概念をタンジブルなモノにしてみよう。
概念とは何でしょう。
例えば子供に「がいねんってなに」といわれたら、”ほら、これが概念だよ”と手にとって見せることはできません。
辞書には、こうあります。
がいねん 【概念】
(1)ある事物の概括的な意味内容。
(2)事物が思考によって捉えられたり表現される時の思考内容や表象、またその言語表現(名辞)の意味内容。
(ア)形式論理学では、個々の事物の抽象によって把握される一般的性質を指し、内包(意味内容)と外延(事物の集合)から構成される。
(イ)経験論・心理学では、経験されたさまざまな観念内容を抽象化して概括する表象。
(ウ)合理論・観念論では、人間の経験から独立した概念(先天的概念・イデアなど)の存在を認め、これによって初めて個別的経験も成り立つとする。
三省堂提供「大辞林 第二版」より抜粋・一部加工
つまり、具体的なモノをいくつもみていって、個体の違いはあったとしても、共通する一般的な性質、を概念、と呼ぶようです。犬という概念は、犬にはいろんな犬種も大きさもあるけれど、それらは犬特有の一定の共通点があります。これくらいはまだいいですが、もっと複雑な概念、自分にとってなじみのない概念に、生きているといっぱい出会います。特に「なじみのない複雑な操作や処理」などは習い始めるまでは、頭の中の認知が四苦八苦しているのを感じます。これらについては、たぶん、許容できる既存の概念要素(小さくシンプルな概念)を組み合わせて、それらを再現して繰り返し考えることでそれらに習熟し、次第にそれを一つの概念要素として、受け取りハンドリングできるようになるのだと思います。
さて、複雑な概念をつかってさらに知的な作業をするときには、それをタンジブルなモノにしてみよう、という一つのヒントがあります。一番お勧めなのは、名刺カードに、その概念を”乗せる”ことです。
人間の頭はどうやら「覚え、保持する」と「考え、作る」の2つが一つの能力領域をシェアしているようです。覚えておかないといけないことが多いと、それだけ「考え、作る」ことを少ない能力で行わないといけなくなります。
発想の仕事をしていると、発想に役立つ新しい概念を得た学習者が、一時むしろ発想量が落ち込むように見て感じます。ブレインストーミングやTRIZのように、十分に使える人には有効だけれども、初心者には正確に実施するのが難しい方法があります。それでも懲りずにずっと使っていると次第に習熟し概念要素化して、頭がゆっくりできます。発想が効果的に広がるようになります。
このように時間がかかるのが我慢できなくて、難しいと脱落してしまう人が多いです。新しい学習をするときに、「効果を発揮するまでに訓練が必要だ」というセリフをよく聞きますが、それは、一部にはこういうことがあると思います。
そこで提案、なのですが、自分にとっての新しい概念をつかった知的作業を行うときには、思考力の高負荷となる「新しい概念」をタンジブル(手にとってぐりぐり動かせる)モノにしてみよう、ということです。
かならずなんにでも効くとは限りません。しかし発想法などの分野で、「慣れるまで逆に出せなくなる」ことが感じられた場合などには、この提案はとても相性がいいと思います。
ある種の概念ごとに、ファイルを3分類する、という場合、その概念が自分になじみのないものだと、だんだん、振り分ける資料の理解が頭に残って分類のかなめとなる概念を間違って復唱してしまうことがあります。(5個くらいでは起きませんが、30個40個と分類していると、次第に振り分け基準となる概念が、読み込んだ資料に汚染される経験、ありますよね。)
そういうときには、ファイルの表に、3分類の概念をラベルに端的に表現しておく、それだけで格段に、やりやすさが変わります。それまでは、概念上一番アレなのは赤いフォルダに入れて、えーと…、とやっていたが、一気に資料の読み込みに集中できます。作業は正確で速くなります。PCでいうシングルタスク化した感じ。
私はカードツールを作ることが多いのですが、それも非常に効果的です。あとはレシートの分類のときに、8つの大判のシートを作って、8つの島に投げ込んでいきます。これも早いですね。直感的に作業ができると速くなります。
法則、といえるものはまだないのですが、概念をタンジブルなものにする、というのは重要な一つのヒントになりそうです。