ものがたりを作る「魔法のつづら」
娘に「お話を新しく作ってあげるから、一つお話を教えて」といったところ、したきり雀をはなしてくれました。
・けがをした雀
・お爺さんが治療をしてあげる
・治る
・お腹が減って、台所の糊を食べる
・おばあさんは怒って、舌を切る
・雀は逃げる
・おじいさんは探しに出る
・スズメのうちに案内される。
・ごちそうを踊りでもてなされる
・帰りにお土産を差し出される。
・お爺さんは、もう年寄りだから、といって、小さいつづらを選ぶ。
・うちについてあけると財宝が入っている。
・お婆さんは、のりこんでいって、大きいつづらをもらいに行く。
・帰りに開けてはいけないといわれたが明けてしまう。
・お化けや蛇などがでてきて命からがら自宅に帰る。
この話、桃太郎とは、大きく違うんですね。ものがたり作りの基本構造でみると、日本昔話は、わりと、特殊なスタイルとなっています。教訓を前面にして、モノガタリとしてのスタイルが特殊に加工されています。
でも、それをもとに、雀の視点を中心にして、お話を作ってみました。
「魔法のつづら」(新・したきり雀)
その雀の家には、代々伝わる魔法のつづら、がありました。
おとうさん雀がいいます。
「神様が教えてくれたこのおり方でつづらを毎年一つ、作らねばならん」
「不思議なことに、このつづら、なんにも入っていなかったはずなのに、人間があけると中から何か出てくるという」
雀は「ふ~ん、そうか」といってお手伝いしていました。
雀はあるとき、遊びに行って犬に襲われます。それをお爺さんがたすけてくれました。治療のおかげで飛べるようになりました。帰ろうと思っていると、食べ物のいいにおい。お婆さんの作った糊を思わず食べてしまいました。お婆さんにはとても大事なものだったので、かんかんに怒りました。舌を切られて、いてて、とおもい、逃げて帰りした。
あくる日、お爺さんが心配して探しに来てくれました。お礼を言って、うちでごちそうと踊りを披露しました。
おじいさんが帰るというので、魔法のつづらを挙げることにしました。
おじいさんは「これを作るのは大変だっただろう。わしが大きいのをとったら創るのが大変じゃな。」といって、一番小さいのをえらびました。
そしてお爺さんにいました「神様が、このつづらには人間にとって大事なものがはいっている。うちに着くまで、できるだけ、あけないこと、と言っていたそうです」と。
おじいさんは、きちんとその言葉を守りうちまで持って帰りました。
雀とお父さん雀は「今頃、お爺さんにとっていいものが、はいっていてよろこんでくれているといいな」といっていました。
翌日、お婆さんが家にやってきました。そして、つづらをくれ、といいます。
雀は「お婆さんの大事な糊を食べてしまった。お婆さんは怒って舌をきったけれど、悪い人ではないかもしれない。僕が悪さをしなければ…」と考えて、希望通り、つづらをあげることにしました。
お婆さんは、一番大きくて、立派なつづらを選びました。
大きいのでお婆さんは、何とか抱えて、ふらふらしながら歩き出しました。
そして雀は「うちに帰るまで、できるだけ、あけてはいけません」といいました。
お婆さんの足取りが不確かだったので、心配になった雀は、ついていくことにしました。
すると、重たいつづらをもったお婆さんが、山を降りる前にすっかり日が暮れてしまいました。
遠くの草むらから、狼たちがちかづいてきました。そしてお婆さんの周りをぐるぐると囲みました。
雀は飛び上って逃げられますが、お婆さんは逃げられません。つづらを置いて、震えています。
そして狼たちが一斉に、お婆さんに飛びかかりました。
お婆さんは、つづらの陰に隠れるように身を小さくしました。
すると、一匹の狼が、つづらのふたにぶつかり、『ごとり…』とふたがはずれました。
すると中からが黒い煙が立ち上ったかと思うと、龍になり、激しい咆哮を放ち、ひるんだ狼たちを一瞬で飲み込んでしまいました。
そしてまた黒い煙とともに、つづらの中に戻って行きました。
お婆さんは、ガタガタ震えて「こんな恐ろしいつづらはいらん」といって命からがら、家まで走って帰りました。
雀たちはつづらを持ってかえりました。
そして、次の年も「とんとことん、とんとことん、雀のつづらだ、とんとことん」といって、魔法のつづらを作り続けました。
でも、時々、大きなつづらの中から、「ウォーン」という咆哮がきこえて、ちょっと怖い気がしましたが、気にしないことにしました。
おしまい。
(娘の拍手で終わり)
今度はつづらをあげる側の雀たちの世界で話をつくってみました。お婆さんが必ずしもわるものではなく、雀たちは好意であげることにします。しかし、持ちきれない大きさのつづらを選ぶことで、足が遅くなり、結果、狼に襲われるという不幸を招きます。
つづらをあけてしまうのは狼で、狼たちはその中から出てきた龍にたべらえてしまいます。お婆さんは、命からがら逃げて帰りますが、元の話では、罰を受けたスタイルなのに対して、この話では、つづらのおかげで命拾いする、というスタイルにしてあります。人間にとって財宝よりも大事なもの(=命)がお婆さんに差し上げたつづらに入っていた宝だという暗喩です。
雀たちは、善人悪人なく、つづらをあげますが、もらった人間たちのココロ次第でそれは、異なるものを見せる、という仕掛けがはいっている、と考えました。
というのも、娘と元の話を話していて、
元の話そのものに、いくつかの疑問があったからです。
(1)お婆さんが家までつづらをあけなかったら、出てきたものはおばけだったのだろうか。もしそうなら、善人のお爺さんまで、被害を受けることになった。それでいいのだろうか。
(2)本当に悪いのは、お婆さんなのだろうか。糊を黙って食べた雀なのだろか(娘は、両方が悪かった、と解釈していました)。ならば、雀はお婆さんを悪い人ときめつけて、悪いつづらをあげるのではなく、本人次第で中身の変わるものをあげるのが自然なのではないだろうか。
(3)化け物とかヘビがでてくる(そして、命は助かるという)のは、別の意味があったのではないだろうか。
これを統合して、「魔法のつづら」を作りました。
娘にいわれるまで、したきり雀の話を思い出せませんでしたが、教えてもらって、それの世界観をもとに、話しが作られていて、とても娘は興味深そうでした。
物事を多面的に見る、別の角度から見る、ということにつながるといいなぁと思います。