ツイッターに書ききれないので、ブログでお答えします。
こんなご質問をツイッターで矢吹さんからいただきました。
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@kibuya2010
ブルーオーシャン戦略のバリューイノベーション。低価格化と差別化を同時に実現することがその本質だと思いますが、今までの競争戦略からすると二律背反のテーマですよね。 バリューイノベーション実現にTRIZ手法の発明原理は使えないでしょうかね?
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回答を、140では書ききれないのでここに書きます。
「低価格」と「差別化」の二律背反をTRIZはどのように解決するか。
という問いだと再定義したら、TRIZの発明原理によるアプローチは次のようになります。
低価格
→製造コストを抑える
→ランニング 〃
→メンテナンス 〃
この3つが考えられます。
○○コストを抑えたい、という項目は矛盾マトリックスにありません。
そこで、コストにつながるインデックス(技術パラメータ)を選ぶことになります。それは業界ごとに違うはずなのですが、一般的な電気製品などを想定するとこうなります。
19.移動物体の使用エネルギー
20.静止物体の使用エネルギー
22.エネルギーの損失
23.物質の損失
25.時間の損失
26.物質の量
27.信頼性
32.製造の容易さ
33.操作の容易さ
34.修理の容易さ
36.装置の複雑さ
39.生産性
ざっと分類してみるとこうなります。
製造コスト
32.製造の容易さ
36.装置の複雑さ
26.物質の量
ランニングコスト1
33.操作の容易さ
39.生産性
25.時間の損失
ランニングコスト2
19.移動物体の使用エネルギー
20.静止物体の使用エネルギー
22.エネルギーの損失
修理コスト
34.修理の容易さ
27.信頼性
23.物質の損失
ここまでが、一方のパラメータ候補です。
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もう一方のパラメータ候補は、なんでしょう。
「差別化」にあたる技術パラメータを探します。
これは、想定で決めるのは難しいところではあります。というのも、「輝度」でさべつかするとか「立ち上がり時間の短さ」で差別化するとか、ユーザ体験につながる「技術パラメータ」はすべて候補になってしまうからです。
電気製品の場面を今一度そうきて、その中でよく行われる差別化のあり方から考えてみると・・・
1.移動物体の重量
2.静止物体の重量
3.移動物体の長さ
4.静止物体の長さ
5.移動物体の面積
6.静止物体の面積
7.移動物体の体積
8.静止物体の体積
9.速度
10.力
11.応力または圧力
12.形状
13.物体の構成の安定性
14.強度
15.移動物体の動作時間
16.静止物体の動作時間
17.温度
18.照度/輝度
19.移動物体の使用エネルギー
20.静止物体の使用エネルギー
21.パワー
22.エネルギーの損失
23.物質の損失
24.情報の損失
25.時間の損失
26.物質の量
27.信頼性
28.測定の正確さ
29.製造精度
30.物体が受ける有害要因
31.物体が発する有害要因
32.製造の容易さ
33.操作の容易さ
34.修理の容易さ
35.適応性または融通性
36.装置の複雑さ
37.検出と測定の困難さ
38.自動化の度合い
39.生産性
のうち、電気製品の世界を想定した「差別化」でよくありがちなのは何であるかを考えてみました。
2つのケースとして「プロジェクター」と「電動自転車」を想定してか洗い出してみます。
■プロジェクターの場合の「差別化」要因の候補(10年5月現在)
1.移動物体の重量(劇的に軽い本格マシン)
6.静止物体の面積(しまっておくときに、とても小さい)
12.形状(おきにくいデコボコにもおける)
16.静止物体の動作時間(プレゼン終わったら冷却不要でしまえる)
17.温度(熱い風を出さない)
18.照度/輝度(明るい場所でも見える)
20.静止物体の使用エネルギー(充電式で2時間持つ)
21.パワー(輝度と同じ)
24.情報の損失(明るい場所でも小さい文字がはっきり見える)
30.物体が受ける有害要因(人がぶつかってもスライド位置ずれない)
31.物体が発する有害要因(熱い風を出さない)
35.適応性または融通性(暗い、明るいに対応した輝度)
38.自動化の度合い(壁との距離、角度を自動補正して必ず指定サイズになる)
■電動自転車の場合
1.移動物体の重量(入り口でヒョイと抱えられる)
3.移動物体の長さ(輪行しているときには、かさばらない)
6.静止物体の面積(屋内においているときに、狭い面積で自立的にたてて保管できる)
15.移動物体の動作時間(一度の充電で1週間ぐらい走れる)
21.パワー(かなりの旧坂でも確実に上がれる)
35.適応性または融通性(上り坂や悪路で椅子の向きや固さが変わる)
38.自動化の度合い(充電が風力、電力などで自動で)
この辺が、戦略キャンバスを広げる「差別化要因」になりそうです。
これが2つ目のパラメータです。
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さて、ここからが要約、矛盾マトリックスの出番です。
例えば、低コスト、からは、32.製造の容易さ、を選び、
差別化、からは、38.自動化の度合い、を選んだとします。
すると、この交点にあるのは8.28,1と1,26,13です。
1 分けよ
8 バランスを作り出せ
13 逆にせよ
26 同じものを作れ
28 触らずに動かせ
となります(この表現は智慧カードを用いました)
低コストを図りつつ、差別化を図る(のの、ごく一部のケース)場合は、これらが発想の示唆になります。
これ以外に、上記の「低コスト」×「差別化」の組み合わせで、発明原理を拾うことができるでしょう。
あいまいにしてもいい場合であれば、上記の論述から、全ての組み合わせで、発明原理を拾い出して、多い順にならべておいて、困ったときにはその順に発想を適用してみるといいでしょう。