うさぎ経済モデル。

「人々の経済というのは、何処まで発展するのだろう。」「経済の実態とは何だろう。」「社会に新しい価値を生み出す、というのは、そうは言っても無から有を生み出すわけではないだろう。」そんなことを今日まで漠然と考えていました。今日はドライブしながら、そもそもの原始の時代に人がどうやって価値と価値を交換しながら経済を形成させていったのかを、簡単な空想の村を考えてモデルにしてみました。名づけて、「うさぎ経済モデル」。
はじめに登場するものは、6人の村人と、ウサギと狩猟道具と服と干草です。
まず、人間は生きるために一日一匹のウサギを食べる、とします。狩の調子によって取れない日もあって、大体、10日間に8匹くらいのウサギを食べています。多少ひもじいですが、何とか暮らせています。
村人たちは雨の日に、一日かけてまっすぐな棒の先に矢じりを縛り付けて、狩猟道具を作ってみました。次の日につかってみるとあまりうまくウサギをしとめることはできません。ただ、村人Fのつくった狩猟道具は出来が良くて、ウサギをしとめることが簡単に出来ました。ただそれもすぐにこわれて5日くらいしかもちませんでした。
(二次産業の誕生)
あるときウサギが一日に二匹取れた村人Aは、村人Fにいいました。「お前にウサギを一匹やるから、明日は狩に出る代わりに矢じりをつくってくれ」と。そこでFは矢じりを削りだして一日かけてAに狩猟道具を作ります。この道具は良くできていて、Aは毎日一匹のウサギを取ることができるようになり、ひもじい日がなくなりました。5日たつころには壊れてしまいました。そこで、5日目にはまたウサギを二匹とって、一匹をFに上げて、新しいものをつくってもらいました。このようなことを、村人A,B,C,D,Eが日替わりでウサギを持ってきては、道具をFに作ってもらいました。Fは毎日道具を作ることが仕事になりました。
村人たちは次第に道具の使い方が上達してゆきました。一人で一日二匹取れるようになりました。村人は6人なので、3人が狩に出れば十分な食料です。なので、村人A,B,Cは狩に行きます。これまでみんなが夜中に各自つくっていた毛皮の着物を服作りの得意なEがまとめてつくることになりました。夜中の服作りをしなくて良くなった村人は少し早く寝られるようになり生活が楽になりました。
(3次産業の誕生)
また、これまで、みんなが夕方に取り込んで作っていた干草のベッドをベッド作りのうまい村人Dがまとめてつくることになりました。これで村人たちは夕方の時間がすこし自由に使えるようになりました。
こうして6人がおのおの素手で狩をしていたときよりも、確実にご飯がたべられて、夕方はゆっくり過ごせて、夜は早く寝られるようになりました。すこし経済が発展しました。
(交易の開始)
村人たちは、狩をする道具が発展し、夜も良く眠れて体力がつき、一人が一日に4匹のウサギを捕まえられるようになりました。村人は6匹を村人で食べて、残りの6匹が食べきれずに、隣の村にもっていくことにしました。隣の村では、珍しい葉っぱが生えていてこれを食べると病気にきくことが知られていました。そこでウサギを6匹と葉っぱを6束交換してもらいました。これで村人は病気のときに苦しまずに住むようになりました。
これからは、村人Cは、隣やそのまた隣りの村に、村で余計に取れたウサギを運んでいくことが仕事になりました。村人A,Bが一日合計で8匹のウサギをとるので、2匹をかついて周辺の村に物々交換にいきます。
ある村では、近くに海があって魚と交換してもらったりして、村人は珍しい食べ物をよろこんで食べました。しかし、次第に、周りの村でもらうものが自分の村に十分に足りてくるようになると、あまり日持ちのしないものと交換してもらうことができなくなりました。食べきれずに捨ててしまうことになるからです。ですが、他の村では、運んでくるウサギがほしい。そこで、きれいな玉や光る石(宝石)をもっていたある村では、ウサギ10匹くれたら10匹目には玉を一つ上げよう。という約束をしました。村人Cは毎日二匹をもっていって5日目には、玉を手に入れました。これは、とても重宝しました。遠くの村に行ってもっと貴重な薬草を手に入れようとすると、これまでは途中でウサギがだめになってしまったのですが、玉は痛んだりしません。この玉をもって遠くの村の貴重な薬草を手に入れられるようになりました。また、玉がたくさん手に入ったら、村人全員がしばらく休んで、おなかが減ると玉と魚を交換しておなかを満たしました。
(擬似貨幣もしくは高級嗜好品の誕生)
この玉はしばらくすると、ある村に偏るようになりました。もともと貴重な偶然発見されたものでしたので、数に限りがあります。村人Cは何とか腐らずに他の村の人が素敵だとおもう価値のあるものが無いだろうか、とおもい、狩猟道具をつくっていたFに相談しました。Fは今では武器を作るための時間が大幅に減り、腕も上がり、他の小物を作り出すだけの能力がありました。そこで、地面から掘り出した粘土で、お祈りのときに身につける「まが玉」を創るようになりました。とても丹念に10日もの時間をかけて作ったまが玉が他の村でもほしがられるようになり、そしてそれが次第に玉と同じ価値のものとして扱われるようになりました。(※実際にまが玉が、そういう使われ方をしたかどうか、わかりません。あくまでも、モデルのうえでの話です。)
(他の島の村、ウサギの値段激安の村が登場)
他の島の村とも交易をはじめました。その島では、ウサギが一人一日20匹取れるため、その島ではまが玉は10日分、つまり、200匹分のウサギと交換されるのです。これに気をよくした村人Cはまが玉をもってはその島へ渡り、大量のウサギをもってかえりました。周辺の村へももっていっては、それをぶつぶつ交換することで、村人Cの村がとても豊かになりました。ところが、その村人Cの行為で、従来のウサギを取って暮らしていた人たちは随分と安い価値でウサギが交換されるため、次第に自分たちの必要なモノを手に入れるのが苦しくなっていきました。こうして村人A,Bもウサギを追うことよりもまが玉をつくることを仕事にするようになりました。周辺の村でもまが玉つくりの技術が育ち、次第にまが玉はたくさん流通するようになりました。
(市場の熟成、新しいニーズへ)
次第にまが玉の供給も十分になり、何処の村でもあまりそれを貴重に感じなくなりました。村人Fはまが玉をつくっても昔ほどたくさんの富が村に入ってこなくなったことを感じました。そこでまた新しいものを創ります。これまで創った中で偶然青いものが出来たらそれがとても受けたので、今度は非常に青い染料と釉薬みつけて、それを混ぜたまが玉を作ります。深い青の美しいまが玉ができました。これと同じまが玉をつくることは、これまでの長年の技術がいるためなかなか他の村で育ち始めた道具職人でもできず、深い青のまが玉は非常に高い価値のものとして他のものと取引されるようになりました。
・・・以上、こうして、ウサギをおって日々の糧をえていた村は、次第に一次産業から、二次産業・三次産業へと移動していきます。ここには、(1)生活に必要な一次産業をより安価に提供するほかの国の登場が深く関わっていること。(2)経済は「生きていくために必要なモノ」から、「生活が便利になるモノ」へと、日々の生み出すものが変わっていきます。(そして、さらに、文化やアートや気持ちよさや長生きなど、「人生が豊かになるモノ」へ変わるでしょう。)
この後は村人が次第に年を取って、村人の半分が純粋な消費者になる世界で起きることを考えてみたいと思います。うさぎ経済モデル2に続く。(多分)
(追記)
このモデルをドライブしながら考えるの二時間。ウサギなどを粘土で作りながら考えを整理するのに30分。文章に起こして遂行するのに2時間。合計で4.5時間をかけました。商売の、というか、仕事の本質を、一番根底の原理から考えてみよう、と思ったのですこし贅沢な時間の使い方をしてみました。