TRIZの発明原理を、観察の視点に使ってみます
先のエントリーの「ダブルス ピン(互いに刺し合う画鋲)」や「プニョプニョピン(シリコンぽいリングで針がカバーされた画鋲)」には、TRIZの発明原理の示唆するものと類似するものを結構感じます。発明原理の意訳である智慧カードのフレーズですこし、考えてみます。
「ダブルス ピン」の場合
さっと智慧カード40枚をめくってみると、次のカードが引き出せました。

34:出なくさせるか出たものを戻させよ
すこし、このピンの概念とは違うかもしれませんが、使わない時に、画鋲の針を画鋲の内部に戻させる、という概念を思いついた時に、自身の内部に戻すのはとても複雑ですが、画鋲同士で、ならば、こんな解決方法もあるんだなぁと思います。
22:よくない状況から何かを引き出し利用せよ
使わない時にも針が出ている、という状況を利用して、それを互いを組み合わせるパーツとして利用しています。
4:バランスを崩させよ
画鋲は大抵、押しやすさのためか、柄の部分の中心に針が配置させています。しかしこのピンは違います。中心からずらしたところに配置する。それによって2個を刺し違えるように、組み合わせられるようにしています。多少、さしにくさ、という犠牲はありますが、それを許容すれば、こんなに別の可能性がある、というのは示唆深いですね。
(ちなみに、製品のフォルム、非対称性が上がっていく、というのはTRIZの技術の進化トレンドとしても知られています。大抵は人間の身体が持つ非対称フォルムにマッチするように、が、発展のドライブフォースになっているのですが)
13:逆にせよ
画鋲という道具はみな、同じ向きにむけます。壁側、ですね。しかし、このピンは、2つのピンを逆向きにして収納します。また、一般に、画鋲とはさすものであって、刺されるものではない、わけですが、このピンは、「刺されるもの」にもしています。切るものを、切られるものにもする。撮るものを撮れられるものにもする。という切り口には、まだまだ、道具の改良を感じさせてくれそうです。刀のさやと刀を逆にしたら、おもしろい物ができたりしそうです。
7:内部に入り込ませよ
お互いの中に、針を入りこませることで、安全な形を実現しています。形の工夫の上で、基本的な概念です。
5:2つをあわせよ
使っていない時の画鋲があぶない。そのため、針にカバーをつけよう、というのは、わりと初期段階で思いつく発想です。しかし大抵は付けるのが面倒になったり、なくしたりしそうです。この「画鋲」と「画鋲の針のカバー」という2つを合わせたら?と考えることでも、この形状は発想に至りえるかもしません。消しゴムと鉛筆で消しゴム付き鉛筆、というのは、発想のパターンとしてよくいわれますが、それと本質は似ています。電池を使うデバイスと、発電する装置をくっつける、なていうのは、未来社会では比較的ポピュラーなアイデアになるんでしょうね。(長い脱線:2009年の今は、あまり実現性がありませんが、3つの条件が達成されればきっと、実現するでしょう。(1)エネルギー効率の改善で、充電は一カ月に1度程度でいいほどになる。(2)発電装置の効率の大幅な改善。生物の肉体が発生するエネルギーを効率よく発電にするには、適したメカニズムがあるはずで、それがいずれ民生品になる。(3)電池の超小型化。靴の裏に入れておけば歩けば充電完了するマイクロ発電ユニット内蔵ボタン電池、のようなもの。)
26:同じものを作れ
上記のように非対称にしたら、パーツが増えそうですが、このアイテムのように同じもので対応できている、というのは、生産コストの面でもつよいですね。この「同じものを作る」は、装置の複雑さを改善するなどの良い効果もあります。
これらのカードは、ちなみにこうやって取り出しました。
1.ダブルス ピンをあれこれいじって、「へー」「なるほど、こう工夫されているのか」「この切り口、使えそう」といった感想をひとしきり、好きなように感じます。
2.智慧カード40枚を左手に持って、右手でさっさっさっとよりわけます。要るカードは右に、要らないカードは左に。迷ったら真ん中に。
3.迷ったカードをよりわける。
直感的に選ぶだけでいいので大体、慣れた人だと2分ぐらいで、選り分けらそうです。(このブログのように、思考内容を、具体的に展開するなら、そのための時間は当然別途かかります。このブログを書くのに、大体1時間ぐらいかけています。いろいろ考察していますからね。でももっと、恣意的に直感的なメモを書き出してもいいです。
「プニョプニョピン」の場合
さっと智慧カード40枚をめくってみると、次のカードが引き出せました。

こちらについては、紙面の都合で(いえ、単に筆者の都合ですが)で、示唆コメントは割愛します。よかったら、およせください。