KJ法(大量で多様な情報の整理分類の手法)
昔、営業マンだったころにシステムアドミニストレータの勉強をする機会があって、その時に役に立つ知識をいくつか学びました。特にプロジェクトマネジメントの基礎的な考え方と、KJ法などをつかってシステム化要件をまとめていく手法がとても勉強になりました。
今日は学会の発表論文を執筆するために、このKJ法を活用して、ある情報群から新しい発見を試みていました。(コーディネータとしての仕事をしつつも、MOT研究者としての活動は継続していますので)。東北地域の起業家・経営者の方に私がインタビューしてきた記録データがあります。それを活用してそこから、当初の想定とは異なるものを引き出してみよう、という作業をしています。
通常、社会科学で行うインタビューでは十分に準備をしてインタビューがなされます。十分に設計されたインタビューでは、構造化された質問項目により定量的な分析ができるようにしてあります。しかしそれ以外にも雑談やインタビュイー(=インタビューを受ける人)による積極的な語りにとても重要なコメントが含まれたいたりします。今回は、そうしたインタビュー会話を文字にした資料から、『地方で起業することの魅力・メリット』を抽出しようと試みています。
この発表にはそれ以前の研究での仮説「特定のビジネス環境要因が地域の大学発ベンチャー創出を促進している」に対する自己批判というか、次の段階への発展の材料、といった意味あいが多分に含まれています。これまでは、主に大学や企業の数、といった定量的な要因をメインにしてそこで十分に説明できるだろうという前提条件で分析をしていたのですが、どうも地方に立地する企業にはその枠組みではあまり説明が出来ません。つまり『なぜビジネス環境要因の比較的乏しい東北を起業の地として選んだのか』という問いに対して、『そういうものとは違ったものがここにはある』というものが複数見られてきました。それを今回は、荒削りながらも、分かったことを分析して発表してゆこうというものです。
さて、KJ法。これは3つのステップからなっている作業です。
1)得られた情報を小さなカードに書き込みます。一枚のカードにはなるべく一つの情報だけを入れるようにします。複数の情報はなるべく分割します。
2)似た内容のカード同士をグルーピングします。グループにはそのグループの構成情報を代表するタイトルをつけてそれを新しいカード(グループ・テーマ・カード)に書きます。全てのカードをグルーピングします。中には他のどれともグループにならないカードもありますが、それは一つのグループとみなします。
3)グループ同士を似たものでまとめて、さらに大きなグループを作ります。同様にその大グループにも新しいテーマ・カードをつけます。この大グループ化を繰り返して、最終的に、2~3グループになるところまでこの作業を繰り返します。
こうすると当初はばらばらで関係・構成を持たなかった情報の集まりが、ツリー構造になってある文脈で語ることが出来る情報群になります。これが情報から知識を引き出す作業としてのKJ法です。
この手法は情報整理だけではなく、大規模な文章を執筆することにも使えます。執筆しようとする細切れの情報やアイデアの断片をカード化して再構成することで大規模な文章を自然な構造の文章に昇華していくことができます。
これをインタビュー記録を相手に、こつこつをカードを作り、やってみています。最初は手間が面倒だと思ったりもしたのですが、全部をカード化してそれらを分類・統合していくと、予想よりもはるかに多くの思考ステップがすすめられるのを実感します。これまで漠然と記録を読み返していたころよりも、気が付くことの量・質が向上するのが分かります。さて、これを後はどう意味解釈するか。この辺が研究者の資質の一つでもあります。同じデータを見てもその意味付けは必ずしもユニークではないからです。面白い作業、でもあります。