろう、と思いました。
2013年
○○が
□□に
なる。
あるいは
2018年
○○技術が
実用化され
□□な課題に
対応できる。
といったシンプルなカードがあってそれらをさささとめくるならば、大分違うでしょう。
ヒント2
ブレスターの母艦となるアイデアボードを開発していたとき(一年前)のことです。ブレスターの発想トリガーカードであるTOIカードには、もともと英語の48の問いかけリストが存在していました。初めはそれを翻訳し、リストにしました。そしてそれを使って発想していました。しかし、どうも全部を試すのは時間がかかるし集中力が保てない。なにせ48もありますから。それから、どこまで見たか分からなくなります、途中で発想作業が深まり始めると。そこでカード型にしたいとおもいました。なぜそう感じたのかは正確には思い出せません。しかし、カードにしてみました。極簡単なものです。ラベルにその問いかけフレーズを印刷して、それを100円ショップのトランプに張りました。たったそれだけ。そしてそれを使って発想をしてみました。するとハッとしました。「出会い頭の発想トリガー効果」とでもいうべきか、あるいは、「視界に入るものが単一な状態の印象効果」とでもいうべきものがありました。
簡単に言えば、「本のページに書き連ねられた文章」を変えて「一ページに一行しか書かない本」にしたような感覚です。本をめくって、ぱっと開いて、たった一行”○○がただ好きだった”と書いてあったら、ハッとしませんか。たまに本の一ページ目に、そういう表現をみかけます。あれです。
カードに戻りますが、一カードに2文ずつ乗せてみたものもあるのですが、格段に「発想トリガー効果」が無いんですね。まず読み取り2つの文があることを理解する。それから一つずつ、発想にヒントとなるか考えてみる。そんな作業になります。これが一文だと、見た瞬間に「発想のヒント」として目に飛び込んできます。このちょっとした差はインスピレーションにとってとても重要のようだ、と感じました。
ヒント3
情報に、感触の記憶を持たせる。ということ。情報を得たときに、それを体感記憶として残せるとそれが右脳的(図形的、イメージ的)なものとして残る気がします。例です。あるブロックをかってみた。すごくかどのアールがきれいにでている。さわるとつるつるで、手の暖かさが直ぐに伝わる。写り込む蛍光灯の光の列。そんなものを体感したときに覚えている記憶。一方それがない記憶、例えばビデオで見せられたもの、写真や文字説明など。それらの間には大きな認知上の差がありそうです。カード化した情報には「感触」があります。カードの角を無意識のうちにしごき、ぴちぴちはじいたりして、手の持つぬくもりや紙の曲げなどを手になじませます。そうした手でもって触れること(タンジブル)なことは、情報をより馴染み深い記憶にとどめる、野ではないかと思います。
ヒント4
『アイデア会議』にでてくることに「アイデアを紙に書く」ということがあります。発言者とアイデアを切り離し客観的に評価、選択できやすくする効果があると。これはとても重要だと思います。それでそれは、カード化の効用と一部関係がありそうです。
カード化がもたらす効能は、昔から人々が気がついていたものがあるだろうとおもいます。発想トリガーとして私なりに気付きを書いてみました。これについてはもう少し掘り下げて考えてみたいと思います。