TRIZ 賢い小人(SLP)という思考ツール
SPL、というアイデアの技法があります。TRIZの中にある技法の一つです。
他のTRIZ技法と大きく違うのは「発想の具体的なコンテンツが無い(乏しい)」ということです。TRIZは「発明原理」にしろ「進化トレンド」にしろ「発明標準解」にしろ、発想のための手がかりを具体的なコンテンツとしてもっています。他の発想技法にはない、強力な特徴です。
このSLPは、そうしたTRIZの中では異色で、普通の発想技法にちかい「考え方」の発想法です。
ヒトコトで表現しますとこう無ります。
SLP(スマート・リトル・ピープル)
「構成する部品の粒子を
自律的に行動する小人集団に
置き換えることで、
発想を促進する手法」
なお、この手法を使うと最終的には、物体の表面の微細形状を加工する案や、素材や物体の中に機能性のある構造を付与するという案や、要諦と無る部分に物理的な可動パーツを考案する案に、なる(出せる)ことが多いです。
よく例題に出てくるのはこうです。
気体が流れる配管。配管が太くなる部分(テーパー部分)では、圧力損失が起こる。それをできるだけ抑えたい。そうすると、テーパー部分は長く取らないといけない。コンパクトにしつつも圧力損失をおさえる形状をかんがえたい。そんなシーンが登場します。
この時に、思考力をSLPがたかめます。たとえば、流体力学のことを多少は知っていて、しかし、配管の特殊な知識が無い、という知的ワーカーたちでこれを検討すると専門家の出す答えに近い水準のアイデアをだすことがあります。ブレストをひたすら繰り返し、と良うところに、SLPの考え方を入れると、その速度を早くすることができます。
具体的にはSLPは、次のように発想します。
ステップ1
・粒子レベルを小人に置き換える。
↓
・つま先立ち、しゃがむ、ジャンプ、掴む、腕を組み合う
という行動をとれる、とする。
・近い小人とは同じ行動をしようとする。
・槍、盾、ジェット、等のアイテムを持った
小人集団を想定してもいい。
↓
・システムにおいて不変の部分は、小人にしない。
・良い状態にする為に、新たに小人を配置できる。
・その場合は不変部分を削るなどの方策をとっても良い。
ステップ2
・小人集団で現在の状況
(問題を抱えた状況)を再現する。
・その上で、それが減るように
小人に、別の行動をさせようとする。
・大抵は、状況がそれを許さない。
それがなんであるかを良く見ておく。
ステップ3
・新たに役割を果たす小人を配置したり、
行動を変更させるように不変部分の
形状を変更したりする。
・その結果、小人の動きが望ましく
変わることがシュミレートできれば、
それを、機能性素材や
表面加工・内部加工のなされた
部材で、置き換えていく。
ポイント
改良事例のわかっているものを
練習課題としてこの方法を
おこなって見ると発想の勘所がわかる。
つかめてきたら、
擬人化規則には厳密にこだわらずに
良い発想が出やすいように
独自化していくと良い。(ようです)
何人かの発想事例を観察してわかったこと:
物体の擬人化を通じた発想方法は、
向く人とそうでない人がいる模様。
ものが自動で動くことは、合理的はない、という判断思考が
効き過ぎる人には、
小人で一度、新しいメカニズムを集団行動から想像し、
そのうえでエンジニアリングパーツで置き換えていく
という方は、考えやすい、らしい。
一方で、物体の自動改善の像を結実する想像力の高い人に
とっては、SLPは、普段していることの、亜流に過ぎないため
かえって、手間のかかる分だけ、発想しにくい模様。