マーケティング限界とその先の機会の発見手法としてのビジネス・エスノグラフィー
ビジネス・エスノグラフィーの研修が、先日、最終日を迎えて無事終了しました。感想を述べてみます。
一言で言うと「付加価値の主張なトレンドとなりつつある”感性価値”の高い商品企画に、非常に役立つ実践的手法」だとおもいました。
すこし、3Cに分解して述べてみたいと思います。
1.【コンペチター】現代のような熟成社会では、未充足ニーズの具現化による商品開発は、差別化要因になりにくいですね。業界のライバルとニーズを読み取る視力が同じ程度であれば、わずかな期間の先行者利益をとりあい、どんな開発品も非常に短い時間で腐化します。
2.【カスタマー】物質が豊かになった現代においては、消費者は、機能、品質面で商品が優れていることは「当り前品質」です。ほしい、という気持ちをつよく感じさせる「感動するもの」が望まれています。未充足なニーズは、変化してくく社会で依然として日々生まれています。しかし、それを埋めてくれる程度では、さほどの感動がなく、手にした瞬間からしばらくは「ああ、便利」思うだけで、すぐにそれは当り前に。一方で消費者には「自分すら分かっていない潜在的ニーズ」があります。これはマーケティング調査やグループインタビューでも、本人が説明できないため、見出すことは難しいです。もし、それを埋める具現物があった場合は、顧客には感動する商品やあたらしい経験となります。
3.【カンパニー】経営戦略にきちんと配慮して成長してきた企業の場合、開発会議において、アンケート調査など定量分析データをもちいて開発プロジェクトの軌道修正やKillをきめます。問題は、マーケティングが万能ではない、という点です。過去は大規模調査の成り立つものが、市場化できるものであり、十分な大きさでした。マーケティング手法では、センシングできないものがある、ということは、これまで「科学的管理手法」にはあわない、として無視してきました。
定量調査がきかない、マーケティング手法では扱えないものとはなにか。それについてマーケティングのプロの方とディスカッションしたことがあります。詳しくは省きますが、ポイントとなるのはこうでした。先進的な企業の考え方として興味深いものがあります。「あっても、言葉で説明ことができないニーズ」「自分自身がニーズの存在に気がつかない潜在的なニーズ(プロトタイプを手にとってみてはじめて、ああ、自分はずいぶん、不満があったんだ、と気がつくニーズ)」が、人にはある、ということです。(例:IDEOの本の中ではショッピングカードの設計をするくだりがありますが、彼らは、ラピッドプロトタイピングを行って、スーパーの顧客が”たとえ聞いても答えられなかっただろう”不満をもっていて、それを解消するカートを提案し、早急に試作しました)
マーケティングのきくものは、コモディティー化が激しく、消費者もそれにはすぐに飽きてしまう。大規模マーケティング調査が効かないニーズが、付加価値の主なトレンドとなりはじめたら、自社の開発活動では、いったいなにをすればいいのか。
これらの1.2.3.をかんがみると、ビジネスエスノグラフィーは、そこに答えを与えるものになりそうです。もちろん、この手法が唯一無二である、というわけではなく、マーケティングの効かないところから潜在ニーズを引き出す手法の一つ、というべきでしょうけれど。
潜在的ニーズを、明示的に把握し、材料として使うために「エクストリームユーザ観察」というのは、実効性の高いすぐれたアイデアです。しかし、エクスリームユーザの観察だけが、潜在ニーズの把握方法とはいいきれず、ペルソナを用いた手法を高度に発展されば、把握できる可能性があるかもしれません。いくつかきっとある中でも、ビジネスエスノは、実効性に優れている、という点が今後も評価はされるだろうと思います。
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