判断力はアイデアを殺すことがある
オズボーンの書いた本で、現在も手に入る復刻版の本『創造力を生かす』に興味深い記述があります。
同書P89~96の第12章「判断力はアイディアを殺すことがある」から、一部抜粋します。
□以下、引用□―――――――――――――
※忠実な引用文ですが【 】と<<>>は石井による加筆文章です。
引用の順番は、意味の構造化のために出典での順番とは変えてあります。
【人間の心理特性】
・無過失をありがたがる心理
・批判を早く出しすぎるという傾向が、判断力を創造的な努力の障害にしている
・人間の判断力はどうしても偏見を避けることが難しい
<<無過失をありたがる心理→判断を早く出しすぎ→創造的な努力の障害>>
【創造の特性】
・創造的思索は肯定的態度を必要とする。
・創造的な成功は通常、案出した数に正比例する
・アイディアを試験していく過程で新しいアイディアが生まれることもある
<<創造的思索と成功には肯定的態度と数をたくさん出すことがが必要>>
【創造のブレーキ】
・既成概念は新しい考えを受け入れる際の障害となる
・世界の進歩においても、判断力は一般道理という形で科学的前進を阻止することがある
・判断力が働きすぎると創造精神は硬化してしまう
・あまりに旺盛な判断力は、人間の持って生れたイマジネーションを枯らしてしまうことになる
・判断力があまりに早く水をさすと、イマジネーションは試案を考え出す努力をさっさとやめてしまう
<<既成概念・一般道理は、新しい考えの需要・科学的前進の阻止も。
判断力が早すぎる(働きすぎる)と、
持って生れた創造の力は、アイデアを出す努力をさっさとやめてしまう(硬化、枯れる)>>
【創造と批判】
・創造的努力に比べれば批判的努力ははるかに簡単で、たいした苦労もなく是非に到達できる
・批判精神と創造精神も折り合いが悪い。だからよく調整しないと、すぐにお互いの邪魔をするようになる
・判断力とイマジネーションは適切な距離をおいておけばお互いを助け合う
<<批判の方が創造より努力するのが簡単である
批判・判断と創造は適切な距離を置いておけばお互いを助け合う>>
【心がけるべきこと:創造】
・肯定的態度は「創造的な人々の特色である」と言う。「”イエス”に反応して新しいアイディアを形づくる習慣をつけよ。まず、それがよい理由を考えるのだ」
・創造力の問題においては特にイマジネーションを判断力に優先させて、対象のまわりを徘徊させること
・可能な限りもっとも奔放なアイディアを思いつく努力をしなければならない
<<創造においては、イマジネーションを判断力に優先させよ。
肯定し、新しいアイデアを形作れ
奔放なアイデアを思いつく努力をせよ>>
【心がけるべきこと:判断】
・われわれはすべて「正しい時に賢明に判断せよ」を肝に銘じておくべき
・ちょっとでも失敗はないかという完全主義は排斥しなければならない
・判断力に創造力の邪魔をさせないようにするには、すべての可能なアイディアが得られるまで、判断を遅らせること
・創造的な努力においてはアイディアの最終選択に至らないうちはアイディアの価値を評価する必要はない
<<判断は、正しい時に使え。
ちょっとでも失敗をしないという完ぺき主義は排斥せよ。
すべてのアイデアがえれれるまで判断を遅らせよ
アイデアの最終選択にいたならないうちは、アイデアの価値は評価しなくてよい>>
【その他】
・「これはどこが間違っているか?」「あれの欠点は何か?」「いや、これはだめだろう」などの反射作用は判断する際には望ましい。否定的態度は「ほんとうに間違いないだろうか」「これは新しすぎるから注意しなければ」というような警戒心にとっては必要である
・決定を下す際には、意見を聞くより試験してみることが望ましい
・意見はたとえ専門家のものでも、間違うことが多い。近年の大きな進歩の所産である試験技術のほうが、ずっと頼りがいがある
・アイディアが試験されないで個人の判断に一任されると、弁舌の立つ者が他を圧倒して、良いものをみすみす没にしてしまうことになりやすい
・題名も試験できる…(中略)…提案のうちから、よさそうなのを幾つか採り、観客の反応を調査する…(中略)…科学的に煮詰めて最終判断を導く…(中略)…どんな人間の判断より的確である…(中略)…「大衆ほどよく知るものはない」
・もし試験が不可能で誰かの判断に頼らなければならない時は、…(中略)…創造力を弱らせるような批評をさせてはならない。
・もし彼の下した判断が間違っていると確信したら、再び創造力を忙しく働かせて、もっとたくさん試案を出そう。しかし、もし確信できなければ、”警報なんかクソ食らえ””全力前進”だ。
<<コメント:略>>
――――――――――――□引用ここまで□
このあたりの記述は本当に重要です。ブレインストーミングの開発者であるオズボーンが何を思って、あのルールを作ったのか。とくに、一番重要な「判断を遅延しよう」(日本では、批判禁止、と訳されがち。その原義は、判断遅延)を提示したのか。
しばしこれについて、整理して、意味の階層性を探りたいと思っています。